家計診断Q&A

家計診断Q&A

家を買って転居したい、独立も予定しているのに
貯金も無い、出費も多いのにできるでしょうか?


山田 静江先生
(やまだ しずえ)
プロフィール

  • ((1))住宅購入、と((2))ご主人の独立(自動車2台保有)と、目標が2つ。現状の家計では両方同時に実現するのは難しい。どちらを優先するか、ご夫婦でよく話し合うこと。
  • 住宅購入・独立のどちらにしても、最終的にはそれぞれ少なくとも300万〜500万円の資金が欲しい。最低でも年間50万円以上の貯蓄は最優先項目。
  • 家計支出の見直しと同時に、できれば奥様の収入アップを。

西村京子さん(仮名 39 歳 フリーター)のご相談

現在、戸建賃貸ですがかなり老朽化しており転居を希望しています。

できれば中古でも購入したいのですが、ペット(猫)を多頭飼いしているため、マンション・アパートも難しい状況です。また夫が過去に破産しており、あと3年は公的なローンが組めません。

なんとかその3年の内に少しでも頭金の貯金を…と私は思っているのですが、夫は独立も考えていてなかなか意見が纏まりません。その独立のために車も2台必要ということで、現在2台所有しています(ワタシは運転しないのでこれも勿体ない!)。

家計のどこを見直せばいいのかもよく分からないので、アドバイス頂きたいです…。
よろしくお願い致します。

西村さんのプロフィール  
年齢 : 39歳
性別 : 女性
世帯主の職業 : 会社員
世帯年収 : 440万円(手取り世帯年収 約350万円)
家族構成 : 夫 32 歳 会社員
住居 : 賃貸

現状では2つ同時に実現は難しい。冷静に、慎重に検討して1つに絞って準備を

1.家計の現状と見直しのポイント

<収入> 月々 臨時
給与収入(夫) 210,000   2,520,000
パート収入(妻) 80,000   960,000
ボーナス(夫)   0 0
手取り収入計 290,000 0 3,480,000
<支出> 月々 臨時
家賃 50,000   600,000
食費 35,000   420,000
光熱水費 12,550   150,600
通信費 30,000   360,000
レジャー費 10,000   120,000
ペット費 10,000   120,000
自動車費(2台分) 31,530 200,000 578,360
夫こづかい 20,000   240,000
妻こづかい 10,000   120,000
生命保険料 26,259   315,108
雑費 20,000   240,000
貯蓄     0
支出計 255,339 200,000 3,264,068
収支差額 34,661 -200,000 215,932
貯蓄可能額 215,932 (収支差額)
貯蓄残高 500,000

現状では収入の範囲内で生活ができているものの、貯蓄残高が50万円と少ないことが問題です。住宅の購入や、ご主人も独立を予定されているようですが、いずれにしても数百万円の資金がないと、家計が破綻してしまうおそれがあります。ご主人は一度破産しているわけですから、同じ轍を踏まないよう慎重に行動していただきたいと思います。

家計収支を見ると、貯蓄可能額は年間で約20万円ですが、A)住宅購入資金や、B)独立のためには、最低でも300万〜500万円は必要です。実行の年を5年後に延ばしたとしても、年間50万円以上の貯蓄は必須。そのためには、支出の削減、または収入増をしなければなりません。

支出項目については、自動車関係費と通信費が突出しています。
自動車については、税金や車検費用を含めると、毎月5万円の費用(ランニングコスト)がかかっている計算になります(年間約60万円)。
さらに、自動車本体の購入費(取得費)も考えなくてはなりません。たとえば150万円の自動車を7年乗ったとして、1台につき年間20万円以上(月々約18,000円)、2台分で年間40〜50万円になります。つまり自動車だけで、年間100万〜110万円のお金がかかっているわけです。これはご主人の年収の半分近い金額です。

現在は自動車の本体価格を負担していないので負担感はないと思いますが、自動車購入に備えた貯蓄をしているわけではないようなので、次の買い替えのときには自動車ローンを組むことになるでしょう。現在の支出にローン返済額が加われば、家計は一気に苦しくなります。
自動車が2台必要というのは、仕事のためとプライベート用とそれぞれ1台ずつということでしょうか。家計の現状を考えると、プライベート用の自動車はあきらめるべきと思います。自動車が1台になれば維持費も半減し、その分貯蓄を増やすことができます
通信費3万円も2万円程度に減らせないでしょうか? 携帯サイトを使わないなど目的を限定した安いプランへ変更する方法もあります。

自動車を1台減らし、通信費を月1万円減らせれば、当面年間50万円以上の貯蓄が可能になりますが、さらに奥様の収入をあと少し増やせれば、貯蓄ペースも上がります。月に2万円程度であれば、社会保険の扶養の範囲内(年130万円未満)ですので、検討してみてください。

2.転居および住宅購入について

現在月5万円しか家賃を払っておらず、貯蓄も少ないことを考えると、現状では住宅購入はやめた方がいいでしょう。中古住宅なら安く購入できるとはいっても、住宅ローンや固定資産税の負担は軽くありません。中古であれば、購入後に修繕費などの維持管理費もかかります。年間60万円程度の負担で、ローン返済と固定資産税、維持管理費をまかなうことはできません
現在の家に住みつづけられない場合には、同じような条件の一戸建ての賃貸を探してみることをお勧めします。駐車スペースがあれば現在払っている駐車場代の軽減にもつながります

家を買う場合には、必ず、頭金(購入価格の1〜2割)+諸経費(購入価格の1割)を準備しましょう。1,500万円の家を買う場合で、300万〜450万円が目安になります。なお、家を買ったらお金がなくなってしまったということでは、何かあったときに困ります。手元には最低でも50万〜100万円は残しておきましょう。

3.ご主人の独立にあたっての注意点

どのような業種で独立を予定していらっしゃるかわかりませんが、一般的な注意点を書いておきます。

((1))収入ではなく、収益ベースで給与と比べる

事業を行うにはさまざまな経費がかかります。給与収入は働いたことに対しての支払いであり、業務上の経費(交通費、自動車等の経費、社会保険料の半額)については会社負担が原則です。しかし、自営業の場合には、引き受けた仕事全体に対してお金が支払われ、業務上の経費は自腹です。たとえば給与30万円なら、税金や社会保険を差引いた手取り額はだいたいその8割程度(約24〜25万円)になります。しかし、30万円が事業収入なら、そこから事務所や自動車関係費、交通費、通信費など業務にかかった経費を差引いたものが収益となります。

さらに社会保険料の負担増も忘れてはいけません。現在はご主人がサラリーマンで厚生年金と健康保険に加入されているので、奥様は被扶養者として社会保険料の支払いは発生しません。しかし自営業になれば、国民年金保険料・国民健康保険料を全額負担することになります(サラリーマンは会社と折半)。また国民年金と国保には被扶養者という考えはないので、奥様の分の保険料も支払うことになりますので、その負担も低くはありません。

上記の経費と社会保険料、そして税金を差引いた、いわゆる手取り収入が、事業収入の半分程度になってしまうこともあるのです。自営業の場合には、経費等を差引いた収益、または手取り収入をベースに考えることが大切です。

((2))社会保障が減るので、民間保険を手厚くする必要がある

サラリーマンの夫が死亡したときには妻は「遺族厚生年金」がもらえます。さらに死亡時に妻が40歳以上であれば、妻が65歳になるまで中高齢寡婦加産(約60万円/年)も加算されます。しかし夫が自営業の場合には「遺族厚生年金」はありません。18歳未満の子がいる場合には「遺族基礎年金」がありますが、西村さんは対象外ですので、ご主人が亡くなった場合の遺族保障がほとんどないということです。

一方、ご主人の加入されている保険のうち、病気死亡での保障は全労済の800万円のみです。お子さんがいらっしゃらないので、当面の生活費は確保できますが、奥様の年収が年間100万円程度のままなら心もとない金額です。可能であれば、独立時にはご主人の死亡保障を現在の2倍程度には増やしておきたいものです。

また、国民健康保険には、サラリーマンが加入する健康保険のような休業補償はありません。入院して働けなくなれば収入が途絶えることになりますから、病気やけがで働けないときの保障も考えなければなりません。具体的には、独立するときには、病気やけがで入院または自宅療養しているときに収入を補填するための保険金が払われる「所得補償保険(損害保険会社で取り扱い)」に加入しておくことをお勧めします

4.保険の見直しについて

  保険種類 契約者 被保険者 保険金
受取人
保障内容 保険期間など 保険料
/掛金
 
((1)) 養老保険 死亡・満期保険金 500万円 H35年まで 8,999円 貯蓄型
((2)) 積立型傷害保険 事故死亡200万円
事故入院2,000円
満期金40万円
H22年まで 11,960円 貯蓄型
((3)) 共済(医療型) 死亡保障額 50万円
入院保障 6000円
1年更新 1,700円 保障型
((4)) 共済(総合型) 病気死亡800万円 
事故死亡2,400万円
病気入院3,500円、事故入院1万円
1年更新 3,600円 保障型
  月額 26,259円  
内、貯蓄型 20,959円
内、保障型 5,300円

月額保険料は26,259円と、月収の1割を占めていますが、このうち20,959円は貯蓄を兼ねた保険です。養老保険の満期金は老後資金として、また積立傷害保険の満期金は夢実現のための資金に充当するといいでしょう。

いわゆる保障のための保険は((3))と((4))です。奥様が加入されている((3))は、入院保障重視の共済で、ご主人様が加入されている((4))は死亡保障重視の共済ですが、ご主人がサラリーマンの現状では妥当な保障額と保険料といえます。
しかしもし独立するなら、社会保障が減ってしまうので、死亡保障、入院保障ともに増やすことをお勧めします。

ペットを複数飼っているため賃貸できる先が限られてしまう、だから住宅を購入したいという事情はわかりますが、残念ながら現状の家計では中古住宅といえども購入したら大きな負担増となると思われます。ご主人が独立を考えていらっしゃるなら、なおさらです。住宅ローンが返済できなければ売却すればいい、と考える人もいますが、頭金準備がなく全額ローンで購入した場合には、ローンを完済できるだけの価格で住宅が売却できる可能性はとても低いのです。再び破産ということにならないよう、くれぐれも無理はせず、慎重に行動してください。

家計見直しなどで、年間50万円以上の貯蓄ができれば、住宅か独立かの夢は実現できるかもしれません。まずはできることから始めてください。

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