家計診断Q&A

家計診断Q&A

不況により年収が大幅ダウンするかもしれません。
教育費・老後費用をどう準備すればいいでしょうか。


 

臼井 悦子先生
(うすい えつこ)
プロフィール

  • 毎月、ボーナスの支出を見直して教育費・老後費を積み立てる
  • 教育費がかかりすぎないように注意して
  • 将来を見通して妻の働き方を考える
     

吉岡秀美さん(仮名 35歳 会社員)のご相談

今年12月に第2子を出産予定です。現在は共働き(正社員)ですが、私の会社の業績がよくなく、第2子出産後は今の会社で働くのはかなり難しく、出産と同時に退職する可能性が高いです。何らかの形で働き続けたいとは考えていますが、年齢的にも再就職の道は厳しいと覚悟しています。

2年前4,000万円の分譲マンションを1,400万円の借り入れで購入。今年700万円を繰上げ返済しました。当初子どもは1人の予定だったため、いまの住まいは家族4人で住むには少々手狭。長女が中学入学する8年後くらいまでに一人部屋を用意してあげたいので、もう少し広い中古マンションへの買い替えも検討したいと思っています。

子ども2人は、小学校・中学校・高校まで国公立希望、大学は本人の希望するところに進学させてあげたいです。けれど、学区の小学校の8割が私立中学に進学するとのことで、中学から私立に行く可能性も捨てらません。現在、これといった学資保険や教育資金積み立てをしていないので、すぐにでも始めなければと考えています。

夫は58歳に一度退職後、再雇用で65歳くらいまで働く予定。老後は、できれば年1回くらいの海外旅行を楽しみたいと思っています。第2子が1歳になったくらいで保育園に預け、再就職したいとは思っていますが、仕事を見つけたとしても、年齢的にパートの可能性が高く、私の収入は今の1/3くらいになると思われます。その場合を想定して、今後の教育資金、老後資金の貯め方をアドバイスしていただけないでしょうか?

吉岡さんのプロフィール

世帯年収 (税込) : 1,200万円
家族構成 : 夫 35歳 会社員、長女 4歳 12月に第2子出産予定
住まい : マンション (住宅ローンは返済中)

●毎月の収支
手取り(税引き後)収入
300,000円
320,000円
合計 620,000円
支出
費目 金額
食費 45,000円
住居費 100,000円
教養娯楽費 50,000円
交際費 10,000円
水道光熱費 15,000円
通信費・交通費 15,000円
教養娯楽費 5,000円
こづかい 60,000円
その他 5,000円
保険料 25,000円
合計 330,000円
貯蓄
金融商品名 金額
財形 10,000円
貯金 280,000円
合計 290,000円
●ボーナスの収支(年間合計)
手取り(税引き後)収入
1,000,000円
0円
合計 1,000,000円
支出
費目 金額
レジャー費 500,000円
保険 50,000円
マイカー共済 30,000円
合計 580,000円
貯蓄
金融商品名 金額
財形 60,000円
貯金 360,000円
合計 420,000円
●貯蓄・金融資産 残高(円)
金融商品名 金額
貯金 4,200,000円
定期 3,000,000円
長女教育資金用定期 1,000,000円
株式 400,000円
MMF 1,500,000円
財形 400,000円
簡易保険 1,500,000円
合計 12,000,000円
保険商品 被保険者 保険の種類 保険金額 保険期間 保険料
払込方法 金額
生命共済 死亡 2,000万 年毎 年払 50,000円
生命共済 死亡 500万 年毎 年払
簡易保険 死亡・入院 250万 39歳まで 月払 23,000円
傷害保険 夫婦 入院・通院 年毎 月払 2,000円

コツコツ貯蓄していけば教育費・老後資金の準備は可能。
教育費のかかりすぎに注意。

1.年収ダウンした家計を見通してみる

吉岡さんは、12月にご出産予定とのこと、とても楽しみですね。その一方、勤務先の業績が思わしくなく、退職もやむをえないと感じてらっしゃるのですね。吉岡さんの場合、出産予定日前42日から出産翌日以降56日の産休、そしてお子様が1歳になる(延長要件に該当する場合は1歳6ヶ月)までの育児休業を取得した上で、職場に復帰できるはずです。その場合、産休中は健康保険から出産手当金として給料のおよそ3分の2相当が、育休中は雇用保険から給料の約3割相当が、復帰して6ヶ月後には2割相当額(平成22年3月末までに育休に入った場合)が支給されます

今回は、何らかの事情でこういった制度を使わずに出産と同時に退職、その後パート勤務に変更、年収が3分の1になったと仮定してお答えします。

吉岡さんの現在の家計収支を拝見しますと、ほぼご主人の収入の範囲で賄えており、毎月の貯蓄額は29万円となっています。また、ボーナスもほぼ半分程度を貯蓄に回せており、貯蓄が着実に増やせる家計だといえます。 しかし、これから家族も増え、収入もダウンするかもしれないのは、さぞ不安なことと思います。そこで、ザックリとですが、秀美様の年収がダウンした場合の家計収支や貯蓄残高がどのようになるかを試算してみました。

(図1)

(図2)

※(図1)(図2)とも横軸はご夫婦の年齢

(試算条件)
・秀美様の手取り年収は現在の3分の1の128万円になる(37歳から60歳まで)。
・ご主人の年収は年1%ずつアップし、59歳から65歳まではそれまでの半分を維持。
・退職金は含めず。
・生活費などは毎年1%ずつアップ、ご夫婦が61歳のときにお子様は独立し、生活費はそれまでの7割になる。
・お子様おふたりとも、高校までは公立、大学は私立文系へ自宅から通学したとして、かかる教育費は年1%で上昇。
・長女12歳(ご夫婦43歳)のときに、貯蓄500万円を取り崩し、自宅を買い換える。以降の住宅ローンなど住まいにかかる費用は現在と同程度を維持。

(図1)の年間収支をご覧いただくと、共働き時代には年間400万円程度貯蓄できていたものが、奥様の収入がダウンしてからは100万円程度と大きく減っているのがわかります。そして、ご夫婦43歳の時に住宅を買い換えると、年間収支はマイナスになり貯蓄残高も減ります。そして、お子様が成長し教育費がかかるようになってからは、貯蓄できる額も減っていきます。お嬢様が大学に進学される頃からは、支出が収入を上回り貯蓄を取り崩すことになります。ふたりのお子様が大学を卒業されると家計は黒字になりますが、ご主人が58歳で退職されてからは、家計はふたたび赤字になります。ご夫婦が年金を受け取り始める65歳での貯蓄高は611万円と、老後に必要と一般的に言われている3,000万円には届かない金額となっています。

しかし、これはあくまで上記の(試算条件)に基づいてのものです。条件が少し変わるだけでも金額は違ってきますので、将来こうなる、と決めつけるものではありません。あくまでも試算条件での結果としてご覧いただき、奥様の収入が減った場合にどう備えるかの参考としてください。

2.家計を見直し、教育費・老後費用を準備する

では、どのように教育費と老後費用を準備していけばいいのでしょうか。収入を増やすことが難しいのであれば、やはり支出を見直しコツコツと貯めていくのが堅実な方法だといえます。吉岡さんの支出の内訳を見てみますと、毎月のこづかいやボーナスでの海外旅行(レジャー費)など、見直す余地はまだありそうです。たとえば、毎月2万円支出を減らし、1万円ずつをお子様それぞれの教育費の積み立てにまわす、また、ボーナスから年間25万円を捻出し老後費用に積み立てる、などです。お嬢様が大学に入学されたら、その分2番目のお子様の教育費を増額するなど、無駄なく積み立てていくといいですね。少額でも続けていくと(図3)のように、まとまった金額になります

(図3)●家計を見直して教育費・老後費用を準備する
  積み立て金額 なにで これだけ準備できる
第1子の
教育費
毎月 1万円 こども保険または財形貯蓄、定期預金など元本保証型商品 大学入学までに 168万円
第2子の
教育費
毎月 1万円 大学入学までに 264万円
老後費用 ボーナスより25万円 個人向け国債、定期など 59歳までに624万円

貯めるためのポイントは、「自動で積み立て」「引き出せない」しくみをつくることです。給与天引きの財形貯蓄や、銀行での自動積立機能などを利用するといいでしょう。いまは金利が低いため、有利な商品はなかなか見つけられませんが、たとえば定期預金ならより有利な金利の商品が多い、インターネット専業銀行などを検討されてはいかがでしょうか。老後資金は、1年に4回発行される(募集:3月、6月、9月、12月)個人向け国債も候補にしてはどうでしょうか。金利が半年ごとに見直され10年満期の「変動10年」と固定金利で5年満期の「固定5年」の2種類があります。

教育費を積み立てるには、こども(学資)保険を利用する方法もあります。毎月一定の保険料を支払い、大学入学時などに満期金を受け取るものです。中学や高校など進学するときに、祝い金を受け取れるものもあります。その都度受け取らずに、満期金と合わせて受け取ることも可能です。子どもの年齢が低いうちに加入した方が毎月の保険料負担は軽くなります。こども保険は、その名の通り保険としての機能もあり、保険期間中に契約者(通常は親)が亡くなると、それ以降の保険料は免除され、祝い金や満期金は約束通り受け取ることができます。多くの保険会社がこども保険を販売していますが、祝い金の有無や、支払った保険料に対して満期金(祝い金を含む)がいくらになるかなどの貯蓄性には、かなり違いがあります。利用するなら、各種商品を検討して、元本割れしないものを選ぶといいでしょう。

このようにして、年間49万円の貯蓄を上乗せできると、年間収支や貯蓄残高は以下のように改善されます。1年に1回など定期的に、家計収支と貯蓄額をチェックして、将来の見通しを考える時間をとるといいですよ。

(図4)

(図5)

なお、上記の対策を講じても、お子様が中学から私立に進学するとなると、支出はこれより900万円近く増え、老後資金の準備に振り向ける家計の余裕はなくなります。なんとか頑張って教育費を捻出できたとしても、ご夫婦の老後の生活が厳しくなるのは避けたいものです。そのため、現段階では、私立中学への進学はあまりお勧めできません。お子様が中学に進学されるまでにはまだ時間があります。小学校在学中に、ご夫婦の年収や貯蓄残高を確認しながら、時間をかけて検討されてはいかがでしょうか。私立中学への進学が経済的に厳しいようなら、住み替えの候補として公立中学への進学者が多い地域を選ぶのもひとつの方法かもしれません。

3.共働きをやめたら、ご主人の死亡保障を見直す

今後秀美様がパート勤務になったときには、ご主人の死亡保障を見直す必要があります。現在は、ご主人に万一のことがあったときは、共済より2,000万円、簡易保険より250万円、合計2,250万円の死亡保険金を受け取ります。秀美様のパート収入のほか、遺族年金や遺族厚生年金が受け取れるはずでですが、母子3人の生活費には不足すると思われます。現在の保険に追加して2,000万円程度の死亡保障を用意しておくことをお勧めします。また、加入されている傷害保険では、病気の入院では保険金は支払われません。病気入院での保障がないようなら、掛け捨て型の医療保険への加入を検討されてはいかがでしょうか。

お仕事を続けたいという秀美様の気持ちも大切にして、出産後の働き方をぜひ考えてみてください。今回のアドバイスが少しでも参考になれば幸いです。

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