家計診断Q&A

家計診断Q&A

家族が増える予定なので今後必要な保障額と、
教育費の計画について教えてください。


 

鈴木 暁子先生
(すずき あきこ)
プロフィール

  • 教育資金準備は、学資保険と貯蓄それぞれの特徴を比較して選択しましょう
  • 繰上返済で手持ちの資金を減らしすぎないように
  • 必要保障額は試算を鵜呑みにしないこと
     

千秋 由紀子さん(仮名 34歳 専業主婦)のご相談

来年3月に第3子が生まれるので自宅を住み替えました。購入後は繰上返済を利用し、最終的には5年で完済する計画です。購入後の貯蓄残高は1,280万ほどになります。学資保険は入っていません。
物件が築13年なので、2年後くらいに外壁屋根のメンテナンスで150〜200万を予定。
車は軽自動車が1台。2年後には家族で乗れなくなるので5人乗り以上に買い換えたいのですが、資金的に無理なら諦めます。
子供は、3人とも幼稚園私立3年、小〜高は公立、大学は国公立下宿で考えています。大学院はわかりませんが希望すれば行かせてあげたいです。
住宅ローンは、主人の希望でできるだけ早く完済したいので5年なのですが、完済してから教育費の準備をして大丈夫か心配しています。
今の保険は、夫死亡2,500万、妻死亡300万、入院は2人とも1日5,000円のものに入っています。あわせて保険金額は月15,000円です。子供が増えるので保障を増やしたほうがいいと思うのですがいくら必要でしょうか?よろしくお願いいたします。

千秋 由紀子さん(仮名 34歳 専業主婦)のプロフィール

世帯年収(税引き後) : 637万円
家族構成 : 夫 36歳 会社員、第1子 10歳、第2子 9歳   ※2010年3月に第3子出産予定
住居 : 持ち家(H21年12月購入、ローン返済中)
物件価格 : 4,600万円
頭金 : 1,940万円
ローン : 2,660万円(35年ローン 当初5年固定金利 1.75%)
     年間返済額 102万円
     以前の自宅の売却予定価格:950万円
その他 : 新車購入は200万円+現在の車の売却価格程度で
※以下「ボーナス時、臨時」は年間合計額

単位:円

【収入(税引き後手取り)】
  毎月 ボーナス時、臨時
410,000 1,450,000
0 0
収入合計 410,000 1,450,000
【支出(固定費)】
  毎月 ボーナス時、臨時
住居維持費 0 150,000
車維持費 3,000 75,000
住宅ローン 85,000  
保険料 11,000 18,000
第1子関連費 20,000 65,000
第2子関連費 20,000 65,000
小遣い 40,000  
固定費合計 179,000 373,000
【支出(やりくり)】
  毎月 ボーナス時、臨時
食費 90,000  
水道・光熱費 13,000  
通信費 10,000  
交際費 5,000 200,000
教養娯楽費 13,000 100,000
その他 40,000 150,000
やりくり費合計 89,000 450,000
支出合計 350,000 823,000
【貯蓄】
商品名 毎月貯蓄額 ボーナス時、臨時
  60,000 627,000
貯蓄合計 60,000 627,000
【貯蓄残高】
商品名 合計
普通預金 2,000,000
財形住宅 2,500,000
社内積立 8,300,000
貯蓄残高合計 12,800,000
 

繰り上げ返済がキャッシュフローを悪くすることも。
決めつけず、柔軟な計画を立てましょう。

1.教育資金準備は保険か貯蓄か、それぞれの特徴を比較して

千秋家は3人のお子様がいらっしゃるので、教育資金の負担も気になるところです。

【進学コース別学習費】

  すべて公立 小学校から私立 中学から私立 高校から私立
幼稚園(2年)※ 108 108 108 108
小学校(6年) 200 824 200 200
中学校(3年) 142 381 381 142
高校(3年) 156 314 314 314
合計 606 1,627 1,003 764

(単位:万円)

※文部科学省平成18年度「子どもの学習費調査」を基に算出。千円単位は四捨五入。
※幼稚園は私立の金額

【高校〜大学の教育費負担】

  入学費用 在学費用
国公立高校 33.9 69.2
私立高校 53.8 102.5
国公立大学 80.9 106.2
私立大学 101 159.1
自宅外通学者への仕送り 95  
自宅外通学を始めるための費用 49  

(単位:万円)

※(株)日本政策金融公庫平成21年度「教育費負担の実態調査結果」
※入学費用:受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金
※在学費用:年間の学校教育費(授業料、通学費、その他)、家庭教育費(補修教育費、けいこごとなど)
※自宅外通学者への仕送り:在学費用を除く年間仕送り
※自宅外通学開始のための費用:敷金、家財購入など
※色がついている費目は、キャッシュフロー作成時に採用したもの

このデータを基に、千秋家の3人のお子様の教育資金を試算すると、約4,500万円となります。3番目のお子様については学資保険という選択肢ももちろんあります。ただし学資保険は保障機能がある分、払い込み保険料がすべて貯蓄に回されるわけではありません。したがって、元本割れしないものを選ぶことが大切です。また、預貯金商品と学資保険それぞれの特徴を比較した上で、何で準備するのか検討しましょう

【学資保険と預貯金の比較】

  特徴
学資保険 ・契約者に万一のことがあっても、その後の保険料払込は免除となり、保障もされる
・保険料を払い込んだ分、すべてが貯蓄に回るわけではない・契約時の予定利率が最後まで続く
・契約から一定年数以内の中途解約はペナルティがあり、解約返戻金<払込保険料となる場合もある
・金融機関破綻時には「保険契約者保護機構制度」によって守られるが、返戻金が全額戻るかどうかはわからない
貯蓄 ・契約者に万一のことがあれば保障がない
・預けた分はすべて貯蓄に回る・金利上昇時には恩恵を享受できる
・満期前の中途解約は、適用利率低下などのペナルティはあるが、元本割れすることはない
・金融機関破綻時には「預金保険機構」によって、預貯金の元本1,000万円までとその利息の払い戻しが保証される

千秋家の家計は、これまでの貯蓄状況を見ても、自主的に貯蓄ができる体質だと思います。貯蓄ができないタイプの人は強制的に貯める手段として保険を選ぶという手もありますが、そのような心配はないでしょう。また保険では「予定利率」といって貯蓄にまわる部分に適用される利率がありますが、これは契約時から最後まで変わりません。したがって現在のような低金利の時代に加入してずっと低金利適用のままであるなら、預貯金や変動金利型の国債など、今後の金利上昇時に恩恵を享受できるもので準備しても良いでしょう。

また、新たに創設される「子ども手当て」ですが、教育資金準備にこれを当てにするのは危険です。未来永劫保証された制度ではありません。この制度にかかわらず自力で準備できる家計にしておけば、支給された分は家計にとって完全なプラスアルファであり、余った分は老後資金に回すこともできます。


2.繰上返済で手持ちの資金を減らしすぎないように

住宅資金の頭金は、物件価格の最低でも2割は準備するべきですが、千秋家では4割超の頭金を準備。かつそれを支払った後の金融資産残高も1,280万円ということで、ご夫婦の年齢から考えれば相当頑張って貯蓄されていたのでしょう。大変感心しています。ローンに縛られたくないという方針で、来年早々に満期となる社内預金830万円で繰上返済、その後3月頃までに、元の自宅を売却して得た950万円でさらに繰上返済。900万円程度になったローンを5年間の返済合計510万円と、残額を預貯金から400万円程度で一括返済。当初5年固定金利が終わる時に、ローンを終えてしまうという目標を立てておられます。非常に計画的ではありますが、実は繰上返済も時には落とし穴になることがあります。

キャッシュフローを別ウィンドウで表示

現在の収支状況と今後の教育費支出、ローン返済についてのご希望を反映したキャッシュフローを見てみると、2020年には金融資産が底をついてしまいます。繰上返済は、現状だけでなく、今後の手元資金に影響を及ぼさないことを確認した上で行いましょう


3.必要保障額は試算を鵜呑みにしないこと

千秋家では、今回ご家族が増えるタイミングで保障見直しされるとのことですが、今ご主人に万一のことがあったとすると、今後、末のお子様が大学卒業されるまでの22年間と、それ以降女性の平均寿命までの30年間の奥様の生活費、および3人のお子様の教育費で約1億5千万円の支出が見込まれます
それに対し、遺族基礎年金中高齢の寡婦加算、ご自身の65歳からの老齢年金など、社会保険で約4千万円まかなえます。これに遺族厚生年金がありますが、これは「ねんきん定期便」で確認できますので、その分を足してみましょう(ご主人の「報酬比例部分」の年金額×4分の3)。さらに現在の貯蓄が約1,300万円ありますので、この時点で5,300万円+遺族厚生年金分は確保できます。
これでもまだ5千万円以上の不足になりますよね。ただ、これを必要保障額の目安と考えるのは性急です。

必要保障額=支出合計−(収入合計+貯蓄合計)で試算しますが、たとえば、毎月の支出を1万円節約できれば、末のお子様が大学を卒業するまででも264万円生活費が減ります。また、上の2人のお子様が社会人になってから30歳くらいまで2万円ずつ生活費を入れてくれれば、360万円生活費が削減できます。さらに末のお子様に手がかからなくなった頃から、奥様がパートなどで収入を得られるようになっても必要保障額を減らすことができます。このように、少し生活を見直したり変えるだけでも収入増や支出減につながり、貯蓄額を増やすことができます。結果的に保険でまかなう分はできるだけスリム化するようしましょう。

また、死後の整理費用が目的ならば終身保険でも良いですが、お子様独立までの保障を目的とするなら、必要保障額はお子様の成長にともなって減っていくものです。千秋家のように今後大きな支出を控えているご家庭であれば、一定期間保障を手厚くする定期保険、保障額がだんだん減っていく低減定期保険、毎月一定額支払われるタイプ(分割払いのイメージ)の収入保障保険などがおすすめです。

中でも保険金を一括で受け取るのではなく、毎月分割して受け取る収入保障保険は、保険金額が同じであれば定期保険よりも一般的に保険料が安くなっています。

ここでもうひとつ、必要保障額について役立つ見方をご紹介します。一般的に必要保障額は、ご主人に万一のことがあってから奥様の平均寿命までの「総額」ですが、表のように単年度で見ていくと、万一の際、「いつ」「どれくらい」家計に影響があるのかがわかるので、特に収入保障保険の保険金額や期間を検討する際に、具体的にイメージしやすくなります。

必要保障額推移表を別ウィンドウで表示


4.未来は自分で変えられる

千秋家ではとても計画的な反面、それにとらわれすぎないことも心がけてみてください。
必要保障額についても、保険は万一のことがなければ掛け捨てになる可能性が高いですが、貯蓄であれば、万一があればそのために、万一が起こらなければ別の用途に使えますよね。ですから「これだけ足りないね。じゃあその分保険に加入しよう」ではなく、貯蓄部分でまかなう割合を多くするよう収入アップや支出ダウンを図るという発想や、繰上返済も「赤字になるからできない」というAll or nothingではなく、時期や金額を見直して、貯蓄とのバランスをみながら行うなど、柔軟な発想で落としどころを探していくということです。

新しい自宅で、新しい家族を迎える。来年は千秋家にとって新たなスタートとなりますね。現状だけで検討するとNGであっても、少し前提を変えるだけでキャッシュフローは違った結果が出ます。今回試算したキャッシュフローは最低限の前提で作成されていますので、ここに今後の実態を盛り込んでいくことで、より現実的なキャッシュフローとなっていきます。これを機に1年に1度、キャッシュフローやねんきん定期便を見直す習慣をつけて、今後の家計管理に生かしてください!


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