家計診断Q&A

家計診断Q&A

確定拠出型年金で投資に興味を持ちましたが
老後の備えはどのように考えればいいでしょう?


 

市田 雅良先生
(いちだ まさよし)
プロフィール

  • ライフプランは、まず将来の希望と目標を掲げましょう
  • 希望・目標が実現可能か分析し、問題点を炙り出し解決策へのシナリオを作る
  • 資産運用は基本を守り、学んでいくことが大事
     

和田 和夫さん(仮名 46歳 会社員)のご相談

4年前に妻を亡くし、男手一つで二人の子供を育ててきました。来年の長男の大学進学の資金繰りや住宅ローン、また加入保険の保障内容が適切かどうかなど悩んでいます。
さらに昨年、会社が確定拠出型年金制度を開始し、投資に興味を持ってはいますが、老後資金運用など様々な不安もあります。この不安を解消するためには、今後どのような生活設計と資産運用をしていけばいいのでしょうか。

和田 和夫さん(仮名 46歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 和夫さん 46歳 会社員(妻とは4年前死別)、長男 18歳 高校3年、長女 15歳 中学3年

図表1 収入と支出の内訳(年間)
  金額(年間)
可処分所得 計 580万円
年間支出内訳  
生活費 132万円
住居関連費 202万円
教育費 95万円
定期付終身保険料 24万円
個人年金保険料 12万円
お小遣い 36万円
支出計 501万円
差し引き +79万円
図表2-1 バランスシートの内訳(時価)
資 産 負 債
現金・預金 1,800万円 住宅ローン 2,900万円
株式 60万円    
ドル定期預金 80万円 純資産
一戸建て(時価) 2,800万円 差引純資産 1840万円
合 計 4,740万円 合 計 4,740万円
図表2-2 住宅ローンの内訳
現在返済中の住宅ローン 融資金額 現在金利 年間返済額 融資残高
(09/12/31現在)
住宅金融公庫 2,200万円(25年返済、62歳まで) 3.25%(11年目) 120万円 1,424万円
年金住宅融資 1,000万円(25年返済、〃) 3.13%(11年目) 58万円 725万円
財形住宅融資 500万円(25年返済、〃) 1.44%(11年目) 24万円 340万円
    (合計202万円)  
 

繰り上げ返済で約300万円、保険の見直しで月約2万円節約可能
投資は応援できる企業の株を持つことから始めましょう

和田さんは4年前に奥様を亡くされてから、仕事に家事に子育てにと、とても慌ただしい毎日を過ごしてこられました。幸い実家がすぐ近くなので、いざというときにはご両親の援助もあり、仕事に支障をきたすことなく今日までこられました。ようやく子育ても終盤に差し掛かかり、ホット一息つこうかと思いきや、今度は目前に迫った教育費などの資金面で不安が募ってきたということです。

一方、会社が確定拠出型年金導入の際に行った投資教育を受けてから、職場でも投資型金融商品の話題が出るようになり、投資信託や外債などに興味津々になったのだそうです。
そこで和田さんの今後のライフプラン、希望や目標別の資金準備とその対策について検討します。


和田さんの今後のライフプラン目標

1、和田さんの希望・目標
A) 子供の教育資金は、長女祐子さんが22歳になるまでを考えておきたい。
B) 子供の結婚資金は、それぞれ100万円程度を用意しておきたい。
C) 住宅ローンは返済期間が62歳まであり、可能なら繰上げ返済をしたい。
D) 家の修繕費用として、10年後には150万円の資金を用意したい。
E) 老後資金として、60歳時に3,000万円程度の貯蓄を目指したい。
F) 60歳から65歳まで勤めに出て、年収200万円程度の収入を確保したい。
G) 公的年金以外の自助努力を、投資型金融商品で準備したい。
H) 車の買換に、6年後150万円の資金を用意したい。

図表3 現在のキャッシュフロー表

単位:万円

西暦   2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2024 2025
経過年数     1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 14年 15年
本人   46才 47才 48才 49才 50才 51才 52才 53才 54才 55才 56才 57才 60才 61才
長男   18才 19才 20才 21才 22才 23才 24才 25才 26才 27才 28才 29才 32才 33才
長女   15才 16才 17才 18才 19才 20才 21才 22才 23才 24才 25才 26才 29才 30才
収入   580 580 580 580 580 580 580 580 580 580 580 580 580 200
基本生活費 1% 132 133 135 136 137 139 140 142 143 144 146 147 152 153
住居関連費   202 202 202 202 202 202 202 202 202 202 202 202 202 202
教育費(長男) 0% 52 202 102 102 102 0 0 0 0 0 0 0 0 0
教育費(長女)   43 82 52 52 202 102 102 102 0 0 0 0 0 0
保険料   36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 0 0
小遣い 0% 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36
一時的支出   0 0 0 0 0 150 0 0 0 150 0 150 0 150
支出合計   501 691 563 564 715 665 516 518 417 568 420 571 390 541
年間収支   79 ▲111 17 16 ▲135 ▲85 64 62 163 12 160 9 190 ▲341
貯蓄残高 1,940 1,861 1,972 1,955 1,939 2,074 2,159 2,095 2,033 1,870 1,858 1,698 1,689 1,186 1,527

和田さんの問題点の分析と対策


1、キャッシュフロー分析

・貯蓄残高は現在から定年まで赤字になることはありませんが、60歳時点の貯蓄残高が約2,500万円程度となり、目標の3,000万円にはあと少しと予測されます。
・長男・長女が大学進学した場合に年間収支のマイナスが発生し貯蓄は減りますが、特に不安視することはないでしょう。
・住宅ローンの返済期間は62歳までとなっていますが、退職後も返済を続けることは、家計への負担が大きいといえます。

2、バランスシート分析

・《図表2-1》「差引純資産額」はプラスです。固定資産である住宅に関してはマイナスとなっていますが、これは現在居住利用していることから時価評価額を気にする必要はないと考えます。しかし仮に家計破綻をきたし住宅売却を検討するようなことになった場合に、債務が残るようであれば心配です。
・住宅ローンの繰上げ返済及び一括返済の検討《図表4》。ローン残高から考えるところ、一括返済はできませんが、繰上げ返済を検討してみる価値はあります。

図表4 繰上返済効果

住宅ローン 融資残高
(09/12/31現在)
繰上返済額
(1,000万円の割り振り)
返済残期間 繰上返済による
利息軽減効果
住宅金融公庫 1,424万円 800万円 15年⇒3年 249万円
年金住宅融資 725万円 100万円 16年⇒12年 53万円
財形住宅融資 340万円 100万円 16年⇒6年 11万円

3、保障分析

・《図表5》の和田さんの死亡保障は3,200万円、家計への保険料の負担は、必要保障額から見ても特に大き過ぎるというものではありません。更新時の50歳に月額1.1万円アップしますが、このまま継続しても家計への影響は大きくないものと考えられます。ただし、長女が22歳になり経済的独立となれば、定期部分など見直す必要が出てきます。その後の人生に必要な保障は死亡保障より医療保障となるので検討事項となります。
ただ和田さんは、今から10年間程度の保障があれば親の責任が果たせると考えておられ、死亡保障には必要最小限度の保障をとお考えなので、掛け捨て型の「定期保険」を検討します。たとえばOX生命の46歳加入では、死亡保障2,000万円で月額8,620円程度となります。また医療保障は、OX生命の医療保険では終身型で月額2,960円の掛け金で1日5,000円の入院費用が保障されるなどを検討するのもいいのではないでしょうか。かなり家計への負担は少なくなります。


ライフプランの対策・解決策と方針

和田さんの希望・目標が可能となるのか、キャッシュフローからみてみましょう。

図表6 対策後のキャッシュフロー表

単位:万円

西暦   2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2024 2025 2028 2029
経過年数     1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 14年 15年 18年 19年
本人   46才 47才 48才 49才 50才 51才 52才 53才 54才 55才 60才 61才 64才 65才
収入   580 580 580 580 580 580 580 580 580 580 580 200 200 167
基本生活費 1% 132 133 135 136 137 139 140 142 143 144 152 153 158 159
住居関連費   1,202 202 202 202 82 82 82 58 58 58     0 0
教育費(長男) 0% 52 202 102 102 102 0 0 0 0 0 0 0 0 0
教育費(長女)   43 82 52 52 202 102 102 102 0 0 0 0 0 0
保険料   13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 4 4 4 4
小遣い 0% 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36 36
一時的支出   0 0 0 0 0 150 0 0 0 150 0 150 0 0
支出合計   1,478 668 540 541 572 522 373 351 250 401 192 343 198 199
年間収支   ▲898 ▲88 40 39 8 58 207 229 330 179 388 ▲143 2 ▲32
貯蓄残高 1,940 1,042 954 994 1,033 1,041 1,099 1,306 1,535 1,865 2,044 3,939 3,796 3,804 3,772

前提
1、教育資金など子供関連資金は、必要最小限の範囲内においてバックアップ可能な金額とする。
2、保険は、例に出した保険に加入した場合を加えています。

住宅ローンの繰り上げ返済を過去に何度かされているので、その効果は経験済みです。今回1,000万円を予定することにより《図表4利息の軽減額313万円の効果が出ます。それにより《図表6》の60歳の貯蓄残高は3,939万円と予想されます。
住宅関連支出での修繕費用の10年後150万円の見積りですが、影響は少ないと考えられます。また、車の買換の6年間隔で150万円の見積りも可能となります。ただし最近の車の買い換え期間は延びていて、10年経過しても安心して乗れる車は多くなっています。次回予定の2019年は、車の消耗具合の様子を見て買い換え検討してみる必要があるのではないでしょうか。


投資教育と資産運用の実践

和田さんのご希望である「老後資金60歳時3,000万円」を目標とする場合、貯蓄と投資型金融商品で準備を検討されていますが、その時の資産運用面における投資のスタンスをどのように持つべきなのか考えてみましょう。
和田さんの会社では、確定拠出年金(401k)を導入する際に投資教育が行われました。これは投資知識に未熟である従業員が購入する際、将来予測しうるリスクの大きさを事前に知ることでトラブルになることを防ぐ意味合いが含まれています。投資教育とはそもそも、決して「儲かる情報の提供」ではありません。
投資教育は、まず「投資とは、株価や債権の価格が上昇するか下降するかを自己責任で判断しなければならない」と学びます。さらに新聞・ニュースなどから経済指標・経済情報を読み取り、経済・金融全般の知識を包括的に判断していくことになります。

習得したこのような投資教育を実践する方法として、資産規模別に二つの基準が考えられます。

1、数千万円の金融資産を運用する場合の投資方法
2、今から資産を積み立てて増やす場合の投資方法

金融資産が「数千万円以上ある投資家」には、資産全体としてのリスクを抑えつつ、より高い収益を目指すためにアセット・アロケーション(資産の配分)を行い、ベストな運用を見つければいいでしょう。しかしこの方法は、今から積立てを始める投資家にはあまりメリットがありません。
確定拠出型年金を始めたばかりの加入者の多くの方は、積立てを継続しリスクをとりながら複利効果を楽しみにするという方法で、じっくり資産の形成をはかることになります。「私はテクニカル分析やトレンド分析などの投資教育を受けたのだから、即実践可能だ」などといっても、果たして即結果につながるのかどうか、甘く見るのは危険です。また自己責任で選択すべきものとなっている以上、「どの運用商品を選択したらよいか」といった投資アドバイスを期待することはできません

投資の初心者である和田さんの場合は、「長期投資」というスタンスで考えてみます。
長期投資には、時間に縛られない複利の効果がある、投資額の大小に関わらずに運用できるなどのメリットが考えられます。

さらに長期投資の具体的な投資対象は、以下のよう金融商品の特徴が考えられます。

・外貨預金:為替の読みは誰でもできない
・公社債:固定金利が足かせになる場合がある
・株式:成長性のある企業を見つけられれば長期投資に向く

つまり、初心者が長期的スタンスで投資する場合の「投資の基本のキ」から始めたい場合、「株式会社の投資家になること」で投資を学ぶのがいいと思います。
株式が上場されている企業の「選択眼」を養い、相場感を知り、銘柄選定を行うわけですが、「何故その企業なのか」を自問自答することがそのポイントになります。つまり「生活感覚で投資を考える」「自分の生き様と照らし合わせて共感できるか」といった面での納得できるかを検討します。さらに「その企業のファンになる」「社会的責任はどうなっているか」「経済的環境変化である為替や債券金利などによる影響はどう関係する」から、価値ある判断に結び付けて投資感覚を身に付けていきたいものです。

投資教育に刺激されマネーゲームに興味をそそられるのはありがちなことかもしれませんが、当初の目的・ライフプラン達成のための手段だということを常に念頭において、「投資教育で得た知識」や「調べて見守り続ける(バードウォッチングならぬ株式ウォッチング)」を楽しみながら活用していきたいものです。

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