家計診断Q&A

家計診断Q&A

シングルマザーで親と同居の会社員です。
将来の夢に向け、4年後に2,000万円貯蓄を目標にしています。


 

井上 信一先生
(いのうえ しんいち)
プロフィール

  • 家計は“目に見える収入”と“見えざる収入”を合わせたエンジンで動いています。
  • 特段の事情が無ければ、もう少し柔軟な保険選びを検討してみましょう。
  • 資産運用は、大きく勝てないまでも大きく負けないことを心がけましょう。
     

神崎 直子さん(仮名 38歳 会社員)のご相談

現在は会社員ですが、将来は自分の料理教室を開く夢があり、今はその勉強と資金づくりの最中です。
4年後くらいには2,000万円を貯めるために普通預金をどう活用するか、また保有株式の処遇について迷っています。あわせて現在加入中の保険の妥当性についても教えてください。

神崎 直子さん(仮名 38歳 会社員)のプロフィール

年間収入 給与収入(額面) 4,000,000
手当等 500,000
合計 4,500,000
年間支出 居住関連費 600,000
日常生活費 食費 240,000
雑費等 180,000
携帯通信費 72,000
こども関連費 保育園費 318,000
その他 70,000
保険料 生命保険料 154,000
個人年金保険料 132,000
車関連費 自動車税 34,500
ガソリン等 140,000
損害保険料 16,420
レジャー 30,000
自由費 美容院 60,000
化粧品 70,000
小遣い 180,000
税金・社会保険等 550,000
合計 2,846,920
収支 年間収入−年間支出 1,653,080
貯蓄額 1,653,080
保有資産 預貯金 普通預金 5,000,000
福祉定期 3,000,000
債券 国債(5年固定型) 2,000,000
株式 個別株(時価) 2,340,000
合計 12,340,000

家計の3つの収入(就労収入・資産収入・万一の保障)を考慮し、
お金にも働いてもらいながら、夢の実現を目指しましょう!

神崎さんの現在の年間収入(額面)は扶養手当等を含め450万円。その約3割強を占める160万円も貯蓄に回せているのは、親と同居である点を考慮しても並大抵のことではありません。おそらく、よく管理された支出プランを立てているのでしょう。
加えて将来は素晴らしい夢をお持ちのようです。その夢を叶えるため、またはその後も安心した暮らしを送るためには、目に見える就労(事業)収入以外に、万一の保障資産収入も上手に働かせることが大切となります。


1.事業化は公的保障も考慮しながらフェードイン方式で始めましょう。

会社員と比べて、一生続けることができ、努力や工夫次第で収入を伸ばせ、場合によっては職住近居でご家族と過ごす時間も増やせるのが自分で事業を起こすことの魅力です。反面、軌道に乗せるまで収入が安定しないことは誰もが気にかけることですが、公的社会保障の違いも考慮しておきたいところです。

例えば、会社員は自営業者等が加入する国民年金制度に加えて厚生年金保険制度にも加入します。よって、将来の老齢年金だけでなく、本人が死亡した場合の遺族年金や障害状態になった場合の障害年金も両制度から給付を受けられる場合があります。
表は、神崎さんが万一の場合にどの程度の死亡(遺族生活)保障を必要とするか、その概算額の推移を試算したものですが、表中の「子に保障される収入総額」欄の遺族厚生年金は、厚生年金被保険者が死亡した場合か、退職後であっても支給要件(公的年金加入期間が原則25年以上)を満たした場合でないと支払われません。

死亡保障の概算不足額の推移

(万円)

本人年齢 子の年齢 子が必要な支出総額 子に保障される収入総額 概算不足額
生活費 教育費 合計 遺族基礎年金 遺族厚生年金 合計
38歳 3歳 4,200 1,040 5,240 1,530 600 2,130 3,110
39歳 4歳 4,000 1,010 5,010 1,428 560 1,988 3,022
40歳 5歳 3,800 980 4,780 1,326 520 1,846 2,934
41歳 6歳 3,600 950 4,550 1,224 480 1,704 2,846
42歳 7歳 3,400 930 4,330 1,122 440 1,562 2,768
43歳 8歳 3,200 910 4,110 1,020 400 1,420 2,690
44歳 9歳 3,000 890 3,890 918 360 1,278 2,612
45歳 10歳 2,800 870 3,670 816 320 1,136 2,534
46歳 11歳 2,600 850 3,450 714 280 994 2,456
47歳 12歳 2,400 830 3,230 612 240 852 2,378
48歳 13歳 2,200 780 2,980 510 200 710 2,270
49歳 14歳 2,000 730 2,730 408 160 568 2,162
50歳 15歳 1,800 680 2,480 306 120 426 2,054
51歳 16歳 1,600 620 2,220 204 80 284 1,936
52歳 17歳 1,400 560 1,960 102 40 142 1,818
53歳 18歳 1,200 500 1,700 0 0 0 1,700
54歳 19歳 1,000 300 1,300 0 0 0 1,300
55歳 20歳 800 200 1,000 0 0 0 1,000
56歳 21歳 600 100 700 0 0 0 700
57歳 22歳 400 0 400 0 0 0 400
58歳 23歳 200 0 200 0 0 0 200
59歳 24歳 200 0 200 0 0 0 200
60歳 25歳 200 0 200 0 0 0 200

(注)上記の保障不足額は、万一の親の死亡時に「子が必要な支出総額」から「子に保障される収入総額」を引いた金額
子が必要な支出総額は、子が22歳までの生活費総額(年200万円)、親の葬儀資金200万円、平均的な教育費総額の合計
子に保障される収入総額は、子が得られる遺族基礎年金と遺族厚生年金(年40万円と仮定)の支給総額の合計。
※表中の数値は一定の仮条件を基に算出した推定額です。

また、ケガや病気をした場合も同様で、会社員が休業により無給あるいは減額となると、1年半を限度に傷病手当金という一定額の休業保障を健康保険制度から受けることができます。しかし自営業者が加入する一般的な国民健康保険ではこの制度はありません

つまり、普段はあまり意識されませんが、いざという時に就労収入に代わって家計の収入の柱を担う一つが公的保障であり、この見えざる収入(保障)は、一般的には自営業者よりも会社員が手厚いのです。会社独自の福利厚生制度等が完備されている場合はなおさらといえるでしょう。

よって、給与収入による安定を図るためだけでなく公的社会保障等の面からも、事業プランを立てる場合はできるだけ「フェードイン=フェードアウト」で進めるのが望ましいといえます。就業規則にもよりますが、例えば最初は休日のみの副業から始め、次第に正規雇用から契約社員やパート等へ移行するように「そろり」と事業割合を増やしていくのが無難でしょう。その場合、会社の社会保険に継続加入できるのは原則として正規社員の就業時間等の4分の3以上働いていることが条件です。もちろん万事都合よく行くとは限りませんし、会社の規則に反する行為は禁物ですが、検討してみる価値はあると思われます。


2.更新時期には諸変化も考えられ、保険料負担が家計を圧迫する可能性も

さて、公的社会保障だけでは足りない金額をカバーすべく、万一の時に家計の予備エンジンとなるのが生命保険や損害保険です。
そのために神崎さんが現在加入している保険の一覧は下記のとおりです。

現在ご加入の保険資料

(1)定期保険特約付終身保険(26歳時に契約)
【主契約】5年ごと利差配当付終身保険

保険金額 100万円
保険料月額 5,800円(42歳から8,700円)
払込期間 60歳

【特約】 5年ごと利差配当付特定疾病保障定期保険

保険金額 500万円
保険料月額 9,745円
保険期間  15年(42歳時)

(2)更新型終身移行保険 (35歳時に契約)
【主契約】 5年ごと利差配当付移行型生存給付金付定期保険(一部年金形式)

保険金額 1,520万円(うち500万円は100万円×5年の年金)
保険期間 10年(45歳時)
保険料月額 5,240円
払込期間 65歳(払込満了時の生存給付金で終身保険に移行)

【特約】

保険期間 10年(45歳時)
保険料月額 5,007円
(傷害特約) 保険金額 100万円
(特定状態収入保障特約) 120万円×5年の有期年金(死亡給付金は年金1年分)
(総合医療特約) 入院給付金日額5,000円
(女性疾病特約) 入院給付金日額5,000円

(3)5年ごと利差配当付個人年金保険(税制適格特約) (38歳時に契約)

年金額 33万円×10年(確定年金)
保険料月額 11,000円
払込期間・年金開始年齢 60歳払込満了・60歳年金開始

いま、神崎さんが病気で死亡すると死亡保険金として2,240万円(不慮の事故の場合は2,340万円)が支払われますので、預貯金等と合わせれば上述の必要保障額と概ね同水準となり、特に保障面での過大感はありません。
しかし、加入中の保険は3年後と7年後に相次いで更新時期を迎え、その際には保険料の上昇が予測されます。このうち資料(2)の更新型終身移行保険は、10年更新型定期保険の満了時の生存給付金が更新後の保険料に充当される特殊な仕組みであるため、通常より保険料の上昇幅は緩やかになると思われますが、それでも負担増は避けられません。また、更新の頃は事業開始を希望されているタイミングなので収入が不安定になることが予想されるだけでなく、お子様の成長に伴った生活費等の上昇も考えられます。対して必要保障額はそれほど変わらず、事業資金のために取り崩す貯蓄の額によっては逆に保障額を増額する必要性に迫られるかもしれません。
さらに、もしその時期に親の介護が必要になってしまったら、神崎さんの家計収支が一気に悪化してしまう懸念すらあります。

現在のご健康状態によっては新規加入が難しいか、不利な条件付での契約になってしまうのならこのまま継続するのが無難ですが、もしそうでないのなら、保険料が割安な商品に今の時点で思い切って一部切り替えを検討してみる価値はあります
現在、神崎さんは特定疾病(ガンなど)にも手厚い種類の保険を選んでいますが、見直しをされる際には、ガン保障は先進医療給付や通院保障を付加できるガン保険で、死亡保障とは切り離して準備するのが保障内容的にも保険料的にも合理的です。掛け捨て型の終身介護年金保険を検討し、死亡保障は保険期間20年程度の割安な定期保険タイプを選ぶとより良いでしょう。38歳の若さであれば、充分保険料低減化は可能になると思われます。
また、資料(3)の個人年金保険については、税制適格特約型であり個人年金保険料控除が適用できる分だけ若干の税額軽減効果があります。一方、22年間の払込保険料総額約290万円に対し年金受取見込額が約329万円と、年金受取満了時の70歳までの32年間では税引き前利回り換算で約0.42%と計算できます。この数値は直近の個人向け国債等の利回りと比べるとやや有利ではありますが高金利定期預金より見劣りする上、何より30年超を要しての数値ですので絶対的に有利なものとは言い難い印象があります。とはいえ、途中解約する場合の解約返戻率は経過期間に比例して高くなる場合もありますので、金利上昇時や自営業になって国民年金基金等に加入できるようになった際、あるいは生命保険料負担が増した際に見直し等を検討しても遅くはないと思われます。


3.不安要素が残る運用手段に見切りをつけて積極策に打ってみる

就業収入と万一の保障に加え、自分以外の収入の担い手となる「資産収入」を築くことが、家計にとっての第3の収入源となります。
資産収入には大きく「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」があり、前者は売却益や換金差益を狙う方法で保有資産の価値の上昇が必須条件となります。一方、後者は利息や配当等による定期的な収入を図る方法で保有資産の価値変動の少ないものが理想的です。
どちらをメインに据えるかは個人の考えで変わってきますが、インカムゲイン中心の運用が失敗も少なく安定した収入を得やすいのは多くの方が想像されるとおりでしょう。
なぜなら、最初は売却益を狙って始めたものの、予測に反して資産価値が大きく値下がりしてしまったら、下落した以上に価値が上昇しないと元の状態にすら戻せないためです。

(例)100万円投資した資産が50%下落した(50万円の値下がり)。
→元に戻るためには50万円値上がりする必要がある
→資産50万円が50万円値上がりするためには100%の上昇(下落時の2倍)が必要!

このことから、資産運用を長く安定的に行うためには、「大きく勝つ」より「大きく負けない」ことが大切になります。
低金利下では資産を極力減らさず、いつかくる高金利時に「少しでも多くの元本」を「より長い預け入れ期間」の定期預金等に預け入れるのが究極の資産運用ともいえますね。

とはいえ、これでは4年後に2,000万円という神崎さんの目先の目標も大きく割り込んでしまう可能性もあります。
ちなみに、現在の年間150万円ペースでの貯蓄が可能だとしても、普通預金に預けているお金のうち400万円ほどを年利4%以上で運用しなければ2,000万円到達は難しくなります。
そこで、もう200万円ほどの資金を運用に回し、年間貯蓄も多少は有利なものに預け替えれば年利2%ほどでも5年後には2,000万円を超えられる見込となります。
ただし、預貯金や国債ではやはり目標利率を実現するのは難しいため、利率が高めの社債か外貨建て商品、あるいは投資信託等を候補に挙げざるを得ません

将来が不確実な投資に「絶対」はありませんが、例えば投資信託の中から選ぶなら、基本スタンスは分配金によるインカムゲイン(家賃収入に相当)による資産収入を目的とする不動産投資信託(J-REIT)に注目してみるのも面白いかもしれません。まだまだ予断は許せませんが、不動産価格は都心を中心にそろそろ底打ちを示す指標が現れ始めてきました。分配金による予想利回りは4〜5%超のものが殆どであり、投資信託の単価でもある基準価額は上昇に転じるものが多くなっているものの未だ歴史的には安い位置にあります。J-REITと一口にいっても様々ですので、分配金の利回りや直近の値動きだけでなく、投資対象(マンション系・オフィス系・ホテル系・倉庫系等)や負債・資本構成、資産規模等の基本情報に加え、投資物件の築年数なども考慮して、どのようなものを選べば良いのか金融機関や専門家の意見を参考にしてはいかがでしょうか。
高配当の分配金が見込める不動産投資信託を運用対象に選ぶのであれば、社債より高いリターンが期待でき、また将来の値動きが不確実な一般の投資信託等で運用するよりも確実性が高まります。投資資金は一部に留めておき、資金の大半や年間貯蓄分を相対的に金利の高いネット系銀行の3〜5年(税引き後で0.5〜0.7%)の定期預金で運用しても、資産全体でならせば平均的な利率で目標額を目指す準備を整えられそうです。
また、世界的な経済情勢が落ち着きをみせれば、為替相場が再び円安に向かう時期が来るかもしれません。その際には積立により外貨建てMMF等を行うのも良いかもしれません。
ただし、急な換金需要に備えて普通預金口座には少なくとも年間貯蓄程度の金額を待機させておくと安心でしょう。


まとめにかえて

最後に、保有個別株の処遇についてはこのコーナーでは何ともいえないところですが、日本のみならず世界的にみても株式相場はまだまだ波乱含みで予想がつきません。このような状況下で保有株だけ逆行高を期待できる強いイメージが沸くほどでなければ、資金を寝かしておかずいったん売却するのも一考です。一度に全部売ってしまった後で値上がりするのが後悔しそうなら、数回に分けて取引してはいかがでしょう?
ちなみに上場株式の譲渡損が発生しても、現在は上場投資信託等の譲渡益や分配金と相殺させることもできます。万一譲渡した年度の損失が残ってしまっても、確定申告により翌年以降3年間に渡る収益との繰越相殺もできます。投資行動の成果は結果をみなければ判断できませんが、その場に留まるよりも少額ずつでも分配金等により損失を埋めつつ、株式市場が本格的に上昇に転じたところでニュートラルな気持ちで改めて個別株に臨んでも遅くはないと思われます。


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