家計診断Q&A

家計診断Q&A

投資で損失を抱えてしまいました。
今後の対処方法を教えてください。


 

宮塚 達夫先生
(みやつか たつお)
プロフィール

  • 急いで損失を取り戻そうとしないことが重要です。
  • 目的に合わせた運用を考えましょう。
  • 最低限必要なお金はがっちり安全資産で。
     

諸星 光さん(仮名 60歳 会社員)のご相談

今年退職再雇用の60歳です。
大学生の子供が居ます。
積極運用を兼ねて3年前に国内株式や海外ヘッジファンド等へ資産分散しましたが、サブプライムローン問題やギリシャ破綻・株式低迷などに巻き込まれ、多くの損失を抱えました。
最初から10年程度は運用予定で、多少の変動は覚悟していましたが、評価額は投資の半値程度となり、為替差損も含め現在約1,500万円の損失を抱えております。
このまま暫く様子見でよろしいでしょうか?
年金生活に入りますが、今のところ日常生活には支障ありません。

諸星 光さん(仮名 60歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 諸星 光さん  (仮名 60歳 会社員)
      みゆきさん  (仮名 54歳 専業主婦)
      沙織さん  (仮名 30歳 会社員)
      健太さん  (仮名 25歳 会社員)
      洋子さん  (仮名 20歳 学生)
住居 : 持ち家  (ローンなし)

3年前の投資概要と現状

項目 3年前の投資概要 現状
普通預金 600万円 1,000万円
定期預金 4,500万円 4,700万円
国内株式 1,000万円 500万円
海外ヘッジファンド 2,000万円 1,000万円
外貨MMF   300万円
外国債券 100万円 100万円
外国投信   200万円
国内債券 500万円  
財形貯蓄 300万円  
合計 9,000万円 7,800万円

現在の収入および支出概要

手取り月収 330,000円(年金・給与等を含む)
ボーナス手取り 150,000円 × 2回
毎月の支出 329,000円

今後の就業計画及び、リタイヤ後の年金等収入見込額と希望生活費

63歳でリタイア予定<年金44年長期加入者特例を利用>

収入見込額 45万円/月 <任意個人年金の加給あり・終身>
希望生活費 33万円/月

今後の大きなイベントおよび予想費用

イベント 予想金額
リフォーム 800万円
結婚費用等 援助(子供3名) 1,500万円
学費援助 200万円
旅行・趣味 300万円
車 買い替え 200万円
合計 3,000万円

損失を無理に取り戻そうとせず、
安全運用を中心に資産を減らさないような投資を

1.現状

諸星さんは、現時点で大きな損失を抱えてしまったとはいえ、7,800万円の資産をお持ちです。 今後予定される大きな出費も合計3,000万円。
単純に引き算をしても残り4,800万円です。
また、リタイヤ後の収入が月々45万円に対して、希望生活費が33万円。
毎月12万円が手元に残る計算になります。
一般的にはとても恵まれた資産をお持ちで、現状を維持している限りは老後生活に不安を感じることはないといえるでしょう。
さらに持ち家もあり、いざとなったら土地を担保に老後資金を借りるリバースモーゲージを活用するといった荒業を使うことも可能です。


2.今後の運用を考える

現在、諸星さんのポートフォリオは金融資産7,800万円に対して、普通預金・定期預金の合計が5,700万円。70%以上が安全資産で運用されています。
リスク許容度を測る目安としてよく使われる言葉に七五三があります。安全資産を70%・50%・30%を目安にどの位の割合で組み込むかという意味ですが、その意味では堅実なポートフォリオといえそうです。リタイヤ後の運用で一番重要なことは、いかに資産を減らさないようにするかです。
諸星さんは生活に必要な資金を安全資産で確保した上で、残りの資金を高収益の狙える運用に回しています。今後も安全資金と運用資金の割合を崩さないことが大切だと思います。

運用で少し気になるのは、運用商品2,100万円の4分の3以上を海外投資が占めていることです。運用成績と為替変動、両方のリスクがあるので、売るタイミングがとても難しいような気がします。
国内投資の比率を増やすことも選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。


3.損失をどうするか

慌てないことです。
諸星さんは当初から10年程度の運用は考えていたのですから、長い目でみることが大切です。
一番いけないことは、損失を短期間で取り戻そうとして、よりハイリスクハイリターンの商品にスイッチしてしまうことです。

下の表をご覧ください。
1,000万円を投資して年5%の利回りで運用できたとすると10年後には1,600万円以上になります。しかし、1年目に700万円、あるいは半分の500万円になってしまった場合どうなるでしょうか。
2年目から5%の利回りが確保できたとしても500万円になってしまった場合は、10年後1,000万円を大きく下回るのです。元本の1,000万円まで回復するのは16年後になります。30年後には倍以上の開きが生じてしまいます。
これは複利効果によるものですが、このように一旦大きな損失が生じてしまった場合には、予定していた運用ペースに戻るにはかなりの時間が必要になることを覚悟しなければいけません。
損したことは忘れて、今年から投資を始めた気持ちでいてください。
もちろん長い年月の間には、予想外の高利回りが生じることも十分に考えられるのですから、当初の10年計画をもう少し延ばしてみることも検討されてはいかがでしょう。

元金 1年 5年 10年 15年 20年 25年 30年
10,000,000 10,500,000 12,762,816 16,288,946 20,789,282 26,532,977 33,863,549 43,219,424
  7,000,000 8,508,544 10,859,298 13,859,521 17,688,651 22,575,700 28,812,949
  5,000,000 6,077,531 7,756,641 9,899,658 12,634,751 16,125,500 20,580,678

4.アセットアロケーションを再考してみる

これまで述べてきたように、諸星さんの資産配分に問題があるとは思いません。
しかし、勤労収入がなくなるリタイヤ後のことを考えると、やはりこれ以上資産を減らさないことが最も重要です。現在の損失を挽回することは難しくなりますが、割り切ってもう少しローリスクローリターンの商品で運用してみることも考える価値がありそうです。
ではどんな商品を選べばいいのでしょうか。
ローリスクだが、少しでもリターンが大きいほうがいい。
そんな商品を探すのに役立つのが、シャープレシオです。

シャープレシオ = リターン − 銀行預金などの元本保証利率
リスク(標準偏差)

の式で求めることができ、大きい数字の方が優れています。

例えば
  A  リターン  10%  リスク  9%
  B  リターン  5%  リスク  4%
のふたつの商品があったとします。
Aの方が、リターンが大きいため、良い商品のように思えますが、シャープレシオを求めてみると
 A=1.11
 B=1.25
とBの方を選んだほうが賢明ということになります。

老後資金を減らさないという目的からすると、リターンを設定してから低いリスクの商品を選ぶよりは、まず上限リスクを設定した上で高いリターンの商品を探すことをお勧めします


5.まとめ

昨今の金融危機で大切な資金が目減りして、老後の生活設計が狂ってしまったという方が大勢いらっしゃいます。
少ない公的年金、増えない銀行預金、かといって投資によってこれ以上の損失は被りたくない。リタイヤ時期を遅らす、奥様がパートに出るなど、ある程度の年齢までは対策も可能ですが、70歳80歳になってからではそうもいきません。細々と暮らしていく以外にないのです。

そんな中で諸星さんはこれまで着実に資産を築いてこられました。リタイヤ時期についても厚生年金の「44年長期加入者の特例」を利用しようとされるなど、勉強も相当されていることと思います。これから諸星さんに明るい豊かなセカンドライフが訪れることを確信しています。

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