家計診断Q&A

家計診断Q&A

 

住宅ローン返済に加え教育費捻出。
保障はどれくらい必要?


 

鈴木 暁子先生
(すずき あきこ)
プロフィール

  • 必要保障額は自助努力で減らすことができます
  • 保険は目的をシンプルにすると割安です
  • 貯蓄を増やすためには収入の見直しも
     

加藤 良夫さん(仮名 50歳 会社員)のご相談

住宅ローン返済に加え教育資金の準備が必要です。現在準備がほとんどできていませんが、どれくらい準備しておくべきでしょうか。
また死亡保障についても十分なのかわかりません。夫婦それぞれいくらぐらい必要でしょうか。今はどのような保障を重視すれば良いのでしょうか。

加藤 良夫さん(仮名 50歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 夫 50歳 会社員
  妻(洋子) 47歳 自営業
  第1子(朋子) 18歳 短大1年
  第2子(みゆき) 14歳 中学2年
  第3子(みさき) 14歳 中学2年
住居 : 持ち家(2,200万円借り入れ、住宅ローン返済中、団体信用生命保険なし)

※以下「ボーナス時、臨時」は年間合計額

【収入(税引き後手取り】
  毎月 ボーナス時、臨時
340,000 1,400,000
130,000  
収入合計 470,000 1,400,000
【支出〈固定費)】
  毎月 ボーナス時、臨時
住居維持費 50,000  
車維持費 10,000 100,000
住宅ローン 87,000  
自動車ローン    
保険料 54,000  
第1子関連費 20,000 200,000
第2子関連費 20,000 100,000
第3子関連費 20,000 100,000
小遣い 30,000  
固定費合計 291,000 500,000
【支出(やりくり)】
食費※1 70,000  
水道・光熱費 30,000  
通信費 30,000  
交際費※2 10,000  
教養娯楽費 10,000  
その他 10,000  
使途不明金 19,000  
やりくり費合計 179,000 0

※1 : 外食含む
※2 : 帰省費含む

支出合計 470,000 500,000
【貯蓄】
商品名 毎月貯蓄額 ボーナス時、臨時貯蓄額
財形 6,000  
    900,000
貯蓄額合計 6,000 900,000
【貯蓄残高】
商品名 合計
財形貯金 1,500,000
定期貯金 500,000
保険積立 1,000,000
貯蓄残高合計 3,000,000

※第一子22歳時に学資保険の満期金250万円あり


団信保険未加入のリスクも考え、 着実に貯蓄を増やしていく事が大切

1.必要保障額は自助努力で減らせます

加藤さん、こんにちは。住宅ローン返済に加え3人のお子さんの教育費と、今後しばらく支出の多い時期が続きますね。家族に対する責任が重い時期ですので、保障についてはしっかり考えていきましょう。

必要保障額は、基本的には
必要保障額 = 夫死亡後の支出 − (夫死亡後の収入+貯蓄)で試算します。
以下の前提にもとづいて具体的に見ていきましょう。

教育費(希望進路にもとづく)の前提

@朋子さん

 : 短大2年〜専攻科まで、年間44万円(現在の支出)

Aみゆきさん、みさきさん

 : 中学3年まで、年間34万円(現在の支出)
  公立高 年間52万円(文部科学省平成20年度「子どもの学習費調査」より)
  国立大学 初年度187万円、2年目以降106万円
  (鞄本政策金融公庫平成21年度「教育費負担の実態調査結果」より)

生活費の前提

夫死亡後は現在の生活費の7割。末子の独立(大学卒業)後は現在の生活費の5割とする


年金の前提

@遺族年金

遺族基礎年金 792,100円+227,900円×2人=1,247,900円≒125万円
  125万円×4年(末子18歳まで)=500万円
遺族厚生年金 良夫さんの平成15年3月までの平均標準報酬月額:30万円
  平成15年4月以降の平均標準報酬額:40万円と仮定
  ⇒ 報酬比例部分:754,000円≒75万円
  75万円×1.031×0.985×3/4=571,238円≒57万円
  57万円×23年=2,223万円

A洋子さん老齢年金

 : 第1号被保険者で満額とする(792,100円≒79万円)
  79万円×22年(65歳〜86歳)=1,738万円

B平成22年度金額で試算


その他の前提

@住宅ローン返済は60歳までと仮定
A死亡退職金は500万円
B妻の死後整理費用として200万円
Cその他(リフォームや臨時)支出として500万円と仮定


<支出>

単位:万円

子ども独立までの生活費 2,232
子ども独立後の生活費 6,200
子どもの教育費 1,734
住宅ローン 2,478
特別支出 500
妻の死後整理費用 200
支出合計 13,344

<収入>

単位:万円

妻収入 2,028
遺族基礎年金 500
遺族厚生年金 2,223
中高齢寡婦加算 767
老齢基礎年金 1,738
死亡退職金 500
貯蓄・その他 550
学資保険 250
収入合計 8,556

試算では必要保障額=1億3,344万円−8,556万円=4,788万円となりました。加藤さんの場合、住宅ローンの団体信用生命保険に加入していらっしゃらないため、住宅ローンの残債分も保障に含めなければならないのが大きな負担となります。ただし、必要保障額は工夫次第でもっと削ることが可能です。

@妻の収入を増やす
洋子さんは自営業ということですから定年がありません。もし健康であるなら60歳で仕事を辞めずに、できる限り継続しましょう。65歳まで働けば780万円、70歳まで働けば1,560万円も必要保障額を削減できます。


A生活費を抑える
通信費、水道光熱費、こづかいなどで月1万円を減らせるなら10年で120万円、39年(86歳まで)で468万円削減できます。


B年金の繰り下げ受給
もし年金の受給を繰り下げることができそうであれば、年金受給額を増やすことができます。本来65歳から受給できますが、これを66歳0ヶ月からの受給にすれば月に約5,000円(86歳までで約126万円)増額、67歳0ヶ月からであれば月に約1万円(86歳までで約252万円)増額となります。
これらの実践で2,300万円近く必要保障額を削減することが可能なわけです。


一家の大黒柱が亡くなっても、これまでと同じ生活を維持するために保険でまかなおうとすると必要保障額は高額になります。遺族も生活を見直し、このような自助努力で保険でまかなう分をできるだけ少なくすることがポイント。「保険の見直し」の前に、まず「保障額の見直し」です。


2.保険選びは目的をシンプルに

では、現在の加藤家の保障について見てみましょう。

  保険商品 種類 保険金額 保険期間 保険料 払込期間
生命保険 死亡 2000万円 終身保険 192,000円 60歳
ファミリ-保険 死亡、医療 250万円 終身保険 120,000円 60歳
日額5000円
生命保険 死亡、医療
(生存給付金付)
500万円 49歳 216,000円 49歳
日額5000円
ファミリ-保険 死亡、医療 100万円  
日額5000円

保険は、基本的に定期型と終身型があります。終身保険は一生涯の保障が得られるため、保障が一定期間の定期保険よりも保険料は高くなっています。したがって終身保険で準備する分は葬儀や死後の整理費用程度に抑え、教育資金や遺族の生活費などは見直しがしやすく保険料も割安の定期保険でカバーする、と考えるのが一般的です。

上記の考え方からすると、現在良夫さんの死亡保障として2,000万円と250万円の保険に加入(いずれも60歳払込終了)されているのは、終身保険としては大きすぎるということになります。

しかしここで考慮しないといけないのが良夫さんの年齢です。これから定期保険に加入した場合を試算してみましょう。前章でご提案した自助努力を実践し、必要保障額が約2,500万円程度になると仮定します。

50代で新規加入あるいは更新となると、決して割安とは言えなくなります。加藤家の場合は、終身保険はこのままで、不足分を比較的割安な共済などの定期保険で上乗せするほうが良いでしょう。


<現在の終身保険はそのままに、不足分の300万円を定期保険でまかなうケース>

  保険金額(万円) 年間保険料(円) 払込期間(年) 保険料総額(円)
終身 2,000 192,000 9 1,728,000
終身 250 120,000 9 1,080,000
定期 300 21,600 10 216,000
合計   333,600   3,024,000

※定期保険は共済系(年払い)で試算

<終身保険を500万円程度に減額、定期保険で2,000万円をまかなうケース>

  保険金額(万円) 年間保険料(円) 払込期間(年) 保険料総額(円)
終身 300 267,930 9 2,411,370
終身 250 120,000 9 1,080,000
定期 2,000 177,450 10 1,774,500
合計   565,380   5,265,870

※定期保険は共済系(年払い)で試算

※終身保険は現在の保険料から換算し、100万円あたり9,600円とした

50代で新規加入あるいは更新となると、決して割安とは言えなくなります。加藤家の場合は、終身保険はこのままで、不足分を比較的割安な共済などの定期保険で上乗せするほうが良いでしょう。

次に洋子さんの生命保険ですが、49歳時で保険期間満了ですね。これを更新するとなると、やはり現在の保険料からアップします。この保険は生存祝い金付のため、通常の定期保険よりもともと高額です。祝い金はうれしいものですが、そもそも自分の掛け金で貯めているもの。しかも一定時期にしかもらえません。その後も死亡保障を確保するには更新し続けなければならず、そのたびに保険料が上がっていくのは収入が少なくなる家計には負担が重過ぎます。それよりも保障内容を"死亡保障"に絞り、葬儀費用200万円程度を確保するという考え方もあります。試算してみましたのでご覧ください。

  保険金額 年間保険料 払込期間(年) 保険料総額
終身 200万円 134,160 11 1,475,760

※共済系(年払い)で試算

現在の保険料と比較しても年間約82,000円、49歳からの11年で90万円以上保険料を削減できます。

また洋子さんの医療保険はファミリー保険ですので、良夫さんに万が一のことがあった場合は保障が終了してしまいます。洋子さんご自身が被保険者となった医療保険に加入する試算もしてみましたのでご覧ください。

  保険金額 年間保険料 払込期間(年) 保険料総額
終身 日額5,000円 87,240 11 959,640円

A社のもので試算。

定期保険満了時から加入し60歳払込終了のケースですが、上記の保険と先ほどの終身保険の保険料を合わせても、現在と保険料がほとんど変わらず負担感は同程度です。ただし、もし良夫さんがファミリー保険の保険料を払込終了まで無事払い終えれば洋子さんが終身医療保険に加入せずとも保障を確保できるわけで、この分の保険料は不要です。ちなみに良夫さんが払い込み終了直前で亡くなられたため加入することになった場合の保険料は、終身払いで月々4,030円(保険料総額1,257,360円)です。

今回試算に選んだ保険は、基本的に本来の保障に絞った商品です。最近は生命保険で「医療特約をつけない」、医療保険で「1回あたりの入院日数を60日」にしたり、「死亡保障はつけない」などシンプルな商品設計で割安な保険が提供されています。死亡保障は生命保険、医療保障は医療保険というように、目的を絞って加入するほうが無駄なく割安に保障を得られますので、保険料とのバランスで上手に割り切ることも必要です。ネット生保などもシンプルで割安をウリに加入者が増えているようですので、選択肢として比較するのも良いでしょう。


3.加藤家の場合、現状の家計改善がすべてにつながります

加藤さんは、お子様の教育資金や必要保障額のご心配をされていますが、実ははさらに心配なことがあります。

まず現在のキャッシュフローを見てみましょう。教育費、生活費、年金については以下の前提で仮定しています。

教育費の前提(希望進路にもとづく)

前章で記載のとおり


生活費の前提

末子の独立(大学卒業)後、生活費を現在の7割とする


年金の前提

@良夫さん

 : 平成15年3月までの平均標準報酬月額:30万円
  平成15年4月以降の平均標準報酬額:40万円と仮定
  報酬比例部分:999,212円≒100万円
  定額部分:1,676円×1.000×439月×0.985=724,727円≒72万円
  加給年金:227,900円≒23万円

A洋子さん

 : 第1号被保険者で満額とする 老齢基礎年金:792,100円
  振替加算:15,300円
  合計:807,400円≒81万円

B平成22年度金額で試算

<キャッシュ・フロー表を別ウィンドウで表示>

ご覧いただくとおわかりのように、良夫さんの退職金支給時をピークに貯蓄の取り崩しが始まり、良夫さんが亡くなった後さらに取り崩しが大きくなるため、洋子さんの平均寿命まで貯蓄が持ちません。早急に改善が必要です。

一般的に収入に対する貯蓄割合として、およそ10〜20%程度が目安とされています。現在は12%の貯蓄ができていますが、双子のお子様が高校入学してからは貯蓄のペースが落ち、大学在学中はほとんど貯蓄できない状況です。教育資金の負担が重くなる時期ですのでどうしても支出が多くなるのはやむを得ないと思いますが、なんとか10%程度の貯蓄を目指しましょう。

見直しポイント

@先取り貯蓄をしましょう
現在「財形貯蓄制度」に加入されていますが、もう天引き貯蓄額を増やすことはできませんか? 手取りの時点で引かれているので、その予算で生活していくことになり、貯蓄ができない、しにくい家計には効果的です。


A生活費の見直し
「水道・光熱費」や「通信費」はもう少し減らせそうな余地がありそうですが、いかがでしょう?食費も多めかなという気もしますが、育ち盛りのお子様なのでただ減らすのではなく、メニューの工夫や昼食もお弁当にするなどで節約を心がけてみてください。


B収入の見直し
一般的には50代前半くらいで教育費の支出が終わるケースが多く、その場合は退職までの期間にラストスパートで貯蓄を増やすことができますが、加藤家では良夫さんの退職時まで教育費の支出が続くため、貯蓄を増やすことができないまま無年金期間に突入してしまいます。可能であれば再雇用やパート的な働き方でも良いので、60歳以降も少しでも固定収入を得られることをおすすめします。


また洋子さんの現在の収入は約156万円とのことですが、この金額ですとご主人が配偶者特別控除を受けられないだけでなく、ご自身で社会保険料も払っていらっしゃるはずです。そうすると130万円未満で抑えて働いている主婦の家計(夫が配偶特別控除を受けられ、妻は社会保険料の負担なし)と比べても、世帯収入としてはそれほど変わらないことになります。自営業ということで収入の波はあるかと思いますが、可能であれば200万円程度の収入を目標にすると家計がグッと改善します。

「貯蓄を増やす」ということは「必要保障額を減らす」ことや「老後資金を準備する」ことに等しいのです。保険は使途が限られますが、預貯金はオールマイティ。できる限りキャッシュを増やしておくことが今の加藤家に実践していただきたいことです。ぜひがんばってください!


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