家計診断Q&A

家計診断Q&A

 

貯蓄を増やしたいのに独身時代の浪費癖が治らず、
家計をなかなか把握できません


 

井上 信一先生
(いのうえ しんいち)
プロフィール

  • 使いみちを大まかな項目に分けて家計の年間予算を立てましょう。
  • クレジットカードは利用月単位で把握し、リボ払いや分割払いは避けましょう。
  • 使途明細を把握するより、長続きする方法で有意義なお金の使い方を心掛けましょう。
     

吉田 由里子さん(仮名 29歳 会社員)のご相談

会社の同僚の彼と1年半前に結婚し、現在は夫婦共働きの2人家族です。独身時代はお互い金銭感覚に疎く使い放題だったので、結婚を機に改めようとしましたが思うように実践できていません。家計簿も長続きせず最近では手を付けていない有様です。 今は何とか黒字で、夫婦とも今後も働ける環境と意思があるため少々危機感が足りないのですが、子どもやマイホームのことなど、将来に対する不安も漠然と抱いています。 お金の収支の流れが全く把握できていないのでそれを掴み、貯蓄体質の家計に改善できる良い方法を知りたいと思います。 ちなみに、ポイントを集約するため、できる限りクレジットカードの一括払いに切り替えましたが、ここ半年ほどは、ついリボルビング払いも利用する悪循環になってしまい、それも悩みの種となっています。

吉田 由里子さん(仮名 29歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 本人(29歳 会社員)
  夫(32歳 会社員)
住まい 賃貸住宅

目的ごとの予算を決め、その予算内で使う習慣を。
活きた使い方を実感して、お金への不安は軽減させましょう。

散財性向の方も倹約志向の方であっても、家計管理ができていなければ、収入や支出の増減に応じて計画的な資産形成をおこなうのは難しくなります。ただ、ここでいう「家計の管理」とは、後付けで収支を完璧に記録することやそれを把握することではなく、むしろ先付けで家計を掌握できることです。つまり大切なのは、家計簿をこまめに付けることではなく、「今年1年、何にいくら使うのか予定(予算)を立て、立てた予算のもと使う金額を操れること」なのです。一朝一夕には上手くいかないと思います。だからこそ、慣れるまでなるべく長続きできるようシンプルに捉え、お金を使う楽しさを感じながら行える工夫が大切でしょう。
吉田さんご夫婦のようにためらいつつもお金を使っている状態の方は少なくはありません。「お金は使うためにあるもの」なのですから、もっと有意義に、思い切り使えるような方法を今回はご紹介したいと思います。

ステップ1 まずは家計の最低限のランニングコストを掴みましょう

後付けで収支の記録や把握に翻弄されがちな家計簿には意味がないと述べましたが、これから立てる家計の予算がまったく現実離れしては絵に描いた餅になってしまいます。そこで、ひとまずは1ヵ月程度でも良いので使った金額の明細やレシート等を集めて頂き、何気なく過ごしている暮らし向きの実体(家計水準)を掴む作業がまず必要となります。 とはいえ、月によって出費の多寡は異なります。ここで知りたいのは家計における最低限のランニングコスト、つまり固定支出や日常生活費等のライフライン支出の概観です。

図表1 吉田家の最近1ヵ月間の家計メモ

<吉田家の最近1ヵ月間の家計メモを別ウィンドウで表示>

図表1は、直近1ヵ月間の吉田家の収入と支出、そして貯蓄残高の推移を調べていただいたものです。吉田さんご夫婦は会社員なので、暦上では給与支払いのある月中から翌月中までがひと月の単位となります。その間に口座引き落としの各種支払いやクレジット会社の引き落とし、現金支払いのための預金の引き出し等があります。クレジット会社からの引き落としは概ね前月度分の出費に対するものですが、平行して今月度分の利用もあります。
ただし、この中にはクレジット会社B社のリボルビング払い(以後、リボ払い)も含まれています。リボ払いとはクレジットカード利用における支払い方法の一種で、利用額や利用回数に関わらず毎月の支払いを一定額に固定できる方法です。後述するように利息負担が相当大きくなり、かつ総支払額を把握しきれなくなる可能性が高いので真っ先に改めたいところですが、吉田さんの場合は当月1万円の支払いと同時に3万円の新規利用があるようです。また預金口座の残高合計は、月初に対し月末は25,000円の増加(黒字)となっています。

さて、これで吉田家における家賃や保険料支払い、その他公共料金や大まかな日常生活費等の概観、つまりランニングコストを把握することができました。もちろん季節要因や月別での出費額は異なるものですが、ひとまずは吉田家の大まかな生活水準を予測し、予算案のたたき台を作ることができます。ただし、残念なことにこの時点で2点ほど、以下の大きな問題点が発覚してしまいました。

  1. どうしても使いみちを思い出せない使途不明支出(当月は2万7,500円)の源泉は何?
  2. 当月の黒字2万5,000円は果たして本当の黒字なのか?

ステップ2 家計の把握を困難にする原因を改めましょう

家計の把握が難しくなる原因の1つは使途不明支出の存在です。これはどんなに健全な家計でも発生し、完全に無くすのは中々難しいものです。では、使途不明支出は何故生まれるのでしょう?使った明細や金額を思い出し難い支出ですから、必要性の高い出費ではなさそうです。例えば少額の積み重ねや衝動買いなどが考えられます。既に使ってしまったこのような出費を完全に把握することは建設的な作業ではありませんね。それより、いっそ使いたくても財布にお金がないので使えないようにしてしまうとか、衝動買いをためらうようなルールを作ってはいかがでしょうか。例えば、洋服代や嗜好品、交際のための飲食代など個人に属する出費は「お小遣い」と合わせてすべて個々で予算を決めて自己管理し、家族共有の財源(預金口座)から使えなくしてしまえば良いのです。家族の外食についても1年・1ヵ月単位で使える金額を決めてしまえば、次第に使い方について意識するようになります。使う用途やシーンを狭めて予算を決め、使える残高の減り具合を適宜把握できるようお金を分別管理し、家族共有の預金口座からの持ち出しを遮断して利便性を排除してしまうのです。ただし、予算はとかく過小になりがちなので、適宜上方・下方修正する融通性を持っておくと良いでしょう。ともかく、決めた範囲内でお金を使えるようになれば、その中で何にいくら使ったのかの使途は大した問題ではなくなります。また、本当に必要な支出かを意識するようになるので自然と衝動買いも減るものです。

一方、吉田家のもうひとつの問題としてクレジットのリボ払いの利用が挙げられます。リボ払いは月にいくら利用しようが何回利用しようが定額の返済なので、一見、便利な方法に感じられます。しかし、家計の実体を実感できず、毎月の支払い額しか意識しなくなるため、家計管理においてはまさに大敵なのです。例えば吉田さんの場合、外食費としてB社で利用しているリボ払いは月1万円です。ところが実際にはこの半年ほどの外食費は月3万円のペースですので、差額2万円の乖離があります(3万円使っても、リボ払いなので請求額は1万円)。つまり、月締めの支払いベースでは2万5,000円の黒字ではありますが、本当は5,000円の黒字しかないのが家計の実体なのです。このような乖離が続く限り、家計をコントロールすることなど難しいでしょう。
また、当月利用金額に対し、翌月に返済し切れず繰り越した分にはさらに利息が乗せられます。現在、リボ払いの標準的な手数料・利率(実質年率)は概ね15%ですが、利息の計算は単純に利用金額にこの率を乗じればよいわけではないのでかなり複雑です。

図表2 リボルビング定額方式払いのシミュレーション

<リボルビング定額方式払いのシミュレーションを別ウィンドウで表示>

図表2は吉田さんが利用したリボ払い(毎月3万円で6回利用)の支払い明細を試算したものです。合計18万円の利用を月1万円ずつ返済すると全部で20回の返済回数となります。また、利用額に対する利息込みの支払総額の割合は110%(1割増)となります。ここで、初回の利用から第6回目の支払いまでを注目してみましょう。毎月3万円の利用をしても支払額は1万円で変わりませんが、元金の内訳が減り逆に利息が増えているのがわかりますね。実はリボ払いの計算は、前月末の元本残高に年率を月按分した利率を乗じて利息を算出します。そして定額の支払額から利息を引いた残りが元金返済に回る仕組みとなります(下記参照)。

前月末の元本残高3万円、年率15%、1万円の定額支払いの場合

  • 当月分の支払い利息:3万円×(15%÷12)=375円
  • 当月分の元金返済額:1万円−375円=9,625円

よって、利用金額が増えるほど利息が増し元金返済が進まなくなります。その結果、返済回数が伸び、さらに利息が多く掛かる仕組みとなるのです。当然、1回当りの利用金額が高いほど猛烈に負担割合が増します。例えば5万円の利用を月1万で返済する場合、利用額に対する支払総額は約104%(支払い回数6回)ですが、その10倍の50万だと約158%、利用金額の1.6倍も支払う(支払い回数79回)羽目になるのです。一定割合で比例するわけではない点にご注意下さい。

図表3 リボルビング払いの利用金額別の支払総額

※ 毎月定額1万円の場合  (単位:円)

利用金額(A) 支払総額(B) 総支払割合(B/A)
50,000 51,961 104%
100,000 107,497 107%
200,000 231,576 116%
300,000 378,331 126%
400,000 557,950 139%
500,000 789,501 158%

<リボルビング払いの利用金額別の支払総額(グラフ) を別ウィンドウで表示>

しかし、リボ払いで本当に怖いのは、少額ずつ継続して利用してしまう場合です。1回当りの利用金額が少なく危機感に乏しくなりがちですが、気付いた時には借金が多額に上り、リボ払いを利用し続けるという負の連鎖を断ち切れなくなるためです。
幸い、吉田さんの場合はまだ余裕がありますので、早急に一括完済し、家計の実体に応じた水準での支出管理に切り替えましょう。


ステップ3 目的に応じた予算をたてましょう


さて、ようやく家計の予算を立てるステップです。参考となる数字として、図表1で確認した最低限のランニングコストに加え、たまたま直近の1ヵ月では使わなかった出費も考慮するため、この1年間での預金残高の増減を調べていただきました。

図表4 吉田家の理論年間収支

世帯手取り収入(昨年ベース) 5,800,000円
預金残高の増減 290,000円
理論上の支出額 5,510,000円
把握している支出額 4,590,000円
不明支出の額 920,000円

吉田家では1年前と比べて預金残高が29万円増えていました。ということは、把握できるか否かに関わらず、手取り収入からこの増加分を引いた残りを実際に使っていたことになります。吉田さんのご夫婦の場合は551万円となりますね。この中には、余暇やレジャー、旅行、お2人の洋服代等のほか相応の使途不明支出も含まれているでしょう。しかし、使ったことは残念ながら事実に相違ありません。この昨年の理論支出をベースに、目的やシーンに応じてまとめた家計の予算割り案が図表5の下側部分となります。

図表5 家計の年間予算と月別賞与別の振り分け

<家計の年間予算と月別賞与別の振り分けを別ウィンドウで表示>

この予算作成のコツは、概ね固定費となるランニングコストは実績ベースで計算して除いておき、使途不明支出(衝動買い等)の温床となりがちなその他の変動費に絞って管理する点です。しかも煩雑だと把握し難く長続きしないので、なるべく大まかなくくりでまとめてしまうと良いでしょう。例えば、毎日の食材や生活雑費は買い物をする担当もお店も似ていますので、ざっくりと「日常生活」等でまとめ、月4万2,000円の予算案としました。
あたかも国の予算編成のように担当制を敷けば、日常生活予算大臣は由里子さんとなるでしょう。由里子さんは毎月割り当てられた予算に沿って、給与が入ったら別の預金口座に移す等をします。項目別に残高をみながら超過しないように使うことができれば、基本的にレシート等を取っておいて家計簿に記録する必要はなくなります。また、毎月の外食・レジャー大臣は義孝さんです。同じように給与口座から専用の預金口座に予算の分を移し、その中で使い切ることをチェックして頂きます。実はこのような予算編成を行うことで、2つの利点があります。1つは無駄な支出や衝動買いが減ること。そしてもう1つは、当月使い切らなかった余りを翌月以降に持ち越せるという貯蓄効果が働くことです。例えば特に意識していなければ何気なく安い出費を重ねてしまいがちです。安かろう悪かろうではありませんが、とかくそのような出費は満足感が得られにくいのではないでしょうか。外食であれば、無計画に「何か食べて帰ろう?でもその辺の安いところで・・」が減り、「今月は2万円使えるから、贅沢して美味しいものを月末に食べに行こう」といった消費性向に変わっていきます。個人差はあるかもしれませんが、週に2,500円ずつ月4回の外食をするのと、2ヵ月に1回でも2万円を使うのとでは、同じ出費額でも満足度合いは異なるのではないでしょうか。
「貯蓄」の本質は、「今、使う代わりに将来使う時のためにお金を取っておく」ことです。
暮らしとお金との関わり方では、無造作にいつでも使えるお金が豊富にあることより、例え限られた中であっても活きた使い方をしているほうが幸せを感じることも多いのではないかと思います。このように考えれば、試案で作った予算案のうち、ひとまず将来の使途目的を定めない貯蓄目標とは別に、外食・レジャー積立、各自の自由費の積立、旅行積立、財産購入積立など、幾つかの積立額を形成し、お金が貯まったら使うといった消費性向ができるようになります。この習慣の応用が、お子様の学資積立であり、マイホーム資金積立であり、老後生活積立なのです。


まとめにかえて


具体的な資金管理手段として、以前は予算別にそれこそ袋分けにしたり表計算ソフト等で管理する必要もありましたが、昨今では同一金融機関で目的別の複数口座に分割できる機能や、別々の預金口座を一元管理できるサービスがネットで手軽に利用できます。また、電子マネーも飛躍的に便利になりましたので予算ごとにカードを分けて利用する手段も考えられます。クレジットを利用する場合は、余計な負担(利息)がかからないよう翌月一括払いが必須ですが、できれば最初は支払い月ではなく利用月単位でチェックしたいものです。ただ、慣れてくれば半年あるいは1年単位での支出ペースを掴めるようになります。予実差異が拡がらないよう賞与時期などに修正を加えていただければ良いでしょう。
試行錯誤や予算修正はあると思いますが、是非とも継続なさって下さい。
将来の安心は、今できることをしている充実感が支えになるものです。
お金に関する計画も、考え悩むのは一時の負担で、日々気をつけることは少なくしたいものですね。


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