家計診断Q&A

家計診断Q&A

2人目の子も欲しいし、ローンの繰り上げ返済もしたい。
老後の備えもしなければならないし、何を優先させればいいでしょう?


 

井上 信一先生
(いのうえ しんいち)
プロフィール

  • たとえお金がかかる選択でも家族の暮らしが潤う希望を最優先に考えましょう。
  • 基本的には、まず貯蓄プランを考え、次に保障の準備をバランス良く考えましょう。
  • 複数の希望がある場合にはお金の流れ(キャッシュフロー表)を利用しましょう。


広末 真紀さん(仮名 36歳 主婦)のご相談

年内に一人目の子どもが生まれます。今までは何とか貯蓄を増やせるように家計のやりくりを行ってきましたが、今後はどのくらいのお金がかかるのか分からない状態です。他にもいくつか希望がありますが、これを踏まえると現状の家計をどのように見直せば良いのでしょうか?

広末 真紀さん(仮名 36歳 主婦)のプロフィール

家族構成 : 本人 (36歳)
  夫 (33歳)

今後の希望

  • 子どもが生まれるにあたり、保障を充実させたいと思っている。学資保険も検討すべきか迷っている。
  • 子どもが生まれるまでにマイカーを購入したい(予算200万円)。住宅は持ち家なので駐車場代はかからない(現在ローン返済中)。
  • 上記を優先させた上で、「2人目の子を2年後くらいにつくる」「住宅ローンの繰上げ返済を早めに実施して老後のための資金づくりを行う」のいずれかを検討したい。
  • できれば、年に2回ほど家族旅行に行きたい希望もあるが、今後の希望を優先させた場合、それがかなうかどうか、そのためにはどのような家計の見直しをすべきか教えて欲しい。


 

迷った時は「暮らしが一番潤うものは何か?」を、お金の話抜きで考える。
お金の帳尻合わせは、後からいくらでも可能。

これから新しい家族を迎える広末さんご家族は、今が一番楽しみな時ですね。同時に様々なご希望やご不安が交錯されておられるようです。確かにお子様の誕生に伴って保障も心配になりますし、さらにもう1人のお子様をつくるとなると教育費等の出費の心配も決して小さくはないと思います。でもお金ありきで考えると、本当に大切なものを見失ってしまうこともあります。今回は、そのことをポイントに、あえて合理的なプランニングの優先順位は後ろに回して考えてみたいと思います。

現状の家計の状況を整理します

広末さんは、これまでよく家計を管理されてきました。奥様が働いている間(年収は約250万円)は、200万円ほどの貯蓄をされてきたようです。ただ、お子様が高学年になるまで、しばらく働くのをやめて子育てに専念したいとのご希望ですね。
では、まずは改めて広末家の家計状況として、支出の内訳を整理してみましょう。

図表1 家計の状況

(円)

年間収入 6,080,000
給与収入(夫 額面) 5,500,000
給与収入(妻 額面) 580,000
年間支出 5,550,700
居住関連費費 ローン返済額 1,039,000
維持費 324,000
日常生活費 食費 372,000
雑費等 122,000
公共料金 209,000
こども関連費 出産準備費用等 120,000
夫の費用 携帯通信費 96,000
通勤費 108,000
ランチ代 396,000
衣服 60,000
交際費 84,000
妻の費用 携帯通信費 48,000
衣服 96,000
交際費 48,000
美容 72,000
保険料 生命保険料 476,700
余暇費 レジャー・外食等 190,000
その他経費 冠婚葬祭・お歳暮等 200,000
医療費 120,000
ペットの費用 20,000
その他予備費 400,000
不明支出 0
税金・社会保険等 950,000
収支 529,300
貯蓄額 預金等 529,300
保有資産 4,700,000
預貯金 各種預金商品 4,700,000

図表2 収入の配分

ここで感心することは、夫婦各々が自由に使えるお金を、単にお小遣いだけでなく、携帯電話料金や洋服代等までをふくめて個々で把握・管理されていることです。この方法は、見えにくい大きな家計というお財布ではなく、見えやすい個々のお財布で使う額を把握できます。万一の時の痛みを伴う仕分作業(支出の削減)を分別管理できるのです。

次は、負債と保障の整理です。

図表3 住宅ローンの状況

当初借入金  1,750万円 (残債 約1,300万円)
借入時期・返済期間  2005年 25年(2030年満了)
金利  2.5%固定金利
返済方法  元金均等返済方式
備考  団体信用生命保険付保

償還予定表(年額換算 円)

経過年 年度 年間返済額 ローン残高
6年目 2010年 1,041,970 13,300,024
7年目 2011年 1,024,470 12,600,028
8年目 2012年 1,006,970 11,900,032
9年目 2013年 989,470 11,200,036
10年目 2014年 971,970 10,500,040
11年目 2015年 954,470 9,800,044
12年目 2016年 936,971 9,100,048
13年目 2017年 919,470 8,400,052
14年目 2018年 901,971 7,700,056
15年目 2019年 884,471 7,000,060
16年目 2020年 866,970 6,300,064
17年目 2021年 849,475 5,600,064
18年目 2022年 831,983 4,900,056
19年目 2023年 814,482 4,200,048
20年目 2024年 796,982 3,500,040
21年目 2025年 779,482 2,800,032
22年目 2026年 761,982 2,100,024
23年目 2027年 744,481 1,400,016
24年目 2028年 726,981 700,008
25年目 2029年 709,482 0

図表4 保険の加入状況

被保険者 保険の種類 目的 保険金額 保険料月額 保障期間/
払込期間
備考
終身保険 死亡保障、
老後保障
500万円 8,620円 終身/60歳払込  
収入保障保険 死亡保障 月額10万円 4,460円 65歳/65歳払込 現在の保障総額 3,840万円
医療保険 医療保障 日額1万円 4,758円 終身/60歳払込 60歳以後保険料月額439円
終身保険 死亡保障、
老後保障
500万円 8,930円 終身/60歳払込  
収入保障保険 死亡保障 月額8万円 1,897円 60歳/60歳払込 現在の保障総額 2,304万円
医療保険 医療保障 日額1万円 5,136円 終身/60歳払込 60歳以後保険料月額478円

住宅ローンについては、合理的な「元金均等返済方式」を選択されています。
この返済方法は、一般的な「元利均等返済方式」より返済期間を通し利息負担額が少なく済みます。スタート時の返済額は重くなりますが、返済期間の経過に伴って返済額が逓減していきますので、将来、家計負担が重くなる時期に、ローン返済額の重荷を軽くできる効果があります

一方、加入保険の保障内容については夫婦でほぼ同じ内容を準備しています。収入に対する割合が、やや大きい感もしますので、この点については後ほど検証したいと思います。


家族の未来予想図を描いてみます

優先順位の高いご希望を反映させて、お金の面での将来予測を行ないます。
生まれてくるお子様についても兄弟がいるほうが喜ぶでしょう。家族3人で暮らす今後のイメージと4人で暮らすイメージ。
家族がさらに1人増える喜びは、決して他のお金の使い方と比較できるものではないのでしょうね。まずはお金の話は抜きにして、もう一度ご主人とこれからの暮らしのことを話し合われて頂きたいです。今回は何よりもこのことが大切だと思われます。
まずは2人目のお子様が誕生することを前提としてシミュレーション致します。
ここで重宝するツールがキャッシュフロー表です。殆どのイベントにはお金がかかるものです。その優先順位をどう考えるべきか、そして現状のお金の管理はできても将来はどのように変化していくのか、これらを一元的に把握できるのがこのツールです。今回は私が作成しますが、できればキャッシュフロー表はいろいろと試行錯誤しながらご自身で作成され、毎年見直すことをお勧めします

図表5 見直し前のキャッシュフロー表

<見直し前のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

キャッシュフロー表に見積もった数値として、将来の収入や年金の動向、あるいは物価上昇率等は現状を踏まえて設定いたしました。
ご不安の一つでもある、支出面の教育費については、高校まで公立に進学し大学から私立コースを選んだ場合の、全国平均の数値で試算しています。この数値には学校教育費以外に、平均的な学校外活動費も含まれています(出典:文部科学省「平成18年 子どもの学習費調査」)。さらに今回は、他の支出と同じく将来に向けて一定割合での物価上昇を考慮していますので、1子と2子では微妙に金額が異なっています。
マイカーについては今年度に購入し、10年サイクルで買い替えをおこなうプランとしています。車を保有した場合のランニングコストとしては、主に自動車保険、車両税、燃料代、付加的な装備、定期的なメンテナンス費が必要になりますが、車種等に応じて金額に差があるため、今回はおよその設定で各々上乗せしています。
ほかに、日常生活費についてはお子様の誕生や独立にあわせて金額の調整もおこない、高齢期には一定の介護費用相当額も見積もることにしました。
プランニングは、やや悲観的な設定(収入は低め、支出は高め)となっています。実態との差異は追加で支出や貯蓄に回すことができますが、このため現状予測では、お子様の教育費負担が増す頃に、貯蓄残高がショート(赤字)になる予測となりました。
さて、ここからが優先順位を考えるプロセスとなります。


貯蓄と保障のバランスを考えます

万一に備える保障は、安心を先取りするものですから多く確保したいものです。「家族の死亡に備えたい」、「医療費も心配」と思いを馳せていくと、どうせなら厚めに準備したいと思いがちです。しかし、「世帯主が働けなくなってしまうリスク」、「高額な介護が必要になるリスク」、「老後の生活のリスク」、「家財等の損害に対するリスク」など、日常生活におけるリスクには際限がありません。このように考えると、果たして死亡保障や医療保障だけが充実していれば良いのか、疑問に思われることでしょう。そして、さらには保障ばかりを考えるわけにはいかないことに、改めて気が付かれると思います。
ご家族の状況や資産の保有状況等にもよりますが、基本の考え方からスタートすると、まずは将来のために必要な貯蓄を確保するのが最優先のケースが多いと思われます。その上で、他の支出の削減や収支の余力との折り合いを考慮して、使える枠の中で配分しながら保障にかけるコストを検討していく方法が理に適っています。
このような考え方に立ち、広末さんご家族について死亡保障についての最低限の保障額(必要保障額)を試算してみました。

図表6 必要保障額

(円)

    年間 必要年数 総額
遺族の必要資金 妻の生涯生活費 1,327,900 52 69,050,800
子の扶養生活費 663,950 22 14,606,900
住居費 324,000 52 16,848,000
教育費(子1人分)     12,182,609
その他余暇 400,000 30 12,000,000
整理資金     3,000,000
合計 (A)     127,688,309
手当可能資金 遺族厚生年金※ 548,389 52 28,516,223
遺族基礎年金 1,020,000 18 18,360,000
中高齢の寡婦加算 594,200 9 5,347,800
老齢基礎年金 730,000 23 16,790,000
預貯金     2,700,000
就業収入(43歳〜60歳) 1,000,000 17 17,000,000
死亡保険金     43,400,000
合計 (B)     132,114,023
必要保障額 (A-B) -4,425,714
保障額の削減余地 5,000,000

※平均標準報酬額を32万円とした場合

この試算によると、現状ではおよそ500万円が準備済保障額の超過であることが分かります。よって、今回は保障充実のためのプランではなく削減して貯蓄に回すプランをご提案いたします。

図表7 保険見直しプラン

被保険者 保険の種類 目的 保険金額 見直し例 効果
終身保険 死亡保障、老後保障 500万円 →払済保険へ変更 年103,440円
収入保障保険 死亡保障 月額10万円 継続  
医療保険 医療保障 日額1万円 継続または減額・切り替え  
終身保険 死亡保障、老後保障 500万円 →払済保険へ変更 年107,160円
収入保障保険 死亡保障 月額8万円 継続  
医療保険 医療保障 日額1万円 継続または減額・切り替え  

ご加入中の終身保険は、生涯の死亡保障だけではなく貯蓄機能もありますので、高齢期に一部または全部を解約して、老後資金に充てることもできます。ただし、今回は別途加入の収入保障保険がこれ以上保障額の削減ができない可能性がある点も踏まえ、ご夫婦の終身保険を「払済保険(終身保険)」に変更するプランを検討しました。払済保険とは、今後の保険料の払い込みを中止し、現状の解約返戻金等の額で一時払い保険に変更する方法です。保障額はコンパクトになりますが、一定額での契約が継続され、次第に解約返戻金も相応に貯まっていきます。つまり、保障を低めに押さえて「低燃費モード」にする見直しともいえるでしょう(契約からの既経過期間により変更できない場合もありますので、保険会社にご確認下さい)。

このプランで、貯蓄に回せる資金枠が広がりました。さらに、もうひと頑張り。他の支出のうち、ご夫婦の自由費用と予備費等から、あわせて月1万円の削減を検討してみて下さい。各々の予算からは数千円ずつで充分です。この痛みを分けあって頂ければ、見直し後のグラフの通り、当初のご家族の希望(お子様は2人)を叶える目処がつきそうです。 家計の予算配分を見る限り、予備費や交際費(冠婚葬祭やお歳暮代等)に余剰が見込めそうな印象もありますので、ここから家族旅行の積立を実施してはいかがでしょう?

図表8 見直し前後の貯蓄残高の推移

<見直し前後の貯蓄残高の推移を別ウィンドウで表示>

また、別途、貯蓄の余裕が確保できたところで繰上げ返済を実施するプランも検証いたしました。ただし、教育費負担が重い時期にはやはり手元キャッシュが再び脆弱になる懸念もありますので、「返済額軽減型」の繰上げ返済を検証しています。効果としては、2年後に100万円の繰上返済を実施した場合、20万円程度の利息軽減効果が見込まれます。
一般的な「期間短縮型」ではなく、この方法を検討した理由は当面の年間収支悪化を避けるためですが、広末さんの場合は、元金均等返済方式であることが幸いし、長期的には繰上返済効果も、さほど大きいものとはなりませんので、参考としてお考え頂ければ結構です。


最後に

2人目のお子様が誕生した場合、必要な保障額がどう変化するのかも気になるところでしょう。最後に、貯蓄プランの見直し後の場合で想定した必要保障額の推移予測もシミュレーションいたしました。

図表9 必要保障額の推移

<必要保障額の推移を別ウィンドウで表示>

貯蓄残高が計画通りに順調に増えていけば、万一の場合には遺族年金等の増額も加わって、再び大きな保障を準備する必要は特段なさそうであるとわかりました。
また、ご相談にもあった学資保険の検討については、前述の通り広末さんの場合は、必要な死亡保障額が準備されている点から、学資保険を活用する利点の一つである、親の死亡保障の確保が不要と思われます。残りの利点として、預貯金よりはやや有利な貯蓄効果がありますので、検討をしても良いと思われます(この場合、学資保険の満期保険金相当分だけ、再び死亡保障を備え持つことになります)。

繰り返しになりますが、お金の使いみちについては、たとえそれが収支面で厳しいことが予測されようと、家族にとって幸せな使い方をまず優先すべきだと考えます。合理性や効率性はその次順位で良いのです。 また、その際にはキャッシュフロー表を上手に使いこなして頂ければ幸いです。


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