家計診断Q&A

家計診断Q&A

妻の実家の土地に家を建てる予定です。
地代の支払い方法、住宅ローンの組み方、税金など留意点は?


 

宮塚 達夫先生
(みやつか たつお)
プロフィール

  • みなし贈与に注意しましょう。
  • 贈与の特例を利用しましょう。
  • 住宅ローンは繰り上げ返済を意識して選びましょう。


山田 一郎さん(仮名 30歳 外資系会社員)のご相談

現在賃貸住宅で暮らしていますが、今年一人目の子供が生まれたのを機に、妻の実家の土地に家を建てることにしました。二世帯住宅ではなく、妻の実家の横の空き地に建設予定です。
妻は一人っ子で、妻の両親は孫の顔がいつでも見られるのだから地代は要らないと言ってくれていますが、肩身の狭い思いはしたくないので少しは地代を支払いたいと思っています。どのくらいの地代が妥当なのでしょうか。
また私の両親も資金援助をしてくれると言っていますが、贈与税が心配です。 住宅ローンの組み方についても、注意点があったら教えてください。

山田 一郎さん(仮名 30歳 外資系会社員)のプロフィール

家族構成 : 山田 一郎さん (仮名 30歳 外資系会社員 手取り年収700万円)
  恵子さん (妻 29歳 現在休職中会社員 手取り年収450万円)
  真央さん (0歳)
  奥様はお子様が2歳時に復職予定。
  ご夫婦の年収は今後減る可能性はない。
  ご夫婦とも60歳まで就業予定。
  真央さんの幼少期のお世話は恵子さんのご両親がしてくれる予定。
毎月の生活費 : 25万円(来年からは30万円を予定)
現在の家賃 : 12万円
貯蓄 : 800万円
建築費 : 3,000万円
内頭金 : 500万円

資金援助額が1,110万円までは非課税
繰り上げ返済で金利も大きく下げられます

1.地代は払わないのがベストです。

通常他人の土地に家を建てる場合、家を建てようとする人は土地の所有者に借地権設定の対価として、権利金や地代を支払います。
この形態を賃貸借といいますが、奥様のご両親のように子供夫婦に対しては地代の要求をしない場合がほとんどです。このように権利金や地代を払わずに土地を借りることを使用貸借といいますが、この場合の税金について考えてみることにします。

もし親の土地を子供に時価よりも安い金額で売ったら、その差額がみなし贈与となり贈与税を払わなければなりません。贈与税を払いたくなければ、時価によって買い取らなければならないのです。
では、権利金も地代も払わずに土地を使用する子供が、本来支払うべき借地権相当額を贈与されているとみなされてしまうかというと、この場合はみなし贈与にはならないのです。
使用貸借の場合、借地権を設定するような強い権利は発生していないと考えられるからです。

地代を支払った場合はどうでしょうか。
土地の固定資産税以下の地代(※1)であれば、贈与税が課せられることはありませんが、相場の権利金や地代相当額よりも安い金額を支払った場合、その差額がみなし贈与として課税されてしまいます。
支払うのなら他人から借りている場合と同等の権利金や地代を覚悟しなければならないのです。でもそれでは奥様のご両親のせっかくのご厚意も台無しですし、山田さんにとってのメリットも小さくなってしまいます。

山田さんのお気持ちはよくわかりますが、思い切って奥様のご両親のお気持ちに甘えて、地代は支払わない方が良いと思います。

もっとも、この使用貸借されている土地は将来奥様が相続する時に相続税の対象となり、他人に賃貸している土地(貸宅地という)ではなく、親が使っている土地(自用地という)として評価され、評価額が高くなります。


2.住宅取得等資金贈与の非課税特例を利用しましょう。

住宅取得資金に関して平成23年度中に直系尊属(父母、祖父母など)から受けた贈与については1,000万円までが非課税となる特例です。
要件がいくつかありますが、山田さんは「贈与を受ける方のその年の合計所得が2,000万円以下であること」はクリアしており「来年の3月15日までに、居住の用に供すること又は居住の用に供することが確実であると見込まれること」という要件に当てはまりさえすれば利用できます。

またこの特例は暦年課税や相続時精算課税の基礎控除等と併せて利用することが可能なのです。
したがって、暦年課税の場合は1,110万円(基礎控除110万円)、相続時精算課税の場合は3,500万円(一般枠2,500万円)までの贈与が非課税となります。
尚、相続時精算課税の場合は非課税措置の1,000万円を超える金額については、相続時に相続財産に参入されるので、注意が必要です。

【相続時精算課税制度とは】
65歳以上の親から20歳以上の子に対して行われた贈与については、2,500万円までは非課税とし、超えた分は一律20%とする制度である。
本制度の適用を受けた贈与財産は贈与時の価額で相続財産に加算され、相続税が加算され、本制度により納めた贈与税は相続税から控除し、控除しきれない場合は還付される。

相続時精算課税制度を利用しようとする場合、相続税の基礎控除額を理解した上で、相続時に相続税が発生するのかどうか把握しておくことが重要です(※2)

現在の相続税法では5,000万円+1,000万円×法定相続人の数 が基礎控除額となり、例えばご兄弟がいらっしゃらない奥様の場合ですと、ご両親のどちらかがお亡くなりになった場合の法定相続人は親一人と奥様の合計二人ということになり、
5,000万円+1,000万円×2人=7,000万円
が基礎控除額となります。
二次相続の場合(残された親御さんも亡くなって更に相続を受けた場合)は法定相続人が奥様一人なので、6,000万円が基礎控除額ということになります。
ご主人様の場合もまず基礎控除額を算出してみてください。

土地の評価額や、特に未上場株式を所有している場合などは、ご両親の財産を評価すること自体が難しいのですが、何となく相続税がかかりそうだなと思ったら、税務署に尋ねてみるといいでしょう。
ただし、相続時精算課税制度を一旦選択すると、暦年課税は選択できなくなってしまうので注意が必要です。
今年の税制改正案では、基礎控除額を現在の6割に減らすことになっていることもあり、相続時精算課税制度は慎重に選択してください。
ご両親の援助金額にもよりますが1,110万円以内の場合は迷わず暦年課税を選択してください。


3.住宅ローンは繰り上げ返済手数料なしを選択しましょう。

住宅ローンについては、現在多くの商品があり、選択のポイントは下記のようにいくつかあります。山田さんの場合特に繰り上げ返済の条件に着目してください。

  • 金利
  • ローン期間
  • 固定金利か変動金利か
  • 手数料
  • 繰り上げ返済の条件

現在もっと低い金利のローンがほとんどですが、仮に3%の固定金利で資金援助なしに2,500万円の35年ローン(ボーナス返済なし)を選んだとしても、毎月の返済額は96,212円となります。
現在の家賃よりも安いですね。
山田さんの毎月の生活費が30万円に増え、お子様に一般的な教育費がかかったと仮定した場合のキャッシュフロー表がこちらになります。

<キャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

10年毎の小規模修繕、30年目の大規模修繕の費用を計上してもリタイヤ時にはかなりの貯蓄額となっています。計上されていない出費も多いかと思いますが、年金や退職金もあるでしょうから老後資金も万全といえるでしょう。
しかし一番注目すべきは、貯蓄金額に目をつぶれば5年以内にローン返済が可能であるということです。
繰り上げ返済をすることによって、金利支払い負担を相当軽減することが可能となるのです。
もちろん急な出費に備えて貯蓄も必要ですから、バランスが大切であることは言うまでもありませんが、仮にローン5年目で残債2,278万円を一括返済した場合、1,150万円以上の金利負担を減らすことができます。

以上のことから山田さんの場合、今後の貯蓄状況に応じていつでも繰り上げ返済できるように、繰り上げ返済手数料なし・回数無制限のローンを選択されることをお勧めします。
また、早期完済が可能と思われますので、当初固定期間の金利が低い変動金利型を選択し、金利負担の少ない内に完済することによって、さらに大きな金利低減効果が生じるものと思われます。


4.まとめ

山田さんの場合、双方のご両親の援助もあり、今後経済的に相当余裕のある生活が可能であると思われます。
ローン返済中は住宅ローン減税による税金還付だってあります。

最後に東北大震災の教訓という訳ではありませんが、十分な貯蓄が確保できるまで、生命保険や損害保険を利用した、万が一の時のリスクヘッジも大切であることを付け加えておきます。


Copyright(C) NTT IF Corporation