家計診断Q&A

家計診断Q&A

自宅の買い替えを検討しています。
売却と賃貸に出すのではどちらがよいでしょうか?


 

村井 英一先生
(むらい えいいち)
プロフィール

  • 賃貸に出すということは、たとえ1件でも不動産投資をするということになります。
  • 想定外の状況になったときに、対応ができるかどうかを考えておきましょう。
  • 投資には、「リスク」と「手間」がかかります。その点も含めて比べます。


真田 由紀子さん(仮名 40歳 会社員)のご相談

今住んできるマンションが手狭になったため、一戸建てへの住み替えを考えています。マンションは売却した方がいいのでしょうか?それとも、賃貸に出した方がいいのでしょうか?
賃貸に出した方がいい場合、売却した方がいい場合等を教えてください。

真田 由紀子さん(仮名 40歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 浩一さん (夫 40歳 会社員 年収680万円)
  由紀子さん (妻 40歳 会社員 年収450万円)
  隼人くん (長男 4歳)

収入(単位:円)

  月々 ボーナス 年間合計
世帯主の給与 400,000 2,000,000 6,800,000
配偶者の給与 250,000 1,500,000 4,500,000
合計 650,000 3,500,000 11,300,000

支出

  月々 毎月の支出とは
別の支出(年間)
年間支出
生活費 150,000   1,800,000
住宅ローン返済 50,000   600,000
教育費 50,000   600,000
生命保険 50,000   600,000
自動車関連 50,000 50,000 650,000
レジャー費・交際費 50,000 500,000 1,100,000
小遣い・雑費 100,000   1,200,000
貯蓄 100,000   1,200,000
合計 600,000 550,000 7,750,000

金融資産

金融商品 金額
普通預金 1,000,000
定期預金 3,000,000
財形貯蓄 5,500,000
投資信託など 2,000,000
合計 11,500,000

<購入を検討している一戸建て>

購入予定金額 : 6,500万円前後
頭金 : 500万円(貯蓄から)
住宅ローン : 6,000万円

<現在お住まいのマンション>

住宅ローンの残高 : 700万円
売却に出した場合に見込める売却価格 : 4,300万円
賃貸に出した場合に見込める家賃 : 月額18万円

売却よりも賃貸の方が収入は増えますが、
事業としての「リスク」と「手間」を考慮して判断を。

1.家計のチェックと見直しができれば、売却も賃貸も可能です。

景気の回復を促すために、今年は住宅の取得に関して、いろいろな減税制度が設けられています。もちろん、そのために無理して住宅を購入する必要はありませんが、買い替えや新規の購入を検討している人にとってはチャンスです
真田由紀子さんは、お子様の成長とともに現在お住まいのマンションが手狭になり、一戸建てへの住み替えを検討されていらっしゃいますね。ご夫婦とも安定したお仕事に就かれていて、お二人合わせるとある程度の収入があります。それだけに住まいのステップ・アップも可能ですが、今のご自宅をどうするか悩ましいところです。売却してしまうケースと、そのまま売らずに賃貸に出して賃貸収入を得るケースを比較して、メリット・デメリットを考えてみましょう。

まず、現在の家計の状況です。家計簿をつけていないので、おおざっぱにしか家計の状況がわからないということだったため、大まかに書いていただきました。いただいたものを拝見すると、税金・社会保険料を引いた後のご夫婦の収入と、預貯金も含めた家計の支出で140万円程度の差があります。そこで今回の分析では、半分の約70万円は把握できなかった支出とし、残りの70万円は貯蓄として残っているものとしてシミュレーションをしました(おそらく、月5〜6万円程度の支出は、他にあるのではないでしょうか)。
今住んでいるマンションは、人気エリアの駅近で、売却にも賃貸にもそれほど心配がないようです。空き部屋がほとんどなく、値下がりもしていないということですので、いずれを選ぶにしても期待が持てそうですね。
売却した場合、次に賃貸に出した場合をシミュレーションしてみました。売却した場合では、売却価格は低めに見積もり、諸費用とローンの残債を差し引いて3,100万円を得るものとしました。その分、新しく購入する一戸建ての住宅ローンを少なくできます。

<売却した場合のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

<売却した場合のグラフを別ウィンドウで表示>

次は今のお住まいを売却せずに、賃貸に出した場合のシミュレーションです。見込める家賃18万円から管理費・修繕積立金2万円を引いた、16万円が毎月の収入となります。20年後からは家賃が下がり、月15万円になると想定しています。

<賃貸に出した場合のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

<賃貸に出した場合のグラフを別ウィンドウで表示>

グラフを比較していただくとお分かりのように、売却をするよりも賃貸に出した方が収入は増え、将来の家計の状況がよくなると考えられます。売却した場合だと、80歳を過ぎた頃には貯蓄が底をついてしまう可能性があります。もっとも、このぐらい先のことであれば、少し家計を見直すだけで改善することができます。よって、ある程度の家計の改善ができれば、売却、賃貸ともに選択が可能です。


2.賃貸に出す場合のメリットとデメリットを考えてみましょう。

では賃貸に出した方が、売却するよりもよいのでしょうか。その結論の前に、売却に比べて賃貸に出した場合のメリットとデメリットを見てみましょう。売却の場合のメリット・デメリットは、この逆になります。

<メリット>

(1) 賃料収入が得られ、収入がアップする

売却をしないのでその分、新規購入の住宅ローンは大きくなります。しかし、現在の低金利では、金利を払っても差益が残るでしょう。住宅ローンの返済が終われば、さらに手取りが増えます。

(2) 賃貸物件を増やしていくこともできる

増えた収入をうまく貯めて頭金を作れば、2件目、3件目の賃貸物件を持つことも可能となります。賃貸経営に慣れてくれば、収益アップも期待できます。

(3) 収入の多様化が図れる

収入アップするだけでなく、収入源を複数確保できるというメリットがあります。現在はご夫婦の給与収入だけですので、働けなくなったときの不安があります。その点、家賃収入を確保していれば、収入面でのリスクが小さくなります。

(4) 老後に安定収入を得られる

仕事での収入は定年までですが、賃貸の場合は退職後にも収入を得ることができます。年金だけで生活するようになった時に収入源があれば、安心感が違います。

<デメリット>

(1) 大きな借金を背負うことになる

売却した場合は、売却代金からローンの残債を引いた残りを、新しい自宅購入の頭金に充てることができます。その分、新規の住宅ローンは少なくてすみます。賃貸に出すということは、そのために借金を増やすことになります。

(2) 金利上昇リスクがある

大きな借金を背負うということは、金利の上昇リスクが大きくなります。借入れの金額が大きいと、少し金利が上昇しただけで、返済金額は大幅に増えます。場合によっては、家賃収入を超える可能性もあります。ただ、固定金利の住宅ローンを組むことで、このリスクは回避できます。

(3) 空室リスクがある

金利上昇リスクと違って、空室リスクは回避できません。人気の物件といえども、すぐに入居が決まる保証はありません。空室だと収入が全くないにもかかわらず、管理費やローンの返済はしなければなりません。また、家賃を下げるなどの対策を取る必要があり、予定していた収入が確保できない可能性もあります。空室でも家賃を保証してくれる「空室保証」というものがありますが、中古物件では難しく、もしできたとしても家賃収入が下がってしまいます。

(4) 賃貸物件の管理や入居者募集の対応が必要になる

最近は、不動産管理会社がほとんどのことをやってくれるようになりました。しかし、だからといって管理会社任せで放っておいては、メンテナンスがおざなりとなってしまう心配があります。入居者の募集でも管理会社任せでなく、自ら関心を持って対応を考える必要があります。場合によっては、管理会社を代える必要もあります。さらに、入居者とのトラブル次第では、家主自らが対応に出なければならないこともあります。

(5) 経理を行い、確定申告や税金対策をする必要がある

給与収入だけなら、帳簿をつけたり、確定申告をする必要はありませんでした。家計簿をつけていなくても、構いません。しかし、マンションを賃貸にするとなると、確定申告が必要になり、帳簿をつけるなどの経理の作業をしなければなりません。納税資金の確保や節税対策も考えなければならないでしょう。


3.賃貸に出すということは、小さいながらも不動産経営です。

いかがでしょうか。メリット・デメリットをご覧いただいてお分かりのように、賃貸に出すことで収入は増えるものの、「リスク」と「手間」を負うことになります。たとえ、1件のマンションを貸すだけと言っても、これは立派な不動産投資≠ナあり不動産経営なのです。投資や経営ですから、「リスク」と「手間」がかかるわけです。賃貸による収入は、「リスク」と「手間」を請け負うことに対する見返りともいえます。
真田さんの場合は、新たに投資用物件を取得するわけではありません。しかし、売却すれば売却代金の分、新規の住宅ローンを少なくすることができます。ということは、賃貸の場合は、それだけのお金を借りて不動産投資をし、不動産経営を行うということになるのです。
投資や経営を行うに当たって考えなければいけないことの1つは、リスクが現実のものとなった時にどのように対応するか、できるのかという問題です。これは、悲観的に考えるということではありません。標準的なシミュレーションを立てておきながらも、もし最悪の状態になった場合に、危機を乗り越えられるかを検討しておく必要があります。「想定外だった」では済まされないのです。その責任は自分が負わなければならないからです。

真田さんの場合はいかがでしょう。まず、金利上昇リスクについてはフラット35など固定金利の住宅ローンを使うことで回避できます。では、空室リスクについてはどうでしょうか。当初14年間は、2つのローンが平行することになり、年間の返済額が333万円となります(今のマンションが自宅ではなくなるため、住宅ローンの扱いについて、金融機関に確認する必要があります)。ある程度の貯蓄が貯まった後であれば不安も小さくなりますが、しばらくの間は、空室リスクの高い状態が続くといえます。
次に、「手間」のほうはいかがでしょうか。おそらく、今はご夫婦ともに仕事に家事、子育てとお忙しくされていらっしゃるのではないでしょうか。その合間をぬって経理の作業を行い、メンテナンスなどの物件管理にも気を配らなければなりません。このような作業が苦にならないようでしたら「手間」の問題はクリアできますが、ご自身の生活を振り返ってみてどうでしょうか。賃貸収入を得るというビジネスである以上、おおざっぱにというわけにはいきません。

このように見ていきますと、今のお住まいを売却するか、賃貸に出すか、どちらがよいかという問題は、経済状況よりも真田さんご一家の現在の状況によって決まってくるといえそうです。


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