家計診断Q&A

家計診断Q&A

転勤のリスクやライフスタイルの変化を考えると
いつ持ち家を購入するのが良いでしょう?


 

宮塚 達夫先生
(みやつか たつお)
プロフィール

  • 賃貸と持ち家のメリット・デメリットを確認しましょう。
  • 将来の資金プランを立てましょう。
  • いろいろなケースに対応できるように備えましょう。

松井 良子さん(仮名 35歳 パートタイム)のご相談

現在賃貸マンションで暮らしています。
当初の予定では長女の小学校入学前に、一戸建て(4,200万円位)かマンション(3,500万円位)を購入しようと思っていました。
しかし、夫の転勤の可能性や、今後のライフスタイルの変化などを考えると子供が独立するまではこのまま賃貸マンションに住み続け、その後夫婦二人で暮らせるくらいの住まいを一括購入するのがベターなのではと考え始めました。
この先やっていけるのか老後生活資金も心配なので、アドバイスをお願いします。

松井 良子さん(仮名 35歳 パートタイム)のプロフィール

家族構成 : 夫 浩二さん(33歳 会社員)
  妻 良子さん(35歳)
  長女 瑠璃子さん (4歳)
  長男 護さん (0歳)
現在の収入 : 浩二さん 手取り年収 460万円
  55歳時まで毎年3万円ずつアップ見込みで65歳定年予定。
  良子さん 手取り年収 100万円
  長男小学校4年生時からフルタイム勤務で150万円にアップ予定。
貯蓄残高 : 3,300万円
資金援助 : 住宅購入時、親から1,000万円を無利子で借りることが可能。
将来の年金予想額 : 浩二さん 190万円
  良子さん 110万円
現在の生活費 : 280万円
65歳後の希望生活資金 : 270万円
現在の家賃 : 100万円(会社から家賃補助あり)
賃貸住まいの場合 : 長女小学校入学から長男中学校卒業までの家賃は150万円
  長男高校入学から大学卒業までは170万円
  以後は120万円を予定。
現在の教育費 : 50万円
お子様の教育希望進路 : 保育園⇒公立小学校⇒公立中学校⇒私立高校⇒私立文系

早く購入した方が貯蓄は多く残りますが、
転居の可能性や売却の際の事も考えて、じっくり考えましょう。

まず、賃貸か購入か、一戸建てかマンションか、それぞれのメリット・デメリットを確認してみましょう。

賃貸マンション暮らしの場合

転勤の可能性がある松井様一家の場合、最大のメリットは住み替えが容易であるという点です。
日本全国、海外への転勤であろうと何の問題もありません。
また築年数が古くなったら、新しいマンションへ転居すればいいわけですから、常に新しいマンションに住みつづけることが可能です。
お子様の成長や世帯人数に合わせて住む街、広さや間取りを考えながら、転居することだってできます。
さらに会社からの家賃補助があるという点も魅力ですね。

反面、当然のことながら家賃をずっと払い続けても、いつまで経っても自分の所有物にはなりません。
また地域によっては2年毎に更新料が発生し、大家さんの都合で更新できなかったり、自分好みにリフォームすることも制限されてきます。


一戸建て購入の場合

土地・建物という大きな資産を所有できます。
松井様一家の場合現金での取得を検討されているので、抵当権が付くということもなく、いざという時には土地・建物を担保に融資を受けることもでき、万が一老後資金が枯渇しそうになった場合、融資を受けて死後に返済するリバースモーゲージという制度を利用することだってできます。
もちろんリフォームも自由自在ですし、マンションでは難しい大型犬を飼うことだって可能です。

一方、転勤が発生した場合家をどうするかが最大の懸案事となってきます。
単身赴任した場合、ほとんどの会社で単身赴任手当てがありますが、ダブルライフによる生活費増となる場合がほとんどです。
一家全員で転勤となるとさらに事態は深刻です。
売却と賃貸に出す方法が考えられますが、売却の場合売り手がすぐに見つかるか、売値はどうかなど悩ましい問題があり、賃貸に出す場合でも賃料の問題、大切な家をボロボロにされないか、転勤終了時に家をすんなり明け渡してもらえるのかなどこれまた問題が山積です。

また自分の所有物なので、当然修繕費用などは全て自分で負担しなければいけません。
建築内容にもよりますが、水回りは10年に一度、その他にも30年に一度位は大規模修繕が必要と言われており、その資金をプールしておくことも忘れてはなりません。


マンション購入の場合

一戸建ての場合と同様資産を取得でき、一戸建てに比べて管理が楽であるというメリットがあります。
防犯面でも一戸建てに比べれば有利と言えるでしょう。

ただし管理が楽である半面、管理費や修繕積立金という負担が発生してきます。さらに占有部分の修繕は自己負担となるので、一戸建て程の金額は必要ないにしろリフォーム費用を見込んでおかなければいけません。
また、築年数が長いマンションで建て替えが問題になった場合、現行法では住民の意見を集約して決議に至ることは非常に厳しいのが現状であり、その他の管理に関しても管理組合という他人同士の集合体が決めるので、住人個人の意思と反する場合もあることを覚悟しておかなければいけません。


無理のない資金プランを考えましょう。

まず将来の貯蓄推移がどうなっていくのかを考えることが重要です。
それぞれの場合に分けてキャッシュフロー表を作成してみました。

尚、以下の仮定に基づき作成しました。

  • A,Bの場合、親から借りた1,000万円は20年で均等返済する。
  • マンション購入の場合、管理費等の住宅関連費を年30万円とする。
  • お子様の教育費は文部科学省の資料を参考にする。
  • 一戸建ての場合、10年目20年目に100万円、30年目に1,000万円のリフォーム費用を見込む。
  • マンションの場合、10年目20年目に100万円、30年目に500万円のリフォーム費用を見込む。
  • 物価変動は一切考慮せず、預金金利も0%とする。
  • 退職金・相続・自動車購入費用などの特別収支は一切考慮しないものとする。

いかがでしょうか。
医学の更なる進歩も踏まえご主人様100歳時まで作成しましたが、90歳時A,Bの場合(すぐに住宅を取得した場合)に多くの貯蓄残高となり、一生賃貸マンションで暮らした場合が最も少ない貯蓄となることがお判りかと思います。
またどのケースにおいても3,000万円以上の残高となっており、退職金や相続による特別収入、利子収入を計上していないことから考えれば、特別出費を差し引いてもある程度の余裕がある状態と言えるでしょう。


ライフスタイルをよく考えましょう。

松井様一家の場合、資金的にはどのケースでも大丈夫だということが判ったので、後はライフスタイルに合わせて一番便利な選択をされたらいいと思います。

ただし老後には予期せぬ事態が起こることも想定しておく必要があります。
介護という問題です。
お子様が独立してご夫婦二人になってから二人とも健康であるとは限りません。どちらかに介護が必要になった場合に、自宅をリフォームして住み続けるのか、あるいは老人施設に入るのか、あるいは一人になった時にどこでどうやって暮らすのかなど、老後の住み替えということも視野に入れておく必要があります。

ここでのポイントは生涯自宅で暮らす、施設で暮らすと決めつけないことです。
例えば自宅で暮らすと決めて大規模な介護リフォームをした場合、いざ施設に入る必要が生じたときに入居資金がなくなっていたり、売却したり貸そうと思ったときに買い手借り手が見つかりにくくなってしまいます。
介護仕様の住宅を購入あるいは借りようとする人はごく稀だからです。
介護リフォームは必要最小限にするようにしましょう。

また終の棲家にしようと自宅を処分して老人ホームに入所したものの、健康状態や人間関係等により、転所を余儀なくされた場合にもう一度転所する資金が残っていない場合があります。
そもそも老人施設に入る場合は、どの程度の健康状態まで入所していられるのか、看護体制はどうなっているのか、転所を迫られる場合の要件、入所一時金の償却方法などを入所前に正確に把握して、ある程度の貯蓄は残しておく必要があるのです。


まとめ

松井様一家の場合、ご希望通り賃貸マンションで暮らし続け、ある程度の年齢になってから住まいを購入することに何ら問題はないと思います。
但し前述したように、終の棲家と思った家に本当に一生住み続けていられるかどうかは分かりません。いざという時に転居も可能なようになるべく多くの貯蓄を残せるように心がけてください。
そのためには、せっせと貯金するだけでは不十分で、支出を減らす努力が必要です。税制改正などにも十分注意をして税金の支払を少なくすることも忘れないでください。特に相続税は増税の方向に向かっており、親が1,000万円をポンと貸してくれることから判断しても、相続税の対策なども考えておいた方がいいと思われます。
相続や贈与の話というのは、親が丈夫なうちは子供から話しにくいものですが、きちんと話合いを持つことで、大きな節税となったり、納税資金を捻出できたりする場合が多くあります。是非検討していただければと思います。

また今回のキャッシュフロー表はあくまでも一例です。
ご自身で随時修正を加えて少しでも先を見通すことによって、自然と金銭に対する感覚が研ぎ澄まされていき、貯蓄が増えて幸せな老後が待っていることでしょう。


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