家計診断Q&A

家計診断Q&A

妻子は夫の実家に引っ越し、夫が単身で仕事すると言われ……
二重生活を前に生活設計の見当がつきません。


 

鈴木 暁子先生
(すずき あきこ)
プロフィール

  • 将来のことよりも緊急度が高いのは、直面している現在の家計状況のほうです。
  • 保険の見直し効果は高そうです。
  • ご夫婦で自分たちの世帯のライフプランをしっかり話し合ってください。

田中 久美子さん(仮名 39歳 専業主婦)のご相談

今年40歳になる主婦です。
現在、夫と私、子ども2人と、家族4人でアパート暮らしをしています。
夫は長男で他県に両親(自営業)がおりますが、義理の両親も夫も「親の面倒を見るのは長男(と嫁)の務め」と考えています。そのため私と子ども2人は夫の両親と住んで家業を手伝い、夫は一人仕事のため定年までこのまま残ると言っております。
二重生活ともなれば支出も増えると思います。社命の転勤であればともかく、わざわざ二重生活をできるような家計ではないため私は反対していたのですが、夫と義理の両親に押し切られた状況です。
義理の両親も、今後不足するであろう生活費を、私が手伝うことで稼いでもらいたいようです。したがって同居したからといってこちらの経済的なメリットは期待できません。
どう生活を設計していっていいか、金銭的に全く計画を立てられません。

田中 久美子さん(仮名 39歳 専業主婦)のプロフィール

家族構成 : 夫 39歳 会社員
  第1子 11歳 学生
  第2子  8歳 学生
住居 : 賃貸
夫の退職予定 : 60歳

このままでは家計破綻も目前、
二重生活よりも家計の建て直しが最優先

1.赤字家計の改善が最優先課題です。

田中さん、こんにちは。核家族化が一般的になったとはいえ、地方によってはまだまだ"家"や"長男"の位置づけを重視するところも多いようです。久美子さんも家族の習慣の違いの中で頑張っておられるのでしょうね。

さて、今回のご相談は近々生活スタイルが変わりそうだということで、どのように生活設計していけば良いのかというものですが、その前にまず現在の家計を確認しましょう。

【田中家の家計収支】(単位:円)

【収入(税引き後手取り】
  毎月 ボーナス時、臨時
260,000 1,600,000
   
収入合計 260,000 1,600,000
【支出〈固定費)】
  毎月 ボーナス時、臨時
住居維持費 67,000 10,000
車維持費 10,000 100,000
自動車ローン 0  
第一子関連費 36,000 60,000
第二子関連費 26,000 40,000
保険料 36,000  
小遣い 35,000  
固定費合計 210,000 210,000
【支出(やりくり)】
食費※1 58,000  
水道・光熱費 20,000  
通信費 25,000  
交際費※2 10,000  
教養娯楽費   100,000
その他※3 15,000 840,000
やりくり費合計 128,000 940,000
支出合計 338,000 1,150,000

※1 : 外食含む
※2 : 帰省費含む
※3 : 月々の赤字補てん

年間収支 -486,000
【貯蓄】
商品名 毎月貯蓄額 ボーナス時、臨時貯蓄額
子供手当 20,000  
     
貯蓄額合計 20,000 0
【貯蓄残高】
商品名 合計
貯金 4,300,000
   
貯蓄残高合計 4,300,000

【進学コース別学習費】(単位:万円)

  中学から私立 高校から私立 高校まで公立
中学校(3年) 383 138 138
高校(3年) 280 280 118
合計 663 418 256

※文部科学省平成22年度「子どもの学習費調査」を基に算出。
千円単位は四捨五入。

【高校〜大学の教育費負担】(単位:万円)

  入学費用 在学費用
国公立大学 84.6 116.2
私立大学(文系) 98.6 148.5
自宅外通学者への仕送り 102.1  
自宅外通学を始めるための費用 47.6  

※鞄本政策金融公庫平成23年度「教育費負担の実態調査結果」
※入学費用:受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金
※在学費用:年間の学校教育費(授業料、通学費、その他)、
   家庭教育費(補修教育費、けいこごとなど)
※自宅外通学者への仕送り:在学費用を除く年間仕送り
※自宅外通学開始のための費用:敷金、家財購入など
※色がついている費目は、キャッシュフロー作成時に採用したもの

現在の生活レベルは手取りの収入の3割増しで、毎月の収支は8万円近い赤字。ボーナスの半分がその補てんに使われています。キャッシュフロー表を見てみましょう。

<キャッシュフローを別ウィンドウで表示>

キャッシュフローでおわかりのように、上のお子様が中学生となり、公立といってもそれなりの教育費がかかるようになるとさらに赤字は増え、あっという間に貯蓄が底をついてしまいます。将来の生活設計よりも今現在の家計を早急に改善することのほうが優先課題だということに気づいてください。

収支表をご覧いただくとおわかりかと思いますが、田中家は固定支出が多いため、支出の節約がしにくく、また毎月8万円近い赤字は久美子さんのやりくりだけで吸収できる額ではありません。できれば久美子さんが働いて収入を得るくらいの覚悟も必要です。また、次項で述べる保険の見直しなど、家計の構造改革が必要ですので、ご夫婦で1枚岩となって向き合う問題です。


2.保険の見直し効果がありそうです。

田中家での保険を見てみると、ご主人様の死亡保障とお2人のお子様の学資保険で年間約43万円の保険料を支払っています。

【田中家の保障】

  保険商品 種類 保険金額 保険期間 年間保険料 払込期間
ご本人 終身保険 死亡 1,000万円 終身 140010円 60歳
第1子 学資保険 学資 200万円 17歳まで 169780円 17歳
第2子 学資保険 学資 150万円 18歳まで 120435円 18歳

学資保険はおそらくお子様が生まれた時からではなく、後から加入されたのでしょうか。保険料がかなりの負担になっています。ただ、田中家は貯蓄体質の家計ではないため、保険のように強制的に引き去って貯めるほうが確実です。したがって学資保険はとりあえずこのままで良いでしょう。

ご主人様の死亡保障1,000万円を終身保険で準備していることも保険料負担が大きくなる理由の1つです。保険には「いつ亡くなっても必ず保険金をもらえる」終身保険と、「契約したある一定期間に亡くなったら保険金をもらえる」定期保険があります。終身保険は必ずもらえますから掛け捨てにはなりませんが、その分保険料は高く設定されています。これに対し定期保険は一定期間に亡くならなければ保険料は掛け捨てとなりますが、その分割安です。このように保険の特徴を理解して上手に活用することが必要な保障を得つつ、保険料を抑えるポイントとなります。

考え方としては、葬儀など死後の整理費用のために終身保険、その他遺族の生活保障(教育費含む)などは経年によって必要な額が変わっていきますので見直ししやすい有期の保険で準備するのが一般的です。また同じ有期の保険でも通常の定期保険よりさらに割安な収入保障保険というものがあります。

<定期保険> <収入保障保険>
定期保険 収入保障保険

保険金を一括で受け取るのではなく、被保険者が亡くなった月から加入時に決めた一定期間まで、毎月分割して受け取れる収入保障保険は、亡くなるのが遅くなればなるほど受け取る保険金総額は少なくなりますが、逆に過多な保険金を受け取る必要もないですから、必要な保障を必要な時期だけ受け取るというイメージです。

では、田中家の必要保障額推移を具体的に見てみましょう。必要保障額推移表(1)をご覧ください。

前提条件

1)ご遺族の生活費:

  • 現在の生活費の7割としてお子様大学卒業まで:275万円×15年
  • お子様大学卒業後、現在の生活費の4割として奥様86歳(平均寿命)まで:157万円×32年

2)教育費:キャッシュフロー表参照

3)死亡保険金:500万円と仮定(実際は会社規程によりますので、ご確認ください)

4)遺族年金および奥様ご自身の年金:

  • 遺族基礎年金(上のお子様18歳まで):(788,900円+454,000円)×8年
             (下のお子様18歳まで):(788,900円+227,000円)×3年
                           ※平成23年価格で試算
  • 遺族厚生年金(奥様64歳まで):95万円×3/4×24年
                       ※ ご主人様の老齢厚生年金×4分の3
             (奥様86歳まで):{765,900円+60,100円+(710,000円−60,100円)}×22

※ご主人様の厚生年金加入期間は300月未満のため、300月とみなします。
※ご主人様の老齢厚生年金は下記の条件で日本年金機構「年金額簡易試算」で算出

  • 1号期間:68月
  • 平成15年3月までの2号期間(平均給与23万円と仮定):61月
  • 平成15年4月以降の2号期間(平均報酬月額39万円と仮定):171月

必要保障額表(1)

現状では、死亡保険金を含めても大幅に不足しています。しかし、もしご主人が亡くなられ、お子様2人と生活していくのであれば、生活自体変える必要があります。生活費を少し削減する努力だけではカバーしきれません。つまり久美子さんが働いて収入を得るという積極的な家計の改善が必要になります。この前提を加えてみましょう。

5)奥様の就業収入:

  • 毎月15万円で60歳まで働くと仮定 15万円×12ヶ月×21年

必要保障額表(2)

久美子さんが就業収入を得られれば、とりあえず試算上貯蓄は黒字を維持していますが、100万円を切ってしまう時期もあります。お子様たちの進路が予定どおりではなかったり、その他一時的支出などが含まれていないなど、まだ不確定な要素が多いため、現実的には不足する可能性も低くはありません。では、終身保険の死亡保障を300万円に減額し、節約できた保険料で新たに毎月10万円の年金を久美子さんが55歳になるまでもらえる収入保障保険に加入したとすると、どうなるでしょう。

必要保障額表(3)

このプランでは貯蓄残高が先ほどより多くなっています。このケースの保険料は終身保険分がおそらく年額5〜6万円程度に抑えられるのではないかと思います(保険会社に試算してもらえば正確です)。また新規加入の収入保障保険は(ある保険会社を事例とすると)は年額で33.360円。したがって現在より大きな保障が得られて年間5万円程度保険料を削減することも可能と思われます。固定支出を減らすことは、家計改善には非常に効果がありますので、検討してみてはいかがでしょう。ただし今回のキャッシュフロー表には不確定要素も多く、今後支出が増えることも予想されます減額の幅は十分試算した上で決めましょう。


3.自分たちの世帯の経済的自立とライフプラン確立のために、
      ご夫婦の認識をひとつにしてください。

本来のご相談は二重生活になった時の生活設計ということでした。しかし私としては、少なくとも今しばらくは見合わせた方が良いと考えます。理由は2つあり、ひとつは経済的な理由として。家計管理ができていない家計で、さらに生活スタイルを複雑化させることは非常に危険です。ご主人様も含めて家族が全員ご実家で同居というのであれば、双方の経済的、精神的メリットもありますが、二重生活ではやはり以下のように支出増はまぬがれません。

  • 久美子さんたちは家賃は不要でも、ご主人側の家賃がなくなるわけではない。
  • ご主人の帰省が増えるので、交通費がかかる。
  • 電話回線やインターネット環境を、ご実家で整備しないといけない。
    離れているため電話など通信費も増える。   など

また何よりも久美子さんの就業収入も視野に入れなければいけない状況で、ご実家の手伝いをしてもそれだけの収入を要求するのは難しいところでしょう。

そしてふたつめ。個々のご家庭の"理屈ではない事情"について、このコーナーで私が言及するのは避けるべきだと思いますが、「ライフプランを大事にしていただきたい」というファイナンシャルプランナーの立場で申し上げるとすれば、今回のご相談で気になったのは、久美子さんご家族のライフプランがまったく見えてこないことです。

「親の面倒を見るのは長男(と嫁)の務め」というご主人様のお気持ちは長男の責任感でしょうから無視するわけにはいかないと思います。ただ、今のところご両親もお元気でいらっしゃるのであれば、ご実家の心配よりもご自分たちの家計の心配をすべき時です。ちなみにご主人様は家計状況を把握しておられますか?

また、お子様もこれから思春期を迎える時期です。どうしても二重生活をしなければならない切迫した事情があるのであればともかく、久美子さんの世帯はこれから家族が成長し、形成していく最も大事な時期が始まります。その意味で親子4人が一緒に暮らすという必要性もご夫婦で話し合われてはいかがでしょう。ただしこのような話は“気持ちの問題”にしてしまうと、事の本質がズレてしまいます。現状の家計で数字を見せながら、問題点を明確に伝えましょう。厳しい言い方になってしまいますが、「二重生活をどのように設計するか」より、「破たんしそうな家計をどのように立て直すか」が問題なのです。

最後に、もし二重生活にならなかったとしても、根本的な問題は解決していません。これについては、ご夫婦が同じ方向を向いていなければなりません。家計立て直しのために久美子さんも働くなど、具体的な改善策を実行していかなければいけないのです。久美子さんご自身も家計管理の責任を背負い直したということですから頑張ってください!


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