家計診断Q&A

家計診断Q&A

将来両親と同居し、老後の面倒をみるつもりです。
東京の不動産を相続すると、相続税は高いのでしょうか。


 

宮塚 達夫先生
(みやつか たつお)
プロフィール

  • 財産を把握しましょう。
  • 全員で話し合いましょう。
  • 対策を考えましょう。

田中 紀子さん(仮名 47歳 専業主婦)のご相談

現在夫の転勤で北海道の社宅に住んでいますが、長男ということもあり先々は東京にいる夫の両親と同居し、老後のお世話をするつもりでいます。
夫の両親は、現預金などは知りませんが悠々自適の暮らしをしており、二世帯でも十分な広さの持ち家で暮らしています。
東京は土地の値段も高く、最近相続税が増税になるという話を耳にしたのでとても心配しています。
そもそも相続税はかかるのでしょうか?
併せて安くする方法があれば教えてください。

田中 紀子さん(仮名 47歳 専業主婦)のプロフィール

家族構成 : 妻 紀子 47歳 専業主婦
  夫 敬一 45歳 会社員
  長男 智美 17歳 学生
夫の両親 : 田中 敬  73歳 年金暮らし
      啓子 70歳 年金暮らし
夫の弟 : 田中 篤  42歳 既婚 神奈川県の持ち家在住
夫の両親の持ち家 : 築30年の木造2階建て
  土地 約70坪(約230平方メートル)
  近隣の土地取引価格 坪約150万円

増税となれば、かなりの相続税負担の可能性が。
相続を「争族」にしないためにも、話し合いと準備を。

今後相続税が発生する可能性が高くなります。

現行税制の場合

現在の相続税では大雑把にいうと、相続財産から基礎控除額を引いた金額に対して課税されることになります。
田中様のご両親の場合、現預金は別として土地だけで

150万円×70坪=1億500万円

の財産をお持ちということになります。
但し、相続税を計算する時の土地評価は実際の取引価格(以下実勢価格という)とは少し違ってきます。
基本的には路線価という、毎年1月1日が評価時点となり8月上旬頃に国税庁が公表する価額を基に計算され、多くの場合実勢価格の7〜8割位の評価額となります。
今回の場合8割だと仮定すると

1億500万円×8割=8,400万円

が土地の評価額となります。

ただし、このうちお母様の法定相続分2分の1の土地に関しては、240平方メートルまでの土地評価を8割減とする「小規模宅地等の特例(※詳しくはこちら)により、

{(8,400万円÷2)×(1−8割)}+(8,400万円÷2)=
4,200万円×2割+4,200万円=5,040万円

が土地の評価額となります。

仮に金融資産を1,000万円お持ちで、家屋の評価をゼロと仮定すると、

5.040万円+1,000万円=6,040万円

相続財産ということになります。

一方、基礎控除額

5,000万円+(法定相続人の数×1,000万円)

の算式で計算され、お父様が先にお亡くなりになったとした場合の法定相続人は、お母様の啓子様とご主人の敬一様、弟の篤様の3人なので、

5,000万円+(3人×1,000万円)=8,000万円

となり、相続財産6,040万円が基礎控除額8,000万円を下回るので、相続税はかからないということになります。
もっとも、金融資産がもっとあったり、生命保険金に加入していて更に相続財産が増えて基礎控除額を上回ったりした場合には、当然相続税がかかることになります。

改正案の場合

今年の2月17日に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」において、政府は平成23年税制改正で見送られた基礎控除額の引き下げを、平成27年1月1日以降の相続から適用するとしており、法案が可決されるかどうかはわかりませんが、相続税が増税の方向に向かっているのは間違いなさそうです。

この法案が可決された場合の基礎控除額は現行の6割となります。つまり

3,000万円+(法定相続人の数×600万円)

となり、田中さんの場合

3,000万円+(3人×600万円)=4,800万円

が基礎控除額となるので、仮にお父様の金融資産がゼロだとしても土地の評価5,040万円の方が大きくなってしまい、相続税がかかってしまうことになります。

ちなみに相続財産が土地と金融資産1,000万円で総額6,040万円だとした場合

6,040万円−4,800万円=1,240万円

となり、法定相続分通りに相続した時の相続税の総額はこちら↓の表から

相続税の税額速算表

課税価額 税率 控除額
〜1000万円以下 10% 0
1000万円超〜3000万円以下 15% 50万円
3000万円超〜5000万円以下 20% 200万円
5000万円超〜1億円以下 30% 700万円
1億円超〜3億円以下 40% 1700万円
3億円超〜 50% 4700万円
お母様 1,240万円×2分の1(法定相続分)=620万円
  620万円×10%=62万円⇒0万円
ご主人 1,240万円×4分の1(法定相続分)=310万円
  310万円×10%=31万円
1,240万円×4分の1(法定相続分)=310万円
  310万円×10%=31万円

(配偶者は法定相続分あるいは相続財産が1億6千万円までの分は税額控除となるので実際にはお母様はゼロとなります。)

もしお父様が5,000万円の金融資産をお持ちだとしたら

(5,040万円+5,000万円)−4,800万円=5,240万円

お母様 5,240万円×2分の1=2,620万円
  (2,620万円×15%)−50万円=343万円⇒0万円
ご主人 5,240万円×4分の1=1,310万円
  (1,310万円×15%)−50万円=146.5万円
5,240万円×4分の1=1,310万円
  (1,310万円×15%)−50万円=146.5万円

となり、かなりの相続税を納付しなければいけないことになってしまいます。
どんな対策があるのか見ていきましょう。


家族で話し合いをしましょう。

まず第一歩はここからです。
子供から健康な親に対して相続の話を切り出すのは結構勇気がいるものですが、ある程度の資産をお持ちの方なら多かれ少なかれ銀行などから相続税の話は聞かされているものです。
そして何より多くの親は一生懸命築き守ってきた資産をできることなら子供のために少しでも多く残してあげたいと思っています。
弟の篤さん家族も交えて、是非勇気を出してみましょう。

話し合いの目的は後々「相続」を「争族」にしないためでもあります。
どんなに兄弟仲が良くても、お嫁さんという赤の他人が加わると相続では争い事が絶えないからです。
よく「俺の目の黒いうちは子供に俺の財産を自由にさせたりしない」などと言う方がいらっしゃいますが、確かにご両親あるいはどちらかでもご健在のうちはまだいいのですが、子供だけが残ったときそれぞれのお嫁さんは自分の家計のことだけを考えて、「貰えるものは全部貰います」と主張しがちになるものです。

相続財産がお金だけならまだしも、半分に分けられない土地であったり、会社経営をしていれば会社の株式であったり、分けるのに悩ましい資産がある場合はなおさらなのです。
例えば兄が土地を相続して他に金融資産がなかったような場合、弟から金銭の要求があれば、先祖代々受け継いできた土地を売らざるをえなくなったり、土地を担保にお金を借りてこなければならなくなるようなケースが出てきます。

以下、話し合う項目で重要なものをいくつかあげてみます。

  1. 財産の評価はどれくらいになるのか。
  2. 親の面倒は誰がみるのか。
  3. 財産をどのように分けるのか、特に家と土地はどうするのか。
  4. 墓守は誰がするのか。
  5. 親が認知症などを患った場合、財産管理は誰がするのか。

このようなことを事前に話し合っておくことで、後々のトラブルは大幅に減らすことができます。


節税を考えましょう

小規模宅地等の特例を利用する

前述した240平方メートルまでの土地評価を8割減にできるという特例です。
ご両親がご健在のうちに敬一さん一家が同居して、お母様と敬一さんが2分の1ずつ相続し、なおかつ住み続けることによって、半分しか8割減とならなかった土地すべての評価を8割減とすることができます。
この場合5,040万円だった土地評価が

{(8,400万円÷2)×(1−8割)}+{(8,400万円÷2)×(1−8割)}=1,680万円

になります。
5,040万円−1,680万円=3,360万円も財産評価を減らすことができ、改正となった場合の基礎控除額4,800万円をも大幅に下回り、相続税の支払を免れる可能性が高くなるのです。

生命保険金の非課税枠を利用する

相続財産の中で現金の評価はもちろんそのままの金額ですが、例えば現金の一部で一時払い終身保険に加入する方法です。
現行の税制で保険金は 法定相続人の数×500万円 が非課税となり、田中様の場合3人×500万円=1,500万円までが非課税となり、現金で持っておくより相続財産を減らすことができるのです。

ちなみに一時払い終身保険とは保険料を全額最初に払って終身保険に加入するもので、数年間のうちに解約すると預けたお金より少ない金額しか戻ってきませんが、基本的には貯蓄機能もあり現在低金利で銀行にお金を預けるよりは、高利回りの商品となっています。もちろんお亡くなりになった場合は死亡保険金が支払われます。

支払われた保険金は、納税資金に充てたりあらかじめ受取人が指定できたりするので、親族会議の結果、土地は兄、保険金は弟といったお金の流れをあらかじめ決めておくこともできるのです。
もっとも、今回の「社会保障・税一体改革大綱」ではこの非課税枠の法定相続人をすべての法定相続人ではなく、未成年者、障害者又は相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限定する改正案が盛り込まれているので注意が必要です。

養子縁組を検討する

現在の税制では実子(敬一さんと篤さん)がいる場合1人の養子に関しては、相続税計算の上での法定相続人の数に含めることが可能なのです。
つまり、現行の基礎控除額が1千万円増えることになります。
ただし、たとえばご両親から「紀子さんが良く面倒をみてくれたから養子にして財産を遺すことで感謝の意を伝えたい」などという意思表示があった場合などは問題ありませんが、節税のためだけに養子縁組したと判断されると認められなくなる場合があるのでご注意ください。


まとめ

田中さんの場合、相続税が発生するかどうかはご両親の金融資産次第ということになりますが、どちらの場合でも早目に財産を把握して、全員でよく話し合うことによって、税金を無くせたり減らしたりして円満な相続を迎えることができるのです。
また生前贈与を利用すれば相続発生前からみんなの幸せを実現させることだってできるかもしれません。

今回わかりやすくするために、細かい要件などは敢えて記述しませんでした。間違いがないよう家族会議を開いた後は是非専門家に相談されることをお勧めします。


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