家計診断Q&A

家計診断Q&A

年の差夫婦で夫は定年間近。
もう1人子どもが欲しいですが大丈夫でしょうか?


 

井上 信一先生
(いのうえ しんいち)
プロフィール

  • 教育資金と老後資金の準備が重なるものの、"希望を優先すること"が何より大切です。
  • 不安の要因の1つでもある生涯の住まいについても検討してみましょう。
  • 老後は"手元資金を潤沢に持つ"から、"いざという時に収入を得る"への考え方の転換も必要です。

瀬谷 恵子さん(仮名 37歳 会社員)のご相談

夫(50歳)の定年が間近になりました。夫が60歳の時に子どもはまだ中学生なのですが、できればもう1人子どもを欲しいと思っています。また、住まいは賃貸マンションですがとても住み心地が良く、ローンを組むリスク等を考慮するとマイホームを持つ予定は今のところはありません。ただし、ずっと賃貸で暮らすことにも将来的な不安を抱いています。共働きなので、ある程度の貯蓄を頑張って貯めていますが、2人目の子どもを望めるのか、教育資金の準備と老後への備えが重なるため、一歩踏み出す勇気が持てずにいます。

瀬谷 恵子さん(仮名 37歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 本人37歳 (会社員)
  夫50歳 (会社員)
年収 : 約1,340万円 (夫 770万円、妻 570万円)
金融資産 : 約3,380万円
年間貯蓄額 : 約360万円
住まい : UR都市機構の賃貸マンション。家賃は月額13万円弱だが、周囲に保育所があるなど環境が
  良い。また、更新料がかからないのも魅力だが、若干、手狭にも感じている。

瀬谷さんの主なご希望

  • 2人目の子どもが欲しい。
  • 仮に子ども2人分の教育資金を貯めながら老後への備えを準備できるのかを知りたい。
  • マイホーム購入を検討すべきなのか、賃貸と比べたメリット・デメリットも知りたい。
  • 夫の生命保険は1年前に解約し、現在は最低限度しか加入していない。もっと増やすべきか。

その他の情報

  • 夫は長男だが、義父母は義姉(独身)と同居しており当面は心配ない。ただし将来的には自分たちと同居の可能性もある。自分の別居の両親には生活費の仕送りをしている。
  • 夫に万一のことがあれば自分の実家(都内)に戻れる。逆に、自分の万一の場合は夫の実家(現在の住まいから車で1時間圏内)に暮らすことも可能。
  • 子どもの進学プランとして高校までは公立を希望したいが、子どもの希望にもよるので今は未定。
  • 勤め先の健康保険組合は夫婦ともに充実しており、医療費自己負担額は月に2万円で済む。このため、在職中の医療保障には心配がない。

2人目のお子様を持つご希望を最優先にした生活ビジョンでは
"お金を増やすこと"だけでなく、"お金を大きく減らさない"ための保険を

瀬谷様、このたびは何度かに渡り、家計の詳細な情報をご提供頂きましてありがとうございます。年の離れたご主人の定年が近いこと、教育資金と老後資金の準備が重なることへのご不安が大きいようですね。
確かに、お子様が1人より2人となれば、かかる費用の増す分だけ数字上の表面的なシミュレーションについては概ね悪化します。しかし、そこには表れない心豊かな暮らしの前では机上の試算は二の次でもあります。予測は不確実ではあるものの、それに左右されるより、逆にご希望を叶えることを前提にしたビジョンを、必要あれば適宜前向きな修正を加えつつお持ち頂きたいと思います。

今回もそのような趣旨のもと、2年後には2人目のお子様が誕生するシナリオで、家計の経済的な試算と課題への対応を検討しました。未来予想の可能性の1つとしてご参考になさって下さい。


現在の家計状況と資産状況について

瀬谷様から頂いた家計収支と、金融資産、保険の加入状況を整理したものが下図です。

瀬谷家の家計収支

(単位:円)

収入 給与 7,700,000
5,700,000
合計 13,400,000
支出 税金・社会保険料   2,940,000
住居費 家賃 1,555,000
日用品費 食費 450,000
雑費 200,000
公共料金 ガス 90,000
水道 40,000
電気 50,000
電話 25,000
インターネット 30,000
NHK 15,000
夫婦の自由費 夫のこづかい 1,100,000
妻のこづかい 600,000
洋服代 300,000
子ども関連費 保育料 540,000
保険料 生命保険料 40,000
余暇費 余暇・レジャー 340,000
自動車の維持費 駐車場代 185,000
税・保険等 150,000
その他 親への仕送り 700,000
交通費 450,000
合計 9,800,000
貯蓄   3,600,000

※各々の携帯電話料金や医療費はこづかいから捻出する
※自動車維持費の税・保険関係は、車検・重量税・各種自動車保険を含む

資産の状況

現在価値:万円

安全資産 預貯金等 普通預金 50
定期預金 580
一般財形貯蓄 2,200
年金財形貯蓄 40
MMF 60
小計 2,930
投資性資産 国内株式等 国内株式 250
投資信託 35
外貨建資産 米ドル建MMF 25
外貨預金(米ドル) 100
外貨預金(ユーロ) 45
小計 455
合計 3,385

保険の加入状況

被保険者 資産性 保険種類 保険金額 保険料 備考
なし 終身医療保険 日額5,000円 2,810円 60歳以上は保険料半額
保険資産 医療特約付養老保険 300万円 305万円 53歳満期  保険料は全期前納払いで払込済み

ご夫婦共働きで比較的収入の多い割には暮らし向きでの贅沢感は薄い印象です。ですが、ご夫婦とも、携帯電話の料金や医療費のほか家族のレジャーへの上乗せなどを、各々で決めた自由費(こづかい)の中から工面するなどの工夫を既にされていますし、旅行などの余暇に充てるお金もきちんと確保されています。堅実な倹約生活を送っているというよりは、出費のメリハリをつけて、有意義なお金の使い方をされている予算管理型の家計なのだろうと想像できます。
また、奥さまのご両親への生活費の仕送りもされるなど、お子様と親に対するご負担を抱えながらも、収入の3割弱を貯蓄に回されているようですね。給与天引きの財形貯蓄の割合が高いことからも、収入からまず必要な金額を貯蓄に率先して回されているスタイルであることもわかります。細かい家計簿はつけておられないとのことですが、そもそも家計簿は、何にいくら使っているのかを細かく記録し、目標とする貯蓄を増やすための削減可能な出費を探すため、そしてそれが予定通りに進んでいるかを確認するために行うものだといえます。その意味では現在の様に、まず使っても良い金額を明らかにし、その範囲内で出費が収まっている限り、特に子細な家計簿をつける必要はないと考えます。

さらにご資産についても相当高い保有額のようです。これはご主人の年齢等のこともあってか、将来へのご不安が顕在化していることが少なからず良い方向で影響しているのでしょう。資産構成としては、国内預貯金等や養老保険を含めた安全資産のウエイトが約9割を占めています。表面的な運用効率性の点では積極的とは言えないかもしれませんが、国内の物価が依然として低水準であり、実質金利(表面的な利率ではなく物価水準を加味した相対的な利率)を考慮すると、決して非合理的とは言い切れません。何より、世界的にも投資環境は安定していませんし、安全性のある資産運用を心掛けたいとの価値観が明確なようですので、早急に投資性資産への配分を増やす必要はないと思われます。
ただし、内需(小売り)株や金融(銀行)株等を中心とする持ち株の含み損が400万円強ほどおありとのこと。今のところ至急に換金する必要性はなさそうですので、もう少し相場の回復を伺っても良いとは思います。しかし、仮に換金(ロスカット)を行われる時には、一度に全てを売却するのではなく数年に分けて実施することを検討されることをお勧めします。これは売却機会の時期の分散に期待する意味もありますが、上場株式等の譲渡損益内での損益通算制度を少しでも活用するためです。通常、株式の配当金や投資信託の分配金は源泉徴収された税引き後の金額を受け取りますが、確定申告にて申告分離課税を選択することにより、配当金等の額を株式等の譲渡損失と相殺することが可能になります。株式等の譲渡損失は翌年以降も3年間に渡り繰り越すことができますので、結果として譲渡した年を含めて計4年間分の配当金等に係る課税を減免することができます。手間の割には効果が薄いかもしれませんが、緊急に資金が必要になって止む無く相殺しきれない損失を一度に吐き出すことのないよう、予め長期的スパンで換金する心構えを持たれると良いでしょう。

一方、外貨建資産については、無理のない金額の範囲で比率を高めるのも一考の価値があります。現状では想像が困難ですが、将来、物価上昇局面が訪れるとしたら相当の確度で円貨が外貨に対して下がることも考えられます。積極的な運用というよりは、金融資産の相対的な価値下落を抑えるという保守的な意味でも、外貨資産を持つことは理に適う行動といえます。一度に多額の投資を行うのではなく、現在行われている積立のほんの一部だけでも、外貨建てMMF等による積立に切り替えるのも悪くはないでしょう。


将来の収支と貯蓄残高推移の試算について

次に、現状の家計状況や将来へのご希望を踏まえ、一定の前提条件にて家計の様子を下図にてシミュレーションいたしました。主な条件は以下の通りとなります。

<将来のキャッシュフロー試算表を別ウィンドウで表示>

<収支・貯蓄残高の推移(現状)を別ウィンドウで表示>

主な前提条件

  • 2人目のお子様が2年後に誕生するものとし、ともに中学から私立(中高一貫コース)にて進学されるものと仮定しました。
  • お子様の誕生に伴い、奥さまが最低限の育児休業を取ることを想定しています。健康保険制度の出産手当金や雇用保険制度の育児休業給付等については試算に盛り込んでいますが、実際の手続き等についても十分にご配慮下さい。
  • 各支出の物価上昇率を平均0.5%程度にする一方、収入は現在よりも逓減する前提です。
  • ご夫婦とも、お勤め先には60歳以後も再雇用制度が整備されているとのことですが、今回は厳しめの収支試算を図ることから60歳以後の収入を考慮しておりません。また、退職金についても想定される金額より低めの試算としました(この結果、実際の収支が予測より良くなる確度が高まります)
  • ご夫婦の公的年金については、頂いた「ねんきん定期便」の情報のもと任意の条件で試算していますが、今後の年金改革等にて予測を下回る確度は高い可能性があります。また、ご夫婦ともお勤め先が厚生年金基金に加入しておりますので、任意設定にて金額を考慮しています。
  • 住宅は生涯賃貸(ご家族の増加にあわせて養育期間中は月2万程度アップの広めの部屋に転居する設定)を想定しています。
  • マイカーの買い替えや毎年のご旅行については、一定のご希望を反映しています。
  • 高齢期については一定金額の介護・医療費の増加を見込んでいます。

将来見通しについて、実際には就労時期の延長や高齢期の家計がもう少しコンパクトになる等の可能性はありますが、今回は辛めの試算としました。このため、ご主人の退職後は資産の取り崩しが急速に進み、試算上では奥さま90歳時には相当額の貯蓄資産の枯渇(赤字)となります。反面、ご主人90歳時(奥さま77歳時)に現金資産を最低ラインまで使い切ることを想定した試算ともいえます。不確実要素の高い超長期に渡るシミュレーションであることは否めませんが、逆に言えば、高齢期も表に示すとおり過度に生活水準を落とさずに暮らすことを前提とした結果とご判断頂ければ、漠然としたご不安も多少は軽減できる内容ではないかと思います。
また、ご質問の1つでも頂いておりますが、現行の年金制度では、厚生年金に20年以上の加入期間のある主たる生計者が満額の年金を受給できるようになると、一定の家族手当(加給年金)が加算されます。瀬谷様の場合、奥さまの生計維持要件(概ね配偶者の年収が将来にわたり850万円未満であること等)も満たされるようですので、奥さまに年金受給権が生じる65歳までの間、ご主人の年金に配偶者加給年金(約38万円)が加算されるとともに、仮に第2子がいらっしゃれば、その子が18歳に到達するまでは子の加算額(約22万円)も見込まれます。試算ではその旨も反映致しています。
一方、ご主人は学生時代に国民年金保険料の未納期間があるとのことですが、現行あるいは現在審議中の保険料追納制度では、ご主人の学生時代まで遡って納付済みにできるものではないようですので、残念ながら老齢年金の増額を図る対策は無理のようです。

ここで1つ、将来状況をご覧になられると、経過年につれて教育費と住居費の負担感が相対的に増していくことに気付かれるのではないでしょうか。ちなみに、現在の額面収入に占める子育て関連費のウエイトは約4%、住居費は約12%弱と大きくはありませんが、16年後のご主人66歳時では、子育て関連費27%、住居費17%を占めるに至ることが予想されます。

瀬谷家の家計予算割合の推移

子育て関連費がある時期に負担感の増すことは仕方のないことです。しかし、住居費について現状の条件のもとでは、2人のお子様の養育期を経た後には収入の50%近くを占めることにもなりかねません。高齢期の賃貸住居環境は今後も改善が進むことと思われますが、さすがに家計での負担感を憂慮すると、この点に関しては対応策を検討する価値がありそうです。
さらに、瀬谷家の隠れたもうひとつのリスクでもある、保障状況の薄さも懸念材料として浮かび上がってくるようです。


長期的な視野での終の住まいを検討

頂いたご要望ですと、今のところマイホーム購入については、諸リスクも踏まえてご検討されていないようですね。また、仮に今のような良好な住環境を保ちつつ同じような条件を満たすものを探すとなると、ファミリータイプの中古マンションでも4,500万円は下らないとのこと。暮らし向きの良さやステイタスだけを求めて購入の決断に至ることは、お考えにもあるように躊躇の余地があることは否めません。反面、多少高めの設定であるとはいえ、お子様独立後のご夫婦の住居費までもが生涯に渡り重しになるのも懸念ではあります。
しかし、瀬谷様のケースに限らず、マイホームの購入はご家族の価値観が合致することが最優先であること、そして高齢時に複数回の住替え(例えば、要介護時、重度介護時、要治療時等)の可能性も考慮することが肝要と考えます。瀬谷様の場合、住まいの検討策として、下記図のとおり大まかには3つの選択肢が考えられますが、いずれにも長所短所が残ります。ベストの選択をするのは困難ではありますが、なるべくベターなものとなるよう、ご夫婦のお気持ちやご家族に対する必要性等を整理され、即決されるより時間をかけてでも検討されるのが良いと思われます。

住居形態の選択肢とメリットとデメリットの考察

選択肢 具体的な選択肢 メリット デメリット
1).ファミリー使用のマイホームを早期に購入する 中古等のマンション 早期に購入するほど融資を受けやすく完済時年齢を前倒しに迎えられる 返済リスクとともに、将来の再住替え時に転売又は賃貸化の用途に適さない可能性がある
2).いずれかの両親との同居を検討 2世帯または3世帯住宅 全体的なコスト抑制と、親との同居により相続時の軽減効果が期待できる。また、親の面倒も見やすい 短期的には親との同居による就労条件の悪化や生活スタイルの差による住環境の悪化が懸念される
3).高齢期に夫婦2人暮らしを想定した住居を検討 中古等のマンション又はシニア向け住宅 いずれ想定される住空間のコンパクト化には合理的。また後期高齢時の要介護負担を固定化することも可能 時期により取得可能な価格の物件が見つからない可能性がある。また、要リフォームや建物の寿命等のリスクが残る

個人的には、将来的にご主人のご両親やお姉さまとの同居の可能性が否めない点、そして高齢時に介護費用の上限を固定させる(例えば有料老人ホーム等では介護費用を固定できる場合もあります)点等において、いま購入する物件が終の住まいになる可能性は低いと考えられます。また、今後の我が国の人口体系の在り様を踏まえると、親子4人等で暮らせるようなファミリータイプのマンション需要は低減する懸念も残ります。よって、満足のいく価格で売れない、あるいは人に貸そうにも空室リスクが障壁となることを鑑み、まだ検討するに充分な時間もありますので、結論としてのご提案は先送りにしたいと思います。
一般的に、生涯賃貸と持ち家との比較による資金面での損得については、購入に伴う毎年の維持費やローン金利負担等の増加分と購入時の自己資金額を、ローン完済後に賃貸と比べて経常的な負担が軽減できると見込める期間のどこで回収できるのかで異なります。
例えば、購入に伴う負担増が総額2,000万円と仮定し、ローン完済後の住居費が年額100万円軽減できる場合、完済の20年後には損益分岐が訪れて以後は購入が得となる計算です。
  しかし、賃貸である限り出費は続くのに対し、購入物件が売却、賃貸化、あるいはリバース・モーゲージ(住宅を担保に金融機関等から生活費に充てる融資を受ける制度。一般的に申込者等の死亡時に担保住宅を手放すことで融資完済とする)の対象となる場合には、将来的に新たな収入を生む可能性があります。シニア向け住宅を含め、いずれはマイホームを確保する方向で、しばらくの間はご家族の価値観の共有に充ててはいかがでしょうか。 マイホームを持つということは、短期的にご家族の暮らしを潤すだけでなく、選ぶ物件の間取りや環境等の諸条件により、長期的には新たな付加価値を生む資産にもなり得ます。高齢期における収支悪化を改善する上でも、ある意味では保険としての価値を見いだせるのではないでしょうか。


保有される預貯金等の一部について資産の置き場を替えてみる

最後に、表面的な収支や貯蓄残高の推移には表れることのない、懸念すべきリスクについても触れたいと思います。
下図は、ご主人に万一のことがあった場合の、ご家族への遺族保障必要額(死亡保障)の推移を、時系列に試算したものです(ご遺族の賃貸住居費が続くと仮定した試算です)。

<死亡保障の必要保障額と準備済保険金額の推移(夫)を別ウィンドウで表示>

死亡保障額は、家計における収支や貯蓄残高のほか、公的年金制度の遺族給付の条件が異なることからも、厳密にはお子様の年齢に応じて一律に逓減するとは限りません。実際、瀬谷様の場合でもお子様に対する遺族給付が終了すると、再び奥さまの老後生活費に対する必要保障額が復活しているのがわかります。ご勤務先からの保障を低めに見積もってはいますが、現状の貯蓄残高推移等をもとに試算すると概ね1,000万円程度の保障が不足している様子が伺えます。

ただし、これは一般的な家計において想定できる内容です。
ところが夫婦共働きで、ご主人が定年近くでもある瀬谷様の場合は、奥さまの死亡保障をも考慮する必要があります。

<死亡保障の必要保障額と準備済保険金額の推移(妻)を別ウィンドウで表示>

懸念のとおり、上記試算によれば、ご主人の死亡保障より、むしろ奥さまの死亡保障、そしてその不足額が深刻であることがわかります。これは、ご主人の残りの就労収入もさることながら、遺された夫と子に対する公的遺族給付が薄いものであるという盲点に影響されています。例えば、夫に扶養されている子がいたとしても、国民年金制度における「遺族基礎年金」は夫や子には支給されません。また、「遺族厚生年金」は妻死亡時に夫が55歳以上である場合に限り、60歳からようやく支給が開始されます。さらに、遺されたのが妻である場合に保障される「中高齢寡婦加算」は、文字通り夫は対象外となります。
こういった、公的保障における様々な歪みにより、瀬谷家においては奥さまの死亡保障の確保が近々の課題になる可能性が高いのです。万一の場合にご主人とお子様がご主人のご実家で暮らされる可能性があることを割り引いたとしても、遺されたご家族の生活の現実的な課題を考慮されれば、ご不安のすべてを払拭できるわけではないとご理解頂けるかと思います。

さて、お勤め先の遺族保障の整備状況にもよりますが、対策として奥さまの死亡保障の一部充実を負担額の少ない保険商品にて図るとともに、ご夫婦それぞれの懸念材料に応じた保障の充足を、「保有資産の移動」という点でご提案したいと思います。

保険の新規加入のご提案

  1. 妻を契約者・被保険者とする収入保障保険に加入する。
    保険金額は月15万円、保険期間20年(契約時保障額は3,600万円)。
    保険料は掛け捨てであるが、保険商品として最も廉価な金額で保障を確保できる
  2. 妻を契約者・第2子を被保険者とするこども保険に加入する。
    保険金額は500万円程度。全期前納払いでも可。夫ではなく妻を契約者とするのは保険料負担軽減のため。
  3. 妻を契約者・被保険者とする一時払い終身保険に加入する。
    保険金額は1,000万円程度。ただし、この保険は掛け捨てではなく、数年程度の一定期間経過後の解約返戻金は払込保険料を上回ることから、預貯金等からの代用に位置付けることもできる。
  4. 夫を契約者・被保険者とする一時払い終身保険と一時払い終身介護保険に加入する。
    保険金額は総額で1,000万円程度(例として、終身保険500万円、介護保険500万円等)。
    3と同様、掛け捨て型ではないため、預貯金等からの資産移転効果がある。一時払い終身介護保険は、介護年金が終身で保障されるほか、数年の据え置き期間を過ぎれば払込保険料以上の解約返戻金を見込める。また、死亡時には所定の死亡保険金が支払われる。

上記の1の保険商品については、家計からの負担純増となりますが、この条件であれば月額で概ね4,000円以下の保険料で済みますので、他の支出の削減により充分にカバーできると思われます。また2〜4については、相当額の保険料負担を覚悟する必要がありますが、いずれも数年の据え置き期間を経れば時価額(解約返戻金等)が払込保険料を上回ることから、現在のお金の置き場を、財形貯蓄等から移動させるに過ぎないと考えることもできます。もちろん、万一の際には本来の保険効果を発揮し、払込保険料以上の収入を生む資産にもなり得ます。保険会社の選定については、預貯金を銀行等に預ける場合と同じく信用(破綻)リスクの低い会社を選ぶことが肝要ではありますが、高齢期等の不安材料でもある諸要因に対し、最も直接的な打ち手の1つとして捉えることができるのが保険商品といえます。いくら金融資産を潤沢に確保していても万全な体制と実感することはできません。それならば、いっそ出費増による収支の悪化が懸念される際に、新たな収入を生むものに資産を託すという考え方もあっては良いのではないかと考えます。

以上で今回のご相談へのひととおりのご回答とさせて頂きます。繰り返しになりますが、お持ちのご希望を優先しても、人生で悔やまれる結果になることは稀です。資金面においてもどうにでもなります。今後、状況が変わられたり、もう少し具体的な指針を見つけられた際には改めてご相談に応じさせて頂きたいと思います。お金の面で振り回されることの少ない暮らしを目指されることを切に願っております。


Copyright(C) NTT IF Corporation