家計診断Q&A

家計診断Q&A

母の介護が必要になるかもしれません。
介護経験がなく、何をすれば良いのかわかりません。


 

鈴木 暁子先生
(すずき あきこ)
プロフィール

  • 社会保障制度をしっかり活用するために、地域のサービスや情報収集に努めましょう。
  • お母様の経済的余力などを確認し、介護資金の目安を立てておきましょう。
  • お母様の判断力があるうちに、できるだけ今後のことについて話をしておきましょう。

中村 美代子さん(仮名 55歳 専業主婦・パート)のご相談

55歳の専業主婦(パート)です。子どもは独立して1人暮らしをしているので、現在は夫婦2人暮らしです。住宅ローンも目途が立ったので自分たちの老後も何とかやっていけるかなと思っています。ただ、近所に住む私の母(80歳)が体調を崩し、しばらく自宅療養していましたが、最近様子がおかしいと思う時がありました。普段は普通に会話もしますし、食事もきちんと食べていますが、時々同じことを繰り返し話したり、薬を飲み忘れたり、釣り銭間違いなども増えてきたようです。 これが認知症というものなのでしょうか?もし介護が必要になるかもしれない場合、これまで介護の経験がないため、制度や何をすれば良いかもまったくわかっていません。私はどのような準備をすべきでしょうか。

中村 美代子さん(仮名 55歳 専業主婦・パート)のプロフィール

家族構成 : 本人 55歳 専業主婦・パート
  夫 55歳 会社員
  長男 25歳 会社員(別居)
住居 : 持家(夫名義) ローンは残り30ヵ月で完済予定。
その他 : 近所に自分の母(78歳)が居住。
  母の貯蓄:約1,000万円
  母の遺族年金:約15万円/月

お母様がはっきりしているうちに希望を聞き、
介護保険制度や施設の情報収集・準備をしておきましょう。

1.まずは冷静に現状把握につとめましょう

中村さん、こんにちは。お子様も独立し、住宅ローンの目途も立ち、ようやくご夫婦の老後をイメージし始める頃、お母様がご心配ですね。年齢とはいえ、親御さんのそのような状況に遭遇することはショックもあろうかと思います。しかし、ここで美代子さんがパニックになってはいけません。まずは冷静に現状を把握し、必要な行動を起こしましょう。

  • 毎日会話をし、日にちや曜日、食事の内容などの認知度を確認
  • 屋内の様子を見て変わったことがないかを確認

このようなことをノートに記録しておくと、後々診断を受ける際にも役立ちます。また脳を刺激するためにも、できるだけ会話や軽い運動、指先を使うような作業などを欠かさないようにさせてください。


2.公的介護保険制度を理解し、まずは地域包括支援センターの活用を

たとえ介護が必要な状態になるとしても、今日と明日でいきなり症状が激変するというわけではありません。症状は徐々に変化していきますので、その間に対応できることはいくらでもあります。いずれにしても公的介護保険制度を理解しないことには始まりませんので、簡単にご説明します。

【公的介護保険制度の概要】

  1. 公的介護保険制度では、第1号被保険者(65歳〜)と第2号被保険者(40〜64歳)があり、いずれも市区町村や特別区(東京23区)に保険料を納付しています。
  2. 介護保険を利用するには介護認定が必要です。明らかに症状が出ていても認定を受けていない限り利用できません。介護認定の申請は市区町村・特別区に申し込みます。
  3. 介護認定を受けた後、介護サービスを提供してもらったら、1割を自己負担分として支払います。

何はともあれ、介護認定を受けることが大前提となります。

【介護認定申請から通知までのしくみ】

STEP1 申請 介護保険は市区町村ごとに管轄しているので、申請の窓口は市区町村の介護センターや介護保険担当部署に申請。
STEP2 調査 調査員が自宅訪問し、本人の日常生活における不自由さなどをチェックしたり、主治医の意見書などをもとに報告書を作成。
STEP3 介護認定 一次判定として調査書や報告書に基づきコンピューター判定を実施。
二次判定として、専門家による介護認定審査会を実施。
STEP4 通知 「非該当」、「要支援(1〜2)」、「要介護(1〜5)」に区分され、要支援か要介護に認定された場合は、介護サービスを受けられる。
※「非該当」の場合、介護サービスは受けられないが、自立生活のために必要な福祉サービスは利用できる。
※認定結果に不服がある場合は、60日以内に都道府県の介護保険審査会に不服申し立てが可能。

介護保険制度の利用はこのように始まっていきます。もちろんここから先いろいろ細かい手続きがありますが、認定を受ける前にあまり細かいことを説明してもピンときませんので、「介護認定を申請する」ということを当面の課題にしておくとよいでしょう。

ところで、介護認定を受けるまでは何もできることがないのかというとそうではありません。介護保険サービスを利用するには要支援1以上の介護認定が必要ですが、介護認定の結果「非該当」となる方も当然います。現状がそこまでの症状ではない方などが使えるサービスもあります。

65歳以上(第1号被保険者)で、要支援・要介護認定は受けていないけれども、生活機能が低下し、い将来要支援・要介護状態になるおそれのある方を「特定高齢者」とし、特定高齢者と認められれば、「運動機能向上」、「栄養指導」、「口腔機能向上」など市区町村の「介護予防プログラム」に参加することができます。

介護保険制度の概要はご理解いただいたかと思いますが、具体的な行動に移すにあたっては、まず最初に地域包括支援センターに出向くことをお勧めします。

地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域でその人らしい生活を継続することができるように、看護師、保健師、ケアマネージャー、社会福祉士などが中心となって、総合的に高齢者の支援を行います。具体的な支援としては、介護予防サービスを含めた保健、医療、福祉に関する相談・支援などに24時間体制で対応しており、まさに駆け込み寺。心強い存在です。市区町村あるいは委託を受けた業者が運営しています。美代子さんのお住まいの近くにもあると思いますので、現在のご心配を相談に行ってみてはいかがでしょう。


3.介護資金の目安は今のうちに確認しておきましょう

今すぐに介護ということにはならないと思いますが、逆に何の準備や心構えもなく「そのような状態」が来てしまうともはや悠長なことは言っておられず、その場をしのぐだけで精いっぱいとなってしまうことがほとんど。結果的に介護する側もされる側も納得感の無いものになってしまうケースも少なくありません。美代子さんが今の段階で心配をされているということは、非常に良いことだと思います。

さて、介護について最も大きな不安は、何年続くか、いくらかかるかも見当がつかない費用のことでしょう。もちろんすべて自己負担ではありません。公的介護保険では介護認定を受けた人が利用できるサービスとして介護度に応じた限度額を設けています。

【公的介護保険の支給限度額】

要介護度 1ヵ月あたり支給限度額(円)
要支援1 49,700
要支援2 104,000
要介護1 165,800
要介護2 194,800
要介護3 267,500
要介護4 306,000
要介護5 358,300

上記の限度額の範囲内であれば、1割の自己負担分で済みます。しかし限度を超えた分については全額自己負担になること、また施設における食費や居住費は公的介護保険の給付対象とはならないので注意してください。

また、生命保険文化センターが実施した「生命保険に関する全国実態調査(平成21年度)」によると、「公的介護保険の範囲外の費用としてどれくらい準備しておけば安心か」との問いに対して、初期費用(住宅改造、介護用品購入など)として約308万円、月々の費用として約18万円が平均値としてあげられています。もちろん介護費用は本当にケースバイケースですので、あくまで目安としてですが参考にしてください。

現在のお母様の資産状況ですと、月々の費用と年金の差額が3万円となりますが、貯蓄の取り崩しで何とか賄えそうです。ただし、これも今後の介護状況(自宅か施設か、介護度が重くなるなど)によって大きく変動することもあります。将来施設を探すことになった場合も、目安としては月々の費用が年金と大きな差とならないことがポイントです。
また誤解される方が多いのですが、自宅介護のほうが施設介護よりも費用がかからないかというと、必ずしもそうとは言えません。特に介護度が重くなると施設介護のほうがトータルで費用が抑えられるケースもありますので、自分の情報だけで決めつけず、さまざまな情報や選択肢を検討する柔軟さも必要です。


4.今から準備を始めても遅くありません

介護のお話をする際、お金の面だけで決められないことで、今後葛藤もあるかと思います。
ただ大事なことは、お母様がどのような介護を望んでいらっしゃるか、美代子さんがどこまで応えられるかだと思います。

介護が必要になった際は、お母様の資産を取り崩す必要があること、自宅介護か施設介護か、介護度が重くなった時はどうするか、医療措置や延命措置についての方針など、判断力のある今のうちに話し合われておけば、「その時」に美代子さんの指針とすることができます。

また、施設に入るかどうかはその時の判断ですが、施設の見学はぜひ今から始めてください。お母様は体力的に大変ですので、候補を見つけたら見てもらうということでかまいません。実は施設といっても、介護度が軽いうちから入居できる施設、重くならないと入居できない施設、重くなると退去しなければいけない施設などさまざまです。費用においてもまさにピンキリ。高いから良い施設ともいえません(施設は共同生活ですから、施設スタッフや他の入居者の方との相性も非常に重要なポイントです)。

私自身も仕事上高齢者向けの施設を見学しますが、正直疲れます。しかし本気で探すには10件程度を見て回るのは普通です。また情報収集すべきこともたくさんあります。介護の準備は精神的にも体力的にも時間的にも余裕がある今のうちからぜひスタートしていただきたいと思います。

最後になりますが、くれぐれも美代子さん1人で抱え込まないようにしてください。ご主人様や行政、地域包括支援センターなど、頼れるものには頼ることも必要ですよ。


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