家計診断Q&A

家計診断Q&A

5年後に社宅を出なければなりません。
それを機に住宅購入を考えていますが、やっていけるでしょうか?


 

村井 英一先生
(むらい えいいち)
プロフィール
  • 現在のような家計管理をされていけば、第二子の誕生後も心配ありません。
  • 収入に不安がないようなら、ご希望の物件を購入しても問題ありません。
  • 今一度、賃貸と自宅購入で、メリットを比較検討してみましょう。

三好 麻美さん(仮名 30歳 会社員)のご相談

夫は激務薄給で福利厚生イマイチの会社に、私は給料が少ないものの安定した企業に勤めています。現在の貯蓄が少なく370万しかありません。子供はもう一人欲しいのですが、この状況で考えてもよいものでしょうか。また、5年後には社宅を出なければならないので、住宅購入も考えています。

三好 麻美さん(仮名 30歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 本人 (妻 30歳 会社員 年収365万円 ※現在育休中で150万円)
  哲也さん (夫 32歳 会社員 年収360万円)
  子供 (長男 0歳)

現在の家計の状況

<収入>(手取り収入)(単位:円)

  月給 ボーナス 合計
ご相談者様 125,000 0 1,500,000
ご主人様 225,000 0 2,700,000
合計 350,000 0 4,200,000

<支出>(単位:円)

  金額 臨時支出 年間支出
住居費 28,000   336,000
食費 30,000   360,000
光熱費 23,000   276,000
医療費 4,000   48,000
被服費・雑貨 0 50,000 50,000
通信費 5,000   60,000
自動車関連 8,000 80,000 176,000
交際費 20,000 50,000 290,000
小遣い 55,000   660,000
その他 16,000 100,000 292,000
保険料 11,000 198,000 330,000
貯蓄 150,000   1,800,000
       
合計 350,000 478,000 4,678,000

<金融資産>(単位:円)

普通預金 400,000
定期預金 1,225,000
財形貯蓄 2,470,000
合計金額 4,095,000

<加入している生命保険>(単位:円)

種類 被保険者 月額保険料
がん保険 夫婦 7,000
積立保険 本人 4,000

現状の家計状況なら、第二子誕生後の住宅購入も問題ありません。
しかし、購入のリスクとリターンをもう一度考えてみましょう。

1. 堅実な家計管理をされています

三好様、こんにちは。お子様が生まれたばかりで、あわただしく過ごされていることでしょう。いずれは、もう一人お子さんをご希望されていらっしゃるのですね。
そのような中、三好様は日々の家計管理に頭を悩ませておられますね。毎月しっかりと貯蓄をしながらも、同時に取り崩している部分もあり、思ったように貯蓄が増えません。このままでは、将来どうなることかとご心配でいらっしゃるようです。家計の悩みをお一人で抱え、ご主人様にはひっ迫感がないために、余計にイライラされているのではありませんか。
結論から申し上げると、三好様は支出をしっかりと抑え、堅実な家計管理をされています。このまま、今のような家計管理を続けていければ、まったく問題はありませんし、老後を迎える頃には、十分な貯蓄もできることでしょう。第二子が生まれれば、教育費は今の2倍かかることになりますが、それでも問題なく家計のやりくりができることでしょう。また、住宅を購入されると、住宅ローンは少しずつ返済するとしても、ある程度の頭金が必要となります。そのため、5年後に住宅を購入すると預貯金がほとんどなくなってしまいますが、住宅購入ができないわけではありません。ご希望の価格(3,200万円程度)の物件でも十分に購入することができます。三好様のようにしっかりと家計管理をされる方でしたら、厳しい時期も乗り切っていかれることでしょう。

現在、貯蓄が増えないのは、三好様が育児休業を取得中であり、収入が少なくなっているためです。退職をされていませんので、いずれお仕事に復帰され、元の収入を得るようになると、余裕が出てきます。もちろん、そうなると保育費用などもかかるようになりますが、それでもお二人で働くことによって、毎年確実に貯蓄ができるようになります。少しずつでも貯蓄していければ、老後には大きな貯蓄ができるはずです。

現状のままで推移した場合の家計のシミュレーションを見てみましょう。

<今後のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

<今後の家計状況の予想(グラフ)を別ウィンドウで表示>

<前提条件>

  • 5年後、社宅を出た後は、賃貸住宅(家賃:月額12万円)に入居。
  • ご本人が60歳となった時点で、ご主人様の郷里に戻り、家賃なし。
  • 2年後に第二子誕生。
  • 1年後から職場復帰。第二子誕生後に1年間育児休業を取得。
  • 保育費用は、子供3歳までは月額4万円、小学校入学までは月額3万円。
  • 子供それぞれに、18歳満期の学資保険に加入。
  • 夫婦の年収、基本生活費の上昇率は年1%とする。
  • 退職金は考慮していない。

教育費がかかる時期でも、少しずつ貯蓄を増やしていくことができています。そして、退職金を考慮しなくても、お二人が老後を迎える頃には5,000万円程度の貯蓄ができていることになります。これなら、老後の生活まで含めて、ライフプランを実行することができます。もちろん、これは現段階での条件を基にしたシミュレーションです。今後の状況の変化によっては大きく異なる場合もあります。しかし、けっして自信をなくすような状況ではないことは、ご理解いただけるでしょう。

では、次は5年後に、住宅ローンを組んで、自宅を購入した場合のシミュレーションを見てみます。

<住宅購入後のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

<住宅購入後の家計状況の予想(グラフ)を別ウィンドウで表示>

<前提条件>

  • 5年後に、3,200万円の中古のマンションを購入。
  • 諸費用は購入価格の10%。
  • 頭金と諸費用の1,000万円は、預貯金から充当。
  • 住宅ローンは2,500万円で、固定金利2.8%の30年元利均等返済。
  • 夫の郷里に帰る時点で売却。売却価格は1,000万円。
  • その他の条件は、住宅を購入しない場合と同じ。

三好様、ご主人様、お二人とも決して収入が多いわけではありません。しかし、二人を合わせればそれなりの収入になります。夫婦二人で住宅ローンを組むことはできますので、住宅購入は実現可能(住宅ローン支払い開始当初の、2人の年収合計に占めるローンの割合は約27%)です。どの金融機関もが扱っているわけではありませんが、探せば積極的に応じてくれるところがあります。夫婦二人がそれぞれに住宅ローンを組むのがよいのか、どちらかをローンの名義人として連帯保証をするような形にするのがよいのかは、生命保険をどうするか、住宅ローン減税をどのように利用するかもあわせて検討します。この点も大変重要ではありますが、まだ具体的な検討の段階ではないようですので、この部分は割愛させていただきます。

住宅を購入する場合は、購入時に頭金や諸費用の支払いで、まとまった資金が必要となります。5年後にはある程度の貯蓄ができていますので対応できますが、その後はしばらく手元資金が乏しい状況が続きます。その間に、収入の減少や大きな支出が発生した場合のことを考えると、少々不安ではあります。ただ、現在のように家計をしっかりと管理して、返済を続けていけば、貯蓄は徐々に増えていきます。住宅ローンの返済が完了した30年後には自宅を売却して、ご主人様の郷里に帰ります。その際に自宅がいくらで売れるかは、まったくわかりませんが、ここでは1,000万円としています。中古マンションを購入して、さらに30年経過後の売却であることを考えると、もっと安くなっているかもしれません。なお、現在は変動金利でもっと利率の低い住宅ローンもあります。しかし、将来金利が変わるものは、現在の金利が続くことを想定はできません。固定金利でシミュレーションをしてみる必要があります。
このように見てみますと、住宅購入後しばらくは手元資金の少ない時期がありますが、そこさえうまく乗り切れれば、老後には不安はないでしょう。しっかりと家計管理をされている三好様のことですから、厳しい時期も上手に乗り越えられると思います。


2.賃貸 vs 自宅購入

ところで、三好様が自宅を購入されたいと考える理由は、どのようなことでしょうか?そして、それは賃貸の住まいでは叶えられないことでしょうか?
自宅を購入する理由として、しばしば挙げられるのは「老後に家賃の支払いを心配しないで生活することができる」という点にあります。住宅を購入すると、住宅ローンを返済している間は、家計のやりくりが大変ですが、ローンの完済後は家賃の支払いがないだけに余裕が生まれます。老後にお金の心配、住まいの不安がないように、自宅を購入する人も少なくありません。しかし、三好様の場合は、老後にご主人様の郷里に帰ることも考えておられます。自宅を購入しなかったとしても、老後に住まいの心配をしなくてもよい環境にあります。むしろ、せっかく自宅を購入しても、ローンの支払いが終わった頃に売却することになってしまいます。しかも、将来かなり築年数が経過した中古マンションを売却することになり、いくらで売れるのか、あるいは売却ができるのか、という不安を抱えることになります。
また、庭付き一戸建てを手に入れたくて、自宅を購入する人もいます。都心部では庭付き一戸建ての賃貸住宅はあまり多くはないからです。しかし、賃貸でも探せばないわけではありませんし、良好な環境の賃貸マンションもあります。むしろ、賃貸ならば、住んでみて気に入らなかったら、住み替えることもできます。自宅を購入した場合、住んでみた後に不都合が生じても簡単には住み替えることができません。購入の失敗は取り返しがつかないために、「住まいの選択」という面では、かなりのリスクを抱えることになります。

そして、もう一つ考えなければならないのは、収入の減少など、シミュレーションを変える事態が起きないかどうか、という問題です。ひとたび住宅ローンを組むと、どんなことがあっても返済を続けていかなければなりません。返済額の減額や自宅の売却などは簡単にできるものではありません。そのため、ボーナスの大幅な減少や転職による年収の減少、そして失業などとなることがないか、くれぐれも慎重に判断する必要があります。それでも考えもしなかった収入源に直面することもありますので、住宅ローンを組むということは、小さくはないリスクを抱えることになります。三好様の場合はいかがでしょうか。
三好様ご自身では「安定した企業」にお勤めとのことですが、お子さんが二人になってもかつてと同じようなペースで仕事を続けていくことができるでしょうか?ご主人様は、「激務薄給で福利厚生イマイチの会社」にお勤めとのことです。若いうちはがむしゃらに働くことができますが、いつまでも今までのような勤務を続けることはできますか?
もし、働き方や勤務先に変更の可能性があるようなら、住宅の購入は慎重に考えた方がよいでしょう。住宅ローンがあるために、制約があっては転職する場合も余裕を持って次の就職先を探すことはできません。


3.最後に

消費税が、平成26年4月に8%に、平成27年10月には10%に引き上げられる予定です。土地の取引には消費税はかかりませんが、建物にはかかりますので、その影響は小さくありません。自宅を購入することが決まっているのならば、消費税が上がる前の方が有利だと考えられます。しかし、だからといって、あわてて購入するのは得策ではありません。自宅を購入することが、ご家族のライフプランにとって、本当にプラスになるのか、そのタイミングは今なのか、じっくりと検討した上で判断することが大切です。
三好様の場合、もし将来にご主人の郷里には戻らないことになったら、その時点でご自宅を購入するという方法もあります。お二人が退職を迎える頃は、お子様もすでに独立されていることでしょう。子供部屋は必要なく、小さくても、便利のよい都心で、高齢者向きの住宅を購入するという手もあります。その際には、十分な貯蓄がありますので、ローンを組まずに、現金で購入することができます。金利の負担がありませんので、消費税が多少上がっていても、かえって安上がりな買い物になるかもしれません。


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