家計診断Q&A

家計診断Q&A

精神障がいを抱える長男(30歳)のために、
年老いていく親はどのように備えてあげれば良いでしょうか?


 

井上 信一先生
(いのうえ しんいち)
プロフィール
  • 生涯収支に基づく支出計画の心づもりを持っておきましょう
  • 万一の保障の準備を検討しましょう
  • お子さまの生活を巡る環境も整えておきましょう

新村 良子さん(仮名 55歳 会社員)のご相談

長男との2人暮らしです。長男は精神障害者保健福祉手帳2級の精神障がいを持ち、障害基礎年金を受給しています。住まいは亡くなった両親から譲り受けた戸建住宅で、いまは私の名義ですが、特にローン等は抱えていません。ほかに他家に嫁いだ長女の家族が近くに暮らしておりますが、娘のご主人や孫とは数ヵ月に1度か2度の頻度で会う程度で、特に可もなく不可もない距離感でお互いに暮らしている状況です。
幸い、ある程度の退職金も見込めそうなので、自分の老後に全く心配がない訳でもありませんが、なんとかなるのではないかと思っています。しかし、万一、自分が死亡した後の長男の生活を考えると不安が残ります。いまは預貯金と生命保険以外に、これといった計画をしておりませんが、経済面ではどのような準備が必要でしょうか。

新村 良子さん(仮名 55歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 本人 55歳(会社員)
  長男30歳(同居、精神障害者保健福祉手帳2級)
  長女27歳(別居、既婚)
世帯収入 : 本人給与からの年間貯蓄 約100万円
  長男の障害年金と福祉工場の賃金分 約90万円
  ※ただし、長男の賃金は月1万円程度で不定期。
預貯金等 : 約1,000万
  別途、年金等を貯めた長男名義の預貯金が1,300万円
  退職金として1,000万円程度は見込める
生命保険 : (1)定期保険特約付終身保険
 
契約者・被保険者 : 本人(良子さん)
受取人 : 長男50%/長女50%
保険金 : 4,000万円(うち終身保険500万円)
保険期間 : 定期保険特約は60歳払込満了・満期
  (2)医療保険(終身保障)
 
契約者・被保険者・受取人 : 本人(良子さん)

ご本人が一人となったときに、資産・金銭管理を誰に託すか?
収入と支出を管理できなければ、どんなに準備してもすぐに破綻しかねません。

新村様、母親ひとりで2人のお子さまを育ててこられたご苦労は多かったことと存じます。また、障がいのあるお子さまを持つ将来へのご不安の程、いかばかりか計りしれません。
頂いた別添の内容からは、お住まいの地域の民生委員の方をはじめ、福祉行政や社協等の方々、そしてご長男のお勤め先やジョブコーチ等とのネットワークを持たれているご様子、まずは地域社会で必要な人的関係の構築は築かれておられることが伺えます。
ですが、制度としては比較的厚い福祉が備わっているとはいえ、お感じのとおり、障がい者の方が自立して日常生活を営むための基盤は未だ薄いのも事実だと思われます。まだまだ、福祉施策に限らない諸制度の活用や、生活の上での自助努力は各人の工夫に委ねることになります。今回は、頂戴した情報が限られているため詳細な試算はできませんが、このご相談を機に、より具体的なプランを身近の専門家と練って頂きたく、まずはその一助となるような素案を述べさせて頂きます。


貯蓄取り崩し計画は親子それぞれでイメージしましょう

現在の家計は、住居費がかからないまでも、新村さんの収入だけで家族2人の暮らしを賄い、かつ約100万円の年間貯蓄が可能になっているとのこと。とても堅実な生活管理をなさっています。この生活水準を維持されていけば、預貯金と退職金も含めた老後の暮らしは極端に悲観的な事態にはならないものと思われます。
ですが、退職後の定期的な収入は公的年金のみ(別途、企業年金はないものと仮定)となりますので、今よりも収入の減少は避けられません。おそらくは、これまでのように貯蓄を増やすことができなくなるばかりか、逆にこれまでの蓄えを取り崩さざるを得ないのは必至でしょう。

そこで、まず検討頂きたいのは、新村さんご自身の老齢厚生年金(報酬比例年金)の支給が始まる61歳になるまで、そして可能であれば老齢基礎年金の始まる65歳になるまでは継続して働くというご提案です。お勤め先の事情、新村さんのお身体やご家庭の事情などにもよりますので簡単な選択ではないと思います。しかし、年金以外の就労収入を得られる期間を延ばすことで、少なくとも大きな貯蓄取り崩しの開始時期を遅らせることが可能になり、これは後々にとっても安心できる材料です。いったん就労環境から離れると、復職はより困難ですので、60歳以後もそのまま継続して働ける方法を探してみてください。
もちろん、お勤め先が変わる、就業時間や働く日数が減る、雇用形態が変わる、といったことで収入減になっても結構です。悠々自適に暮らされるプランを特に早急にお持ちでなければ、身体管理に注意して頂くことはもちろん大切ですが、気概としての今のお気持ちを維持されることが、ひいては健康寿命の長寿化につながることもあると思われます。

なお、働く間は本来の年金が削減(在職老齢年金※が適用)される場合もありますが、就労条件により厚生年金保険の被保険者から外れると、この適用はありません(年金は減額されません)。仮に被保険者として働いて年金が減っても、同時に雇用保険制度からの給付金(高年齢雇用継続給付金)の支給対象になれば影響は軽減しますし、何より再退職後の年金額を計算する被保険者期間が長くなる分だけ年金額も増加します。健康で長生きされれば生涯の年金受取総額上は大きなマイナスになるわけでなく、かつ働き続けることによる収入の分だけ、家計にとっては長期的に大きなプラスとなります。
(※在職老齢年金についての詳細は、「もうすぐ定年を迎えます。もう少し働きたいのですが、収入があると年金が減らされるのですか? 退職前後の手続きで注意すべきことはありますか?」の相談を併せてご覧ください)

次に、ご長男がお一人で暮らしていく場合の収支推移のイメージを持っておいて頂きたいと思います。そのためには、新村さんご自身とご長男のそれぞれが互いの生活を狭めることのないよう、別々で貯蓄取り崩しのイメージを掴んでおくことが必要になります。
そこでまず、仮に新村様がいま亡くなられてしまった場合での、ご長男名義の貯蓄残高のみの推移を、下記グラフのように試算してみました(貯蓄に係る運用利率等は考慮しておりません。以下のグラフも同様)。

ご長男の貯蓄残高の推移のグラフ

ご長男は、現在は新村さんの収入の中で生活されていますので、障害基礎年金等による年90万円はそのまま貯蓄として増やせていますが、この前提が崩れますと当然、収支悪化が予想されます。そこで試算の前提として、ご長男が50歳になるまでは年50万円のマイナス、それ以後は働かないものとして年65万円のマイナスとしました。これは、ご長男の日常生活等に係る支出が、年金等の収入以外に年50万円(年金等の90万円と合わせて年140万円、月に約12万円)かかるものと仮定して導いています。
すると、この前提条件のもとではご長男がおよそ53歳を過ぎると貯蓄残高は枯渇、80歳時には約▲1,700万円、90歳時で
約▲2,400万円となるのが、グラフから読み取れると思います。したがいまして、新村さんご自身の身にいつなにが起きても良いよう、ご長男80歳までを想定するなら1,700万円相当、90歳までなら2,400万円相当の資金を、いま手当てしておくことが必要だと考えられます。ただし、現在の新村さん名義の預貯金1,000万円と生命保険契約(ご長男分として2,000万円)、そして死亡退職金もいくらか見込めるでしょうから、この試算の限りでは大きな問題はなさそうです。

ところが、新村さんが亡くなられる時期をずらしていくと、必ずしも安心できる要素ばかりとは言えなくなります
まず、下のグラフは先ほどのグラフと他は同条件で、新村さん死亡時期を5年後(60歳時)、15年後(70歳時)、25年後(80歳時)とした場合の、ご長男名義の貯蓄残高推移を各々示したものです。前提として、新村さんが65歳になるまではご長男の貯蓄を今と同じ年90万円のペースで増やせ、その後のご存命の間は貯蓄の増減をゼロ(ご長男の貯蓄からの取り崩しナシ)としました。

ご長男の貯蓄残高の推移のグラフ

例えばご長男90歳時のご本人の貯蓄残高は、5年後(新村さん60歳時)に死亡する場合で約▲1,700万円、15年後(新村さん70歳時)の死亡だと約▲630万円、25年後(新村さん80歳時)では約▲50万円と、その時期が後になるほど毀損が少ないことがグラフから読み取れます。しかし、その際にこの不足分を補てんすべき財産として、ご加入の生命保険の定期保険特約が60歳に満了を迎えて保険金額が減額してしまうため、残りを退職金含む新村さん名義の預貯金に大きく依存することになります。そこで、今度は新村さん名義の貯蓄残高の推移を下記グラフで試算してみました。

新村さん名義の貯蓄残高の推移

今グラフの前提条件として、新村さん60歳(ご長男35歳)までは今と同じく年100万円ペースで貯蓄ができ、60歳時に退職金1,000万円を受け取り、そして65歳(ご長男40歳)までは貯蓄の増減ゼロ(新村さん名義の貯蓄からの取り崩しナシ)としています。この時点での貯蓄残高は約2,600万円となります。
しかし、その後の年金生活で、年100万円を取り崩すペースで試算すると、新村さん70歳時の貯蓄残高は2,100万円、80歳時で1,100万円、そして概ね90歳時(ご長男65歳時)に貯蓄が底をつく計算となります。家族2人の生活費としては、当試算でも苦しいところかもしれませんが、この水準以上のペースで貯蓄を取り崩してしまうと、母親存命中から長男の貯蓄を取り崩さざるを得ない事態を招くので、これがギリギリのラインとなります。つまり、老後の生活費水準としては、母親の老齢年金とご長男の障害年金に加え、母親の貯蓄からの取り崩しを概ね年100万円までに留めることが生活上の防衛ラインと認識頂き、あらためて、「ねんきん定期便」等でご自身の老齢年金見込額を確認され、もう少し緻密なキャッシュフロー試算にて検証されることをお勧めいたします。
人は貯蓄額が減ってくれば、自然と防衛本能が働き出費にも気を使うものです。ですが、障がいを持つ方の場合、臨機応変なコントロールを効かせにくいことも多いので、ことさら機械的な貯蓄管理計画を立てておく必要があるのです。


想定外の収支悪化に備える手立てを検討しましょう

さて、これまでは支出の大きな変動なく貯蓄残高が推移する前提で試算をしてきました。しかし、高齢期においては予定外のリスクが顕在化し、多額の出費を伴う事態も考えておく必要があります。そこで具体的に、新村さんの介護保障、そしてご長男の医療保障と損害賠償補償を、保険で備えておくご提案をしたいと思います。

高齢期の支出計画が大きく狂う要因は、主に医療費、介護費、住居費(要介護時、要治療時、末期時)によると言っても過言ではありません。新村さんは既に終身保障型の医療保険に契約済みですが、これに加えて、ご自身を契約者・被保険者・受取人とする介護保険への加入を検討されてはいかがでしょうか。昨今この分野では新商品が各社から相次いでおり、またミニ保険(少額短期保険)にも検討に値する商品が多くなっています
例えば、保険料(掛金)を割安に抑えたい場合は、保険料掛け捨てタイプになりますが、公的介護保険の対象サービスの上乗せ費用や横だし費用を、概ね80代までは月額3,000円以内で備えられるものもあります(契約は100歳まで更新可能)。また、生命保険分野では、高額な介護一時金を比較的割安な保険料(掛け捨てタイプ)で準備できる商品も登場しています(例えば55歳女性、保険金500万円、保険料終身月払いで7,950円など)。こういった保険は万一の高齢者施設入所時の財源として活用することが可能です。
また、このコーナーで以前にも何度かご紹介(http://fp-kakei.com/11/09_2.html)している保険料一時払いタイプの介護保険は、介護保障、死亡保障、貯蓄性を兼ねた商品性となり、どちらかというと、現在のお金の置き場を預貯金から一部預け替えるような活用法となります。主な目的は、要介護時以降に大きな出費増を抑えられるよう、生涯に渡って介護年金を受けられる機能なのですが、万一の早期死亡時には死亡保険金を確保することもできます。契約時の年齢にもよりますが、概ね6〜8年で一時払い保険料を解約返戻金が上回り、かつ毎年のように少額ずつ一部解約することも可能ですので、必要に応じてお金を取り崩していくこともできます。保険料掛け捨てタイプは支出の純増に繋がり、一時払いタイプは預貯金の一部預け替えを要しますが、将来の出費増に伴う貯蓄残高毀損の不確実性をカバーする手段として、介護保険は一考に値するものと考えられます。可能であれば、60歳の保険料払込満了後に保障額が急に少なくなってしまう死亡保障の上乗せ(既契約の定期特約の延長か新しい特約の付加)とあわせてご検討ください。

次に、ご長男を被保険者・受取人とする保険の加入についても、やはり想定外の高額出費の可能性を軽減することを目的に検討頂く手段となります。
既にご存知のことと思われますが、精神疾患の方の場合、その治療に要する通院治療等には自立支援医療等が受けられるものの、すべての医療・治療に要する費用が公的保障や福祉として優遇されているわけではありません。また、精神障がいの方は、知的障がいや発達障がいの方に比べ、保険加入におけるハードルが高く、加入時や保険金請求時に著しく制約がかかるので、ご長男の心身のご様子を詳しく伺わねばお勧めできる保険や条件等が異なってくることも否めません。ですが、がん等のように高額かつ長期の療養を必要とする病気に対する備えや、偶然の事故で他人の身体や財産に損害を与えたことによって負う損害賠償責任への備えに対する必要性は、健常者と変わるものではないでしょう。最近では、引受基準緩和型医療保険やミニ保険の普及で、一定要件のもと加入できる商品も以前よりは増えておりますので検討されても良いと思います。
なお、損害賠償責任に対しては個人賠償責任保険が該当しますが、この保険は親を主たる被保険者とすれば、生計を同じくする同居親族等が自動的に従たる被保険者になります(一部保険では、精神障がいのある子でも主たる被保険者として加入できます)。
例えば、精神疾患のある子が他人に損害を負わせた場合でも、親の監督責任を伴うような子であれば補償対象になることが少なくないのですが、それでも偶然性に著しく欠ける子の精神障害に起因する場合は補償対象外となる場合もあります。生命保険も損害保険も、加入できたとしても、実際に保険金の支払事由に当てはまるかどうかはケースバイケースによるものと心得ておかれるのが無難かもしれません。


お子さまの生活を巡る周辺環境の準備も入念に

金銭的な備えに加え、財産管理や生活環境の面での備えも不可欠です。この点では既にご準備をされているとは存じますが、最後にこれらについても補足させて頂きます。
まず、万一、新村さんがお亡くなりになった後に、ご長男がお一人で暮らすには少なからず不安が残ると思われます。
よって、ご自宅の処分、あるいは管理についての方法を今のうちから検討しておかれるのが賢明です。選択肢としては、預金等の金融資産をご長男に遺す代わりに、ご長女に自宅を相続することも考えられますし、ある時期に売却または人に貸して換金化資産として捉える手もあります(その際には、別の住まいの確保や修理・建替え等の出費を伴います)。
また、新村さんのご自宅の所在地から判断すると、リバース・モーゲージの活用も期待できます。この制度は自宅を担保に、その担保評価額の範囲で生活資金等の融資を定期的に受け、契約者の死亡後に担保住宅を渡すことで融資返済に充てる方法です。リバース・モーゲージを取り扱う民間金融機関の中には、融資を一括して受け、その使途に制約を設けないものもあります。例えば、必ずしも融資を受ける方が担保住宅に住み続ける必要はなく、本人や子が施設等に入るための一時金に充てることができ、空いた自宅は人に貸して賃料収入を得ることも可能になります。先に述べた預貯金の枯渇に対する懸念を軽減する手段としても、またご長男の住まいに関する不安を払拭するためにも、効果的な自宅の活用方法を検討して頂きたいと思います。

次に、親亡き後の財産管理や身上監護を委ねる方法として成年後見制度の活用が考えられますが、できれば親が健在なうちに後見人と子との信頼関係を築いておく工夫が望まれます。例えば、まだお元気な間は新村さんがご長男の法定後見人となって、これまでどおり面倒を見ますが、同時に新村さん以外の方も後見人として推薦をしておけば、万一の際にはスムーズに後見業務をその方が引き継いでくれるようになります。後見人にはご長女やその他のご親族に任せることもできますが、その場合には遺言書等に後見執行の旨を記され、そして相応の対価を遺されるのが好ましいと思われます。
また、第三者を後見人とする場合、後見執行後はもちろん、事前段階から報酬が生じる場合もありますので、社会福祉協議会や弁護士会、司法書士会、あるいは行政単位の市民後見人等の機関に話を聞いておくと良いでしょう。なお、新村さんが認知症になってしまう事態も想定し、親子共に後見人の指定を考えておかれると、より安心といえます。

さらに、金融機関等との契約による信託の活用も有効な方法です。信託とは、「委託者(信託財産を持つ者)」が、「受託者」にその財産の処分や管理を契約によって委ね、そしてその財産や財産から生じる収益等を「受益者」に渡していく契約をいいます。例えば遺言で財産を託す場合は自分の死後の執行性に不安が残らなくもありませんが、信託契約では受託者または信託監督人等による執行が法律により決められていますので、親の生前あるいは判断能力が確かなうちに締結しておくと安心です。また、遺言では相続人が死亡すると、その法定相続人に財産が渡っていきますが、信託を兼ね合わせれば遺族の生活に係る憂いを軽減させることもできます。つまり、新村さんの場合は長男と長女が相続人となりますが、仮に、長女死亡の際の長男の面倒を兄弟姉妹(長男から見た叔父や叔母など)等に委ねたい場合には、信託財産の受益者の1人である長女からその配偶者や子ではなく、一部財産を兄弟姉妹へと継続させることも信託では可能です。信託の形態は多様で、遺言と組み合わせる信託リバース・モーゲージや生命保険契約など新たな財を生む契約等と組み合わせる信託、成年後見制度と組み合わせる信託特定贈与制度を利用した信託などがあり、金融機関等を介さずに親族間等で締結する個人信託も可能です。下図は、このうち特定贈与制度を利用した個人信託の一例となります。

特定贈与制度を利用した個人信託の概略図

ちなみに信託契約では、委託者から受託者に財産が渡った時点では課税されず、受益者が受け取って初めて相続税や贈与税が課税されます。ところが特別障がい者への一定額までの贈与には非課税枠があるので、信託契約においても上限額までは課税が生じません(新村さんのご長男が特別障がい者に該当するようになれば当該非課税制度も活用できます)。
成年後見制度も信託契約も、ともにお子さまだけでは難しい財産管理を補助する仕組みです。多額の預貯金や生命保険契約を遺せても、それを一気に使ってしまったり悪質な契約詐欺等に遭ってしまっては元も子もなくなります。プランに基づく計画的な取り崩しと生活費への補てんを実現させるために、これらの制度を併用して活用されてはいかがでしょうか。

さて、今回は、主にお金の守り方やその考え方、諸制度の活用について回答させて頂きました。しかし、何より大切なのは、親亡き後も遺された兄妹が仲良く暮らしていけることであるのは言うまでもないかと存じます。新村さんの場合、ご長女は障がいを抱える兄を案じる妹の立場として、そして息子を気遣う親を傍で見る子の立場として、ひょっとしたら特別な思いを感じて生きてこられたかもしれません。その感謝の気持ちや愛情を言葉に表すとともに、ご長男の暮らし向きを気に掛けることへの願いをメッセージとしてお伝えしておくことが、お金の問題と違わずに新村さんの抱える不安を和らげる術なのだと思います。


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