家計診断Q&A

家計診断Q&A

夫に先立たれ、同居中の長男が来年結婚予定。
2世帯住宅を購入しようかと迷っています。


 

村井 英一先生
(むらい えいいち)
プロフィール
  • 2世帯住宅にはいくつかのタイプがあります
  • 今年の9月までの建築契約であれば、建築費にかかる消費税は5%です
  • 2世帯住宅はハイリスク・ハイリターン=I?

中山 佳子さん(仮名 44歳 会社員)のご相談

10年前に夫が他界し、しばらくは夫の両親と同居していました。訳があり現在は長男と2人で賃貸住宅に暮らしています。長男は来年結婚する予定です。そこで私と長男で賃貸2件より2世帯住宅を購入した方が良いのか迷っています。夫の両親の家は長男が相続する予定ですが、それがいつになるかはわかりません。

中山 佳子さん(仮名 44歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 本人 (42歳 会社員 年収328万円)
  長男 (25歳 会社員 年収384万円)

別々に住むよりは、2世帯住宅を購入した方が安上がりです。
しかし、目先の損得だけでなく様々なリスクも検討して結論を。

1.2世帯住宅のポイント

中山様、こんにちは。ご長男が来年ご結婚とのこと。おめでとうございます。ご長男が新しい家庭を持ち、別々に住み、それぞれが家賃を払うぐらいなら、この機会に2世帯住宅を購入した方が安上がりではないかとのお考えですね。ご長男も同居を希望されているとのこと、嬉しいお話ですね。ただ、建築してから「こんなはずではなかった」となっては取り返しがつきません。損得だけの比較だけではなく、慎重に検討したいものです。
2世帯住宅のタイプにはいくつかありますが、どのようなものをお考えでしょうか。

<2世帯住宅のタイプ>

 
1.一部分離型
 
玄関、トイレ、風呂などが共有で、台所と寝室だけが別のもの。台所が別ですので、2世帯(生計が別)となりますが、かなり同居に近いタイプです。
 
2.玄関共有型
 
玄関だけが共有で、それ以外は別となっているタイプです。それぞれの生活スタイルを尊重できますが、コミュニケーションもしっかりと取れます。
 
3.完全分離型
 
玄関を別々に設け、いったん外に出ないとお互いの家に入れないタイプです。プライバシーが確保でき、お互いに気兼ねなく生活しやすいです。

他に、完全に同居するという方法もありますが、台所が同じで生計をともにする場合は2世帯住宅≠ナはありませんので、ここでは割愛いたします。
共有部分が少ないほど、お互いのプライバシーが確保でき、生活がしやすい傾向があります。しかし、風呂・トイレ・玄関などを別々に設けることになりますので、建築費はその分、多くかかります。

2世帯住宅の取得は、ほとんどの場合が土地を取得して、自宅を建築することになります。土地取得代金と建築費を合わせると、建売り住宅よりは割高となります。2世帯住宅自体がそれほど多くはないので、希望にあう中古物件はそうそう出てきません。ただし、2世帯住宅で売り物件が出たとしたら、持ち主が何らかの事情で住み続けられなくなったということが考えられますので、比較的割安に購入できる可能性はあります。

土地を購入して、自宅を建築する場合、

  1. 土地の代金の支払い
  2. 建築の着手金や中間金の支払い
  3. 完成時の建築費の残代金の支払い

と3〜4回に分けてまとまった資金の支払いが必要になりますので、注意が必要です。銀行の住宅ローンを利用する場合は、土地先行ローンが組めるかどうか、着手金や中間金の支払いに対応してくれるかどうか、などを確認する必要があります。金利の比較も大切ですが、資金繰りができなければ購入することはできません。全期間固定金利の「フラット35」を利用する場合も、つなぎ融資をしてくれる金融機関で申込む必要があります。
住宅を購入する際に必要な諸費用は、土地代と建築費を合わせた物件価格の5〜10%ぐらいかかると考えておくとよいでしょう。諸費用分もローンで賄うことはできますが、できれば、住宅ローンとは別に支払っておきたいものです。そう考えると、物件価格(土地代+建築費)の2割の頭金と、1割程度の諸費用代金が準備できれば理想です。中山様の場合は、少し足りないものと思われますが、それでも住宅ローンを組むことは可能です。

消費税は土地の購入にはかかりませんが、建築費にはかかります。諸費用については、税金や火災保険料など消費税がかからないものと、土地取得の仲介手数料のようにかかるものがあります。
自宅が完成して引き渡されるのが2014年4月以降になると、消費税は8%となります。ただし、半年前の今年9月までの建築契約であれば、引き渡しが4月以降になっても5%が適用されます。同様に、2015年以降の引き渡しは消費税が10%となりますが、2015年3月までの建築契約であれば8%が適用されます。特に2世帯住宅は建築費がかかりますので、消費税引上げ前の方がお得です。ただ、今から準備を始めて今年の9月までに建築契約を結ぶとなると、かなり急がなければなりません。検討する時間も少なくなり、あわてて決断せざるをえません。コストの面では得であっても、結果的に良い選択とは限りません
住宅ローンは、中山様、ご長男が別々にローンを組むと、それぞれが住宅ローン控除を利用でき、お得になります。住宅ローン控除とは、年末の住宅ローン残高の1%分だけ所得税を減らすことができる制度です。所得税から引ききれない場合は、住民税からも差し引くことができ、住宅購入をする人にとっては大変お得な制度です。


2.2世帯住宅はハイリスク!?

いただいた家計の状況を基に中山様のキャッシュ・フローを分析(※計画では、3,500万円程度の2世帯住宅を購入し、ご本人が1,000万円、ご長男が2,000万円の住宅ローンを組み20年で返済)してみると、住宅ローンを組んで2世帯住宅を購入することは十分に可能です。家計的には独立されるご長男ご夫婦の状況がわかりませんので、不確かな部分もありますが、現在の金利状況では毎月の返済は、家賃の支払いとそれほど変わりません。住宅ローンの返済は十分に可能でしょう(キャッシュ・フロー表は、ご本人のみの単独家計で作成。ローン返済は年間60万円で20年、他住居関連は税金や維持費で年15万円)。
ただ、けっして余裕があるわけではないので、常に家計のチェックは重要です。現在はご長男からの家計への入金もありますが、結婚した後はそうはいきません。交際費、使途不明金など、節約できる部分がありますので、この機会に見直しをされてみてください。

キャッシュフロー表

<今後のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

今後の家計状況の予想グラフ

<今後の家計状況の予想グラフを別ウィンドウで表示>

住宅ローンを組んで2世帯住宅を購入することは可能だということがわかりました。しかも、中山様とご長男夫婦が別々に賃貸に住んでそれぞれ家賃を払うよりも、住宅ローンの支払いの方が少なくて済みそうです。であれば、2世帯住宅を購入した方が良いのでしょうか。
確かに、2世帯で一緒に住宅を購入するので、それぞれが別々に購入または賃貸で暮らすよりも安上がりとなります。ただ、世代も考え方も異なる別の世帯が同じ一軒家に住むわけですから、難しい面もあります。先ほど見ました2世帯住宅のタイプにもよりますが、プライバシーの確保の問題や生活習慣の違いによるストレスなどは、多かれ少なかれついて回ります。完全分離型であっても、まったく気兼ねなく過ごすことができるとは限りません。いつもそばにいるからこそ遠慮なく話ができる関係を作ることもでき、またそれがトラブルのきっかけにもなりかねません。それが親世帯と子世帯の関係だけでなく、ご夫婦の問題にも影響を与えることもあります。実は、2世帯住宅を購入したものの、どちらかが出ていくことになるケースは少なくないのです。

私は、2世帯住宅の購入は、投資に例えると、ハイリスク・ハイリターン≠フようなものだと思っています。うまくいけば、経済的に大きなメリットをもたらし、親子で助け合える安心感も得られます。しかし、うまくいかなかった場合は、大きな負債を遺してしまいます。2世帯住宅の売却は、購入対象が限られていますので、簡単ではありません。たとえ完全分離型であっても、賃貸に出すことも容易ではありません。賃貸のように、簡単に住まいを変更することはできないのです。


3.まとめ

2世帯が別々に家賃を払うこと、消費税の引き上げ、などを考えると、中山様が2世帯住宅の購入をご検討されるのは、1つの選択肢として賢明なことです。しかもご長男が同居を希望されているとのことですから、私の心配も取り越し苦労かもしれません。しかし、まだご長男は結婚されていませんので、早急に結論を出すこともありません。将来相続する土地・家もあるとのことですので、また状況が変わる可能性もあります。しばらく様子を見てから検討されてもよいのではないでしょうか。その間、別々に家賃を払い、消費税もアップしますが、その分は将来に後悔することのないようにするためのリスクヘッジの費用だと考えられてはいかがでしょうか。


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