家計診断Q&A

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アベノミクスでこれから借りる住宅ローンは、
変動金利と固定金利のどちらが有利になりますか?


 

村井 英一先生
(むらい えいいち)
プロフィール
今後の金利の予想は、専門家の間でも見方が分かれています
安易な予想≠ナ選ぶのではなく、家計の状況で判断します
「変動金利を選んでもよい人」は、どちらを選んでも大丈夫です

石田 大輔さん(仮名 35歳 会社員)のご相談

近くマイホームを購入するので、住宅ローンを組むことになります。アベノミクスのおかげで当分は低金利が続くので、変動金利を選択するつもりでした。しかし、このところ急に金利が上昇しています。固定金利を選んだ方が良いのでしょうか?

石田 大輔さんのプロフィール

家族構成    
大輔さん : 35歳 会社員 年収420万円
加奈さん : 32歳 パート 年収100万円
長男 : 5歳
長女 : 3歳

今後の金利動向を予想≠オて、金利タイプを選んではいけません。
金利が上昇しても返済していけるかを基準に選びましょう。

1.住宅ローンの金利タイプ

石田様、こんにちは。消費税増税前の今は、住宅を購入するには、チャンスといえるかもしれません。もちろん、ご家庭の家計を踏まえた上での判断が必要ですが、金利も低く、状況が許すのなら、検討したいところです。
そこで悩ましいのが、住宅ローンの金利タイプの選択ですね。アベノミクスで、さらに低金利になるのかと思ったら、どうやら最近は金利が上昇しているようです。実際、石田様と同じご相談は多くなっています。変動金利と固定金利のどちらを選んだらよいのかは、そのご家庭の家計と住宅ローンの状況で異なります。ここでは、ご自身で判断できるように、選択のポイントをご紹介いたします。

まず、住宅ローンの金利タイプには、次の3つがあります。

(1)固定金利
住宅ローンの完済まで金利が一定のものです。毎月の返済額も確定しますので、安心です。「フラット35」が代表的です。

(2)変動金利
半年ごとに金利が変わります。5年間は返済額が一定ですが、金利が上昇すると、元本の返済が少なくなります。銀行独自のローンはこちらが中心です。

(3)固定金利期間選択型
3年や5年など、当初に決めた期間は金利が一定です。決めた期間が終了すると、その時点での金利で再び固定金利の期間を選択します。

このうち、「固定金利期間選択型」は、変動金利の一種だと考えてください。住宅ローンは、20年、30年と長期にわたります。そのうち、3年や5年の金利が固定されていたとしても、いずれ金利が変わることに違いはありません。金利タイプの名称に「固定金利」という言葉がついていますので、金利が固定されている印象を持ってしまいがちですが、将来の金利がわからないという点は、変動金利と同じです。
そこで、ここでは固定金利と変動金利で、どちらを選んだらよいのかを考えます。単純に金利を比べると、どの銀行でも固定金利よりも変動金利の方が、金利は低く設定されています。そのため、当初の返済額は変動金利を選んだ方が少なくて済みます。しかしながら、変動金利は今後の金利状況によって、返済額が増える可能性もあります。金利変動のリスクを自分で抱えるのが変動金利、銀行に抱えてもらうのが固定金利と言えます。固定金利の方が金利は高いのは、このリスクを抱えてもらうコストも含まれていると考えられます。

 

2.アベノミクスで、今後の金利はどうなるか?

最近話題になっているアベノミクス≠ナ、今後の金利はどうなるのでしょうか。
アベノミクスとは、安倍首相が提唱する経済政策のことです。「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を促す成長戦略」を三本の矢と称して、景気回復を目指すとしています。このうち、「大胆な金融緩和」では、日本銀行の総裁を金融緩和に積極的な人に替え、物価が上昇するまで通貨の量を増やし続けることとしました。日本銀行が通貨の量を増やすと、一般的には金利が下がります。もともと低金利が続いていましたが、安倍内閣が成立した昨年の暮れごろから、さらに金利は低くなり、史上最低の低金利を更新していました。住宅ローンの金利も下がり、こちらもかつてないほどの低い金利が各銀行から提示されています。住宅ローンを組むには、絶好の環境となりました。来年の4月に消費税の増税が予定されているということもあり、住宅購入を急ぐ人が相次いでいます。
しかし、4月に入ると急に金利が上昇を始めました。一時は0.315%まで低下した10年国債の利回りが、1か月半後には1%を超えるまでに上昇しました。住宅ローンの金利は国債の利回りの影響を受けますので、今後上昇していくことも考えられます。
日本銀行の方針が変わったわけではありませんが、景気が回復し始め、金利が上昇するのではないかとの見方が出てきたためです。もっとも、上昇したとは言っても、まだまだ低い水準には変わりありません。今後、金利はどのように動いていくのでしょうか。

日本銀行は依然として、通貨の量を増やし、金利を下げることを目指しています。その点を踏まえると、まだまだ低金利が続くと思われます。しかし、その結果、景気が回復すると、金利は上昇していきます。気の早い金融機関は金利を引き上げる方向に動くでしょう。その点を考慮すると、金利が上昇していくことが予想されます。つまり、「金利が下がる要素」と「金利が上がる要素」の両方があり、どちらに動いても不思議ではないのです。そのために専門家の間でも意見が分かれ、市場の乱高下につながっているようです。金融市場のプロ≠ナも予想がまちまちなのです。
「今後、金利はどうなりますか」と、よく尋ねられます。住宅ローンを組もうとしている人にとっては切実な悩みです。しかし、それを聞いた相手が、金融の専門家であったとしても、その人の答えは、まちまちな予想のうちの1つに過ぎません。他の人に聞けば、また違った予想となるわけです。ですから、専門家に聞いたところであまり意味はありません。今後どうなるかは、わからないと考えるのが適切です。
「低金利が続く間は変動金利にしておいて、金利が上昇する状況になったら固定金利に変更する」という人もいますが、変更するタイミングを把握するのは難しいものです。また、固定金利の方が先に上昇する傾向があるので、低い変動金利から高い固定金利に変更すると、返済額が大幅にアップします。ためらっているうちに、固定金利がさらに上昇してしまうということにもなりかねません。

 

3.では、何を基準に選ぶのか?

そうは言っても住宅ローンを組む時は、金利タイプを選ばなければなりません。できれば返済額が少ない変動金利を選びたいが、将来に問題はないだろうか、というのが本音ではないでしょうか。 そうです。将来、問題がなければ返済額の少ない変動金利を選んでも問題ありませんが、問題があるようなら、固定金利を選ぶ必要があります。問題とは、「住宅ローンを返済できなくなること」です。つまり、たとえ金利が上昇しても問題なく返済していけるのならば、変動金利を選んでも差し支えありません。しかし、予想外に金利が上昇した場合に返済できなくなる可能性があるのならば、変動金利を選んではいけません。「返済できなくなる」ということは、自宅を取られてしまうことを意味するからです。ご自宅、さらにはご家庭を守るためには、想定外≠フ金利上昇があっても、返済できなくなるという事態にならないようにしておく必要があるのです。
住宅ローンの金利タイプは、金利の予想ではなく、金利が上昇しても返済していけるかどうかで選ぶことが大切です。金利が上昇して、毎月の返済額が増えると返済に支障をきたす状況であれば、固定金利を選んでおく必要があります。当初の返済額は固定金利の方が多いのですが、世間一般の金利が上昇しても、返済額が変わりませんので安心です。

では、「変動金利を選んでもよい人」とは、どのような人でしょうか。

(1)繰上返済のための預貯金がある人

住宅を購入する際は、なるべく頭金を多くして、ローンの金額を少なくした方がお得です。しかし、中には「いざという時のために手元に資金を持っておきたい」と、十分な預貯金を残しながらローンを組む人もいます。住宅ローンの金利は、預貯金の金利よりも高いので、その分損していることになります。しかし、金利の上昇時に、この預貯金が意味を持ちます。金利が大きく上昇した際などに、繰上返済をして、毎月の返済額が増えるのを抑えます。繰上返済には、「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」があり、総返済額を比べると、「返済期間短縮型」の方が有利です。しかし、「返済額軽減型」の繰上返済をすることで、毎月の返済額が増えるのを抑えることができます。予想以上に金利が上昇して、返済ができなくなることを避けられます。

(2)収入の割に、住宅ローンが少ない人

共働きで子供がいないために、収入はあるものの、それほど広い間取りが必要ないという人などが該当します。親から資金贈与を受けた、自宅の買換えであるなどで、それほどローンを組む必要がなかった人もこれに当たります。金利が上昇して、返済額が増えても家計を維持できるようなら、変動金利を選ぶことも可能です。返済額が少ないうちに、繰上返済のための資金を準備することもできます。

(3)住宅ローンの返済期間が短い人

15年、20年など、短い返済期間で住宅ローンを組む人もいます。その分、毎月の返済額は多くなりますが、借入残高の減少が早く進みます。借入残高が減少すると、金利が上昇した場合でも、毎月の返済額の増加はそれほど多くはありません。金利が2倍に上昇したとしても、毎月の返済額は2倍にまでは増えません。返済期間が短い住宅ローンは、金利上昇のリスクに対して、抵抗力があります。さらに、住宅ローンの返済方式で一般的な「元均等返済」ではなく、「元均等返済」を選ぶとよいでしょう。当初の返済額は多いのですが、これも借入残高の減少が早く進むので、金利上昇への抵抗力があります。扱っている銀行は多くはありませんが、検討する価値はあります。

上記をご覧いただくと、いずれも余裕をもって住宅ローンを組んだ人だということがわかるでしょう。変動金利と固定金利では、変動金利の方が、当初の返済額は少なくて済みます。そのため、多少背伸びをしてローンを組んだ人が、返済額の少ない変動金利を選ぶ傾向があります。しかし、そのような人は、金利が上昇して返済額がアップすると、たちどころに家計が行き詰ってしまいます。返済ができなくなり、自宅を差し押さえられてしまうことにもなりかねません。変動金利ということは、将来の金利上昇のリスクを抱えるということですから、余裕のない人は、たとえ当初の返済額が多くても、固定金利を選ぶ必要があります。このまま金利が上がらなければ、変動金利を選んだ方が良かったという可能性もありますが、まず大前提として、返済できなくなる事態を招かないようにしておかなければならないからです。

上記の3つに該当しない人は、固定金利を選ばなければなりません。しかし、上記に該当する人は、変動金利を選ばなければならない、というわけではありません。変動金利を選んでも問題ない、というわけです。変動金利を選んでも問題ない人でも、将来の返済額がわからず不安だという人は、固定金利を選んでもよいわけです。いつ金利が上がるかと、いつもハラハラするぐらいなら、固定金利を選んでおくとよいでしょう。固定金利は、リスクを銀行に抱えてもらうので、高い返済額は、安心料≠セと思えばよいのです。

石田様の場合は、いかがでしょうか。今回は詳しい状況を伺っていないので、これ以上は申し上げられません。しかし、上記のポイントを参考にしていただければ、どちらを選ぶべきか判断していただけることと思います。ご家族の皆さまが新しいご自宅で楽しい生活を送れるように、賢明な選択をされてください。

 

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