家計診断Q&A

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最近、金融機関から口座開設の勧誘が来ます。
新しい非課税制度ということですが、よくわかりません。


 

鈴木 暁子先生
(すずき あきこ)
プロフィール
口座は開設しておくことをお勧めします
口座開設する金融機関は慎重に選びましょう
NISA口座は、ご自身が何を優先するか、方針を持って始めることが重要です

太田 恭介さん(仮名 40歳)のご相談

最近、銀行や証券会社からDMが届くようになりました。新しい非課税制度ができるので、口座開設を勧誘する内容です。すでに証券会社には特定口座は開設しているのですが…。

太田 恭介さん(仮名 40歳)のプロフィール

家族構成    
妻 : 40歳 会社員
長男 : 10歳 小学4年生
長女 : 8歳 小学2年生
住居 : 持家(マンション)
住宅ローン返済中
金融資産 : 預貯金(約800万円) 個人向け国債(200万円)
投資信託(約200万円) 外貨MMF(約100万円)

一人一つしか開設できない非課税特定口座
何処で開設するかが重要なのでまずは情報収集から

1.現在届く口座開設の勧誘は、2014年スタートの新制度です

太田さん、こんにちは。最近届くDMの内容がよくわからないというご相談ですね。私のところにも同様のDMが届いていますよ。これはとても大事なお知らせです。

実は2014年1月から「少額投資非課税制度(通称:NISA)」がスタートするのですが、現在DMで届く口座開設の勧誘は、この制度の専用口座(以下、NISA口座)についてなのです。ではNISAについてご説明していきましょう。

太田さんは投資信託を保有されているのでご存知だと思いますが、現在、投資信託や株式を売却して収益を得られた時や、分配金や配当をもらった時は所得税・住民税で10%徴収されています。本来20%でしたが、軽減税率といって10%にサービスされているものです。これが2014年からは本則の20%に戻ります。つまり投資家の手取りが減ってしまうわけです。そのかわりNISAの導入によって、一定の投資額から得られた利益については非課税としてもらえるのです。

【NISAの概要】
1)日本に居住する20歳以上の人が使える制度
2)2014年から2023年まで、毎年100万円までの投資額から得られる利益について非課税
3)非課税の対象となるのは新規で購入した上場株式や投資信託など(預金や公社債、公社債投信などは対象外)
4)NISA口座の非課税期間は5年間(制度の継続は10年)
5)NISA口座の非課税枠は最大500万円

事例で見てみましょう。

例1)

2014年:100万円で株を購入
2015年:100万円で投資信託を購入
2016年:株と投資信託を50万円ずつ購入。2018年に株を売却し、20万円利益があった。
2017年:購入も売却もしなかった
2018年:60万円で投資信託を購入

この場合、2014年に購入した株の、2014年から2018年までに受け取った配当は非課税となります。同様に2015年に購入した投資信託の、2015年から2019年までに受け取った普通分配金も非課税です。

ただし5年間保有しつづける必要はなく、途中売却も可能です。たとえば2016年に購入した株を2018年に売却をして20万円利益が出た場合、非課税枠がなければ、4万円の税金とそれに対する復興特別所得税840円(税額の2.1%)が差し引かれ、手取り額が159,160円のところ、NISA口座では丸々20万円の手取り額となります。

この制度では、非課税にしてくれる年間投資額は100万円分ですが、それが5年間(図中2014年から2018年まで)できますから、最大500万円分の投資から得られる収益に対してまで非課税とすることができます。

ちなみに5年間の非課税期間が終了した時はどうなるのかということですが、原則は従来の特定口座などに時価で移管されます。

例2)

2014年に1株100万円の株を購入。非課税期間終了後、特定口座に移管。その際の時価は1株80万円だった。
この場合、特定口座で受け入れる際の取得価格は80万円となります。

ただし、一定の手続きによってNISA口座での保有を継続することも可能です(ロールオーバー)。

例3)

2014年に1株100万円の株を購入。非課税期間終了後、ロールオーバーによりNISA口座で継続保有。その際の時価は1株80万円だった。

この場合は、2019年度の非課税枠を使って80万円で受け入れます。したがって2019年度の非課税枠は残り20万円分ということになります。

かつては誰もが一定金額の非課税枠を利用することができましたが、現在は障がい者手帳を交付されている方など、一部の方しか使えません。そんな中で誰もが使える非課税制度は上手に活用すると大きなメリットとなります。

 

2.口座開設自体に損はありません。ただし金融機関選びは慎重に!

太田さんは現在2つの証券会社に特定口座を開設していらっしゃいます。また現在すでに投資経験もおありですので、今後も投資信託などを購入する可能性は十分ありますよね。そうであればNISA口座を開設することをお勧めします。

口座開設自体に費用はかかりませんし、口座を使うかどうかも自由です。しかし、いざ使いたい時に開設していないと非課税の恩恵を被ることができません。ですから開設はしておいたほうがよいでしょう。
ただし、どこの金融機関で開設するかは慎重に決めてください。というのも、NISA口座は従来の一般口座や特定口座のように複数開設することができず、1人一口座が原則だからです。金融機関の変更は可能ですが、いつでもできるわけではなく、4年間の勘定設定期間(図中オレンジ色の期間中とブルーの期間中)中は拘束されます。つまりチャンスは拘束期間が終了する際の2回だけです。

口座開設にあたっては、通常は免許証などで本人確認しますが、NISA口座は住民票が必要です。口座開設時には税務署から交付された非課税適用確認書の提出が必要になるのですが、この確認書の交付申請書を住民票と共に金融機関に提出しなければなりません。このように金融機関変更は非常に面倒で制約が多いのです。ですから、原則金融機関変更はしないつもりで開設する金融機関を選びましょう。

ポイントとしては、NISA口座で扱える商品が多いこと(投資信託や外国株式などは金融機関によって扱いが違うため、購入できるところとできないところがあります)、手数料などのコストが低めのところなどを基準に検討してください。
ここまではメリットをご説明してきました。しかし重要な留意点もあります。

 

3.非課税という恩恵だけに目を奪われないようにしましょう

NISA口座は留意点も多いです。しっかり理解しておかないと思わぬ損失を被ることもあるので注意してください。

1)特定口座や一般口座などと損益通算できない

従来の特定口座や一般口座であれば、口座間の損益通算が可能です。NISA口座では、利益が出た時は非課税ですので問題ありませんが、損失が出た時、特定口座などと損益通算ができません。

2)NISA口座で出た損失は損失の繰り越し控除もできない

NISA口座で出た損失はなかったものとみなされます。しがたって損失の繰り越し控除もできません。

3)非課税枠の未使用分は繰り越しできない

再度、例1をご覧ください。2017年は何も購入していないので100万円分の非課税枠が、同様に2018年は40万円分の非課税枠が未使用となっています。しかし非課税枠の未使用分は、翌年以降に繰り越すことができません。

つまりNISA口座は、利益を出した時と、損失を出した時では雲泥の差があるということを理解しておいてください。

 

4.おわりに

NISA口座は大きな利益を上げるほどメリットは大きくなりますが、逆に大きな利益を上げられる商品というのは一方でリスクも伴います。
毎年配当や分配金を非課税で受け取り、非課税期間が終わる頃に投資信託や株が大きく値上がっていたので売却。その利益も非課税だった…というのが理想形ですが、保有期間が長いほど価格変動リスクは大きくなるのが悩ましいところです。これが裏目に出て損失を出した場合は救われません。これをどのように受け止め、どのような商品を保有するかが、投資家個々人の価値観次第となります。

これから始まる制度ですので、正直なところ私自身も使い勝手がまだわかりません。ただ、情報をいろいろチェックしていると、金融庁としては、公社債投信も対象とする税制改正を要望する動きもあります。貯蓄から投資へ促すきっかけとしたい制度ですので、新聞やニュースで今後の制度動向にもしっかりアンテナを張っていてください。

まだ十分時間はありますので、まずは口座開設する金融機関を決めるための情報収集に専念していただくとよろしいかと思います。

 

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