家計診断Q&A

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息子が姉夫婦の養子となり将来不動産を相続します。
相続税対策と不動産の良い活用法は?


 

鈴木 暁子先生
(すずき あきこ)
プロフィール
  • 不動産の活用は資金プランとビジョンが重要です
  • 法律関係はできるだけシンプルに、税の減額制度の活用も検討しましょう
  • 相続税対策は長い目で考えましょう

田村 良子さん(仮名 66歳・自営業)のご相談

一昨年、次男が20年前に一人息子を亡くした実姉(81才)の養子になりました。 姉夫婦は、埼玉県に200坪の土地に鉄筋(築約50年)の建物を所有し、現在は賃貸しております。その土地は将来次男が相続することになります。相続したら姉の生命保険で相続税を支払い、その土地を担保に何戸かの賃貸住宅を建てることを考えているようです。これ以外になにか良い運用方法があるでしょうか? なお、現在の賃貸物件をどうするかはまだ話し合っておりませんが、撤去(退去)の方向になるかと思います。

田村 良子さん(仮名 66歳・自営業)のプロフィール

家族構成 : 本人
  夫 太郎(66歳・自営業)
  長男 和也(36歳・自営業)
  次男 達也(34歳・自営業)→良子さんの姉の養子となっている
その他 : 1.良子さんの姉夫婦は不動産収入と年金で生活できている。
  (達也さんの扶養にはなっていない)
2.ご相談の対象の土地・建物の名義は養父様3分の2、養母様3分の1
3.相続税の控除枠の関係で良子さんが姉と養子縁組するか検討中。

目先の節税に囚われて拙速な取組は禁物。
長期的な視点を持って検討を。

1.不動産活用方法は資金力と長期的視点で考えましょう

田村さん、こんにちは。相続時の基礎控除が変わり、相続に関して意識する人は急激に増えています。特に首都圏に戸建のマイホームを保有されるご家庭は、従来は大丈夫だったとしても改正後は少なからず相続税の支払いの可能性があり、人ごとではすまなくなっていますよね。

お姉様ご夫婦が築いた資産を引き継ぐことも大切ですし、節税を考慮しても養子縁組というのは大きな決断だったかとお察しいたします。まずは相続後の不動産活用について考えてみましょう。

200坪の土地というと活用し甲斐もありますが、一般的なケースとしては以下のようなプランが考えられます。

  1. 複数の戸建住宅、あるいは1棟のアパートやマンションなど賃貸物件を建築
  2. 通賃貸併用住宅を建築
  3. レンタル倉庫
  4. 駐車場、駐輪場
  5. 定期借地権事業

200坪もあると、賃貸併用住宅というだけでなく、ファミリー向けの戸建賃貸住宅や1棟建てのアパートやマンションなど、物件の建築形態も選択肢が多そうです。最近はレンタル倉庫として活用するケースも増えています。
比較的手っ取り早くできるのは駐車場、駐輪場です。整地してアスファルトを流すというように、建物を建てるよりはるかに短期間でコストも大幅に軽減できます。

また「定期借地権」というのをご存知でしょうか?定期借地権とは、借地権の更新がなく、契約満了時には土地が返還されるという借地権です。住居用地として利用できる一般定期借地権(50年以上)や、住宅事業には利用できない事業用定期借地権(10年以上50年未満)などがあります。200坪もあると事業用の可能性もありますね。ただしこれはその土地に建築したいという相手があっての話となります。

さまざまな選択肢があると思いますが、ポイントのひとつとして予算との兼ね合いがあります。昔は土地を担保に融資してもらうことが普通でしたが、現在は融資の条件が非常に厳しくなり、「土地を担保に」というだけでは資金を借り入れることが難しくなっています。
特に自営業の場合は会社員よりも審査が厳しく、ご本人の収入(返済能力)がある程度安定していないと相応の借入れは難しいと思った方が良いでしょう。

現在、達也さんは自営業を始めたばかりでマイナス収入とのこと。もちろん今すぐに相続が発生するわけではありませんが、達也さんご自身の経済力をつける(事業を安定させる)ことも急務といえます。

ふたつめのポイントとして、長期的な視点も必要だということです。たとえば一度建物を建ててしまうとそう簡単には壊せません。将来、売却して一時金を得たいということが出てくるかもしれません。また、住宅の貸付となると、いわゆる大家さんとして物件のメンテナンスなど管理義務も発生しますし、空家(空室)リスクの対応も検討する必要があるでしょう。

収入的には賃貸物件のほうが大きいかもしれませんが、駐車場であれば初期費用ははるかに小さくて済むので、借入金も少なく負担感が違います。早い時点で損益分岐を超えられるかもしれません。まずは駐車場からスタートし、ある程度自己資金が準備できたら、そこで賃貸物件を建てるという段階的な使い方をするのも悪くないと思います。
ご参考までに、たとえば“タイムズ”や“三井のリパーク駐車場”などは、土地活用や駐車場経営についてなどの相談にものってくれるようです。

<タイムズ>
http://www.times24.co.jp/inquiry/faq/st.html

<三井のリパーク>
http://www.repark.jp/lp/01/index.html

このように収益面だけでなく、借入能力、メンテナンス、最終的にこの土地をどうしたいのか、そして駐車場にせよ、賃貸住宅にせよ、どれくらいの需要があるかをリサーチしておくなど総合的に検討した上で活用方法を決めていただきたいと思います。


2.税金対策であれば不動産の評価を下げる方法もあります

収益物件とするかどうかは別として、相続税対策のための節税ということであれば、不動産の評価を下げる方法もあります。最もメリットがあるのは、「小規模宅地等の特例」です。 小規模宅地等の特例というのは、被相続人が相続開始の直前まで事業や居住のために使っていた宅地のうち、一定の面積までについては、相続税の課税価格を減額してくれるというもので、不動産の評価を下げるには非常にメリットがある制度です。

小規模宅地等の特例には、居住用や事業用、貸付事業用などがあり、それぞれ要件や割合が異なります。ちなみに貸付事業用といっても事業規模で行っているもののほか、事業的規模でない不動産貸付でも適用の対象となります。貸付事業用の場合は200uまでの評価が50%減です。

たとえば、現在200坪の土地は貸付に利用されていますが、養父様が確定申告をされているのであれば、養父様の相続において養父様の持ち分のうち200u(約60坪)までが評価を50%減額してもらえるということです。 たった200uについてしか減額されないのかと思われるかもしれませんが、相続財産の評価で多くを占めるのはやはり不動産ですので、たとえ一部であっても利用できれば大きな節税となります。良子さんが養子となった場合、増える基礎控除額は600万円ですが、この制度を使えれば評価減になる金額は600万円以上のはずです。

さらに持ち分は養父様が3分の2、養母様が3分の1とのこと。したがって将来養父様、養母様と二度の相続が発生することになります。この場合、ケースによっては養父様、養母様の相続それぞれにおいて、小規模宅地等の特例を使えることもあります。

ただし、この制度の利用は継続して事業を行うなど要件が非常に厳格です。したがって必ず税理士にご相談ください


3.相続は数次で考えてください

相続税の心配というのは、贅沢な悩みかもしれませんが、ご本人にとっては切実な問題ですよね。特に基礎控除額が4割減となったため、場合によっては良子さんもお姉様との養子縁組を検討するかもしれないとのことですが、相続というのは、養父様の相続、養母様の相続、実父母でいらっしゃる太郎さん、良子さんの相続、将来的には達也さんの相続というように、一つの相続では終わりません。したがって、数次(一次、二次、というように)で考えることが重要です。

たとえば、達也さんは養父母様がいらっしゃるとはいえ、太郎さん、良子さんが亡くなられた時の相続人としての地位は残っています。つまり、養父母様の財産を全部相続できる上、太郎さん、良子さんの相続でも財産を得ることができるとなると、法定相続分で考えた場合、和也さんが相続できる分とのバランスが大きく違ってくる可能性があります。

達也さんが「実家の相続は俺は放棄するから全部兄貴に」と思っていたとしても、いざその時に達也さんの事業がうまくいっておらず、もらえるものはもらいたいと思うかもしれません。あるいは達也さんに奥様がいた場合「権利は主張しても良いのでは」とお考えになるかもしれません。

あるいは良子さんがお姉様の養子になられた場合、良子さんは、太郎さんの配偶者であり、達也さんの母であり、姉弟であるといった非常に複雑な関係となります。それぞれの生活や気持ちの面では何も変わらないと思いますが、法律上は大きな違いがあり、特に相続に絡んでくるのです。

その時の相続の節税に目を向けるあまり、法律関係をいろいろいじっていくと、相続人が増えたり相続割合がアンバランスになります。ちなみに相続人が増えるということは控除も増えますが、相続の手続きは面倒になるということでもあります。養子縁組も一度縁組すると簡単には解消できません。

まだ相続も発生しておらず、平時でいられるうちは誰もが余裕のある考え方ができます。しかし将来和也さん、達也さんがそれぞれ家庭を持ち、家族を養っていかなくてはならなくなれば、兄弟2人だけの問題ではなくなります。悲観的なことを並べていると思われるかもしれませんが、相続は本当に何が起きるかわかりませんし、実際相続が発生すると、思い通りにはならないケースをいくつも見聞きしています。

節税はもちろん重要ですが、法律関係をシンプルにしておくことがモメない相続の基本ですし、家族がモメないということはお金に替えがたいものでもあることを意識しながら賢い節税対策をしてください。場合によっては税理士、弁護士、メインバンクなどにご相談しながら進めるとよろしいかと思います。


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