家計診断Q&A

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来年、長男が高校入学で教育費が重くなります。
老後資金の準備に住宅ローンの繰上げ返済などやるべきでしょうか。


 

井上 信一先生
(いのうえ しんいち)
プロフィール
教育費以外の、現状の年間収支を維持することを意識しましょう
老後生活にゆとりを生む手段としても繰上げ返済は効果的です
“できるだけ長く収入の入る仕組み”をつくることが老後資金準備のポイントです

有村 由佳さん(仮名 46歳 会社員)のご相談

来年に高校受験する長男が私立を希望しています。親としても子どもは2人とも、自宅から通える私立大学まで行かせたいと思っています。
そこで相談なのですが、教育資金や自分達の老後資金はどのくらい必要なのでしょうか?貯蓄の運用をしたいとも思っていますが、どう考えていけば良いのか教えて頂きたいと思います。
現在、貯蓄は1,700万円、住宅ローンの残高が1,100万円強あり、年間の貯蓄はだいたい200万円弱といった状況です。世帯年収は今後増える見込みはありません。
住宅ローンは定年頃に完済したいと思っていますが、いま、繰上げ返済をするべきかどうかも悩んでいます。

有村 由佳さん(仮名 46歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 夫(46歳 会社員)
妻(46歳、会社員)
長男(13歳)
次男(10歳)
世帯年収 : 980万円
住居形態 : 持ち家

<現在の住宅ローンの概況>

  ローン(1) 元利均等返済 ローン(2) 元利均等返済
年間返済額 79万2,960円 18万420円
金利種類 20年固定型 3年固定金利選択型
現在の適用金利 2.65% 1.6%
残りの返済期間 12年 25年

今より支出がいくら増えるかで収支を意識しながら、
長期的に家計に有利なアクションを積極的に!

有村様、このたびはご相談を頂きましてありがとうございます。
これから先の色々なことを考えていくためには、年間収支や貯蓄残高、または住宅ローン残高等の推移を総合的に捉えていくことが大切です。以下をご参考になさってください。

想定内の収支に収めれば、60歳時までに貯蓄を3割強は増すことも可能です

有村家の現在の年間収支は200万円弱と、収入の2割を堅実に貯めておられます。しかし今後は、お子様の教育費や小遣い等を含む生活費が増えるものと予想されます。
そこで、現状の年間収支に対しこれらの増加要因がどう影響し、貯蓄残高がどう推移するのかを簡易的に試算してみます。

なお、教育費については、学校外教育費を含む下記の統計データを参考にしました。

1年間にかかる子どもの教育関連費
  公立 私立 (私立文系) (私立理系)
小学校 30.4 146.5
中学校 46 127.9
高校 39.3 92.3
大学 初年度 81.8 131.6 115.3 149.1
次年度以降 53.6 104.8 90.2 122.6
       (万円)
年差額
-
15.6
46.3
56.8
30.3

※小学校〜高校は学校外活動費を含む学習費総計
※年差額は、公立小中学校→私立高校→私立理系大学と進んだ場合の年間学習費の差額を計算
※出典:文部科学省「子どもの学習費調査(平成22年)」、大学は平成24年の文部科学省調査より

表中の“年差額”とは、中学まで公立、高校で私立、大学は私立理系に進むという有村家の希望コースで、各進学段階での年間教育費の増加額を計算したものです。例えば公立中学から私立高校に進学すると年間46.3万円の教育費が、中学の時より増えることを意味します。私立理系大学に進学すると、入学年度には56.8万円、次年度以後は30.3万円が、さらに高校の時より増えます。
家計への教育費の影響を考える場合は、「単にいくら必要か」よりも、このように「進学するとそれ以前よりいくら増えるか」と考えると実感が湧きやすいでしょう。

一方、日常生活費の増加額は任意で設定しています。
これら前提条件で試算したものが以下の推移予測です。

【60歳時までの年間収支・貯蓄残高とローン残高の推移予測】

家族の年齢 (1)現状の
年間収支
(2)年間支出の増加額 修正後の
年間収支
貯蓄残高 住宅ローン年間返済額 推定住宅ローン残高
長男 次男 長男
教育費
次男
教育費
生活費
全般
ローン
(1)
ローン
(2)
ローン
(1)
ローン
(2)
合計
46 46 14 11 180       180 1,700 79 18 814 371 1,185
47 47 15 12 180       180 1,880 79 18 756 359 1,115
48 48 16 13 180 46 16 36 82 1,962 79 18 696 347 1,043
49 49 17 14 180 46 16 36 82 2,044 79 18 634 334 968
50 50 18 15 180 46 16 36 82 2,126 79 18 571 321 892
51 51 19 16 180 103 62 108 -93 2,033 79 18 506 308 814
52 52 20 17 180 77 62 108 -67 1,967 79 18 439 295 734
53 53 21 18 180 77 62 108 -67 1,900 79 18 371 282 653
54 54 22 19 180 77 119 108 -123 1,777 79 18 301 268 569
55 55 23 20 180   92 72 16 1,793 79 18 228 254 482
56 56 24 21 180   92 72 16 1,809 79 18 154 240 394
57 57 25 22 180   92 72 16 1,824 79 18 78 226 304
58 58 26 23 180       180 2,004 79 18 0 211 211
59 59 27 24 180       180 2,184   18   197 197
60 60 28 25 180       180 2,364   18   182 182

※家族の年齢表記は年度末時点での年齢としますが、生年月日が不明であるため異なっている場合があります。
※修正後の年間収支 = (1)現状の年間収支 − (2)年間収支の増加額
  ((1)現状の年間収支を180万と家庭しています。)
※貯蓄残高 = 前年の貯蓄残高 ± 修正後の年間収支(利息や運用益等は考慮しない場合)
※推定住宅ローン残高 : 任意設定のもと試算したローン元金残高

【60歳時までの年間収支・貯蓄残高とローン残高の推移予測】を別ウィンドウで表示 >>

試算では現状の年間収支を180万円と、やや辛めの結果になるよう見積もっています。 ですが、長男の大学進学と次男の高校進学が重なる時期は厳しくなるものの、60歳時には概ね貯蓄を3割強増やすことも可能そうです。

実際には、収入の減少や増税等による支出の増加も考えられます。ですが、教育費等を除く経常的な家計収支は、できるだけ現状水準を“キープ”するよう心掛けてください。
家計管理はできるだけシンプルな方法で、継続して意識することが大切です。
ムリのない範囲で貯めたい額を給与天引き等にしてしまい、手元に入る残りのお金だけでやりくりするよう努めれば、いつしかそれが習慣になるものです。

なお、一時的な収入(こども保険の満期保険金等)や一時的な支出(車の買い替え等)は考慮していませんので、適宜、必要に応じて加減してください。

 

ローンの繰上げ返済を検討する場合は利息軽減の大きいものを優先的に

住宅ローンの状況は、頂いた限りの情報では正確には把握できませんが、現在の年間返済額と金利、20年固定金利型であるローン(1)の残済年数が12年であることから、借入時期を8年前として逆算し、下記のように仮設定しました(前述の表は下記設定を基に試算)。

ローン(1)の当初の借入れ条件
借入金:1,230万円 返済期間:20年 金利:2.65%
ローン(2)の当初の借入れ条件
借入金:462万円 返済期間:33年 金利1.6%

この条件であれば、2つのローンを合わせた今後の返済総額は約1,500万円(ローン(2)の金利が変わらない場合)、対して現在の借入残高が約1,186万円ですので、差し引き314万円が現時点で全額繰上げ返済した場合の利息軽減効果となります。ちなみに60歳時に全額完済する場合の利息軽減効果は約30万円です。

もちろん、現時点でローンを全額完済するのは現実的ではありません。
ですが、ほかにお金を使う用途がないのであれば、老後生活にゆとりを生むためにも、一定額の繰上げ返済を早めにおこなう価値はあるでしょう。

なお、繰上げ返済をおこなう場合でローンが複数あるときは、利息軽減効果の大きいものを優先するのがポイントです。厳密には金融機関で試算して比べるのが確実ですが、金利の高いもの、残高の多いもの、残済期間の長いもの、そして将来の金利上昇リスクのあるものを優先するとよいでしょう。

有村さんの場合、ローン(2)は3年ごとに適用金利が変わるので将来の金利上昇リスクがあり、かつ残済期間も長いです。しかし、借入残高は多くないと思われ、仮に金利が上がっても毎月等の返済額に与える影響は限定的といえそうです。
一方、ローン(1)の金利は高いので、利息軽減効果も相対的に大きくなります。
繰上げ返済による1年あたりの利息軽減効果(年利の効果)は、ローンの金利(年利)にほぼ等しくなるからです。 よって、ローン(1)を優先して繰上げ返済を行い、早期完済を目指してはいかがでしょうか。

 

老後資金の必要額は公的年金の不足額を基準に考えましょう

老後資金の柱は、生きている限り受給の続く公的年金であることは確かです。
とはいえ、元気なうちはそれだけでは充分とはいえないでしょう。
貰える公的年金の目安は「ねんきん定期便」で知ることができますので、その額に、「あといくらあれば満足できるか」と考えていくのが、老後資金を考える第一歩となります。

有村家の場合、前述の試算によれば60歳時の貯蓄残高は2,800万円程度を見込めます。運用益等を考慮せず、例えばこれをその後30年間で均一に取崩すと考えると、年間で約93万円が、夫婦の退職金や公的年金に上乗せできる毎年の老後資金と計算できます。
しかし、これだけでは心許ないと思われるなら、もうひと工夫が必要です。

考えてみると、老後に多額のお金を一度に必要とする機会は多くはないでしょう。ならば、これからの毎年の貯蓄(年間収支の額)は、定年後に毎年満期を迎えるような仕組みを作っておけばよいのです。
例えば、46歳から60歳まで14年間ありますので、14年後に満期がくる金融商品に預けます。47歳の時も同様にすれば満期は14年後の61歳に訪れます。これを60歳まで継続すれば、60歳で預けた金融商品の満期は74歳です。このような工夫をすれば、60歳から74歳までに満期を迎えた資金は、老後生活に毎年充てることができます

肝心の金融商品については、毎回変えてみても良いと思います。
有村さんがいま運用に関心があるのなら、気になる投資商品を選んでみましょう。
ですが、運用する資金は“今年の分”に抑えておくことが重要です。
資産運用は大きな果実を期待できる反面、大きな損失を被る可能性もあります。
ベストな投資先は、実は運用のプロでも見定めることが困難です。
よって、一度に多額の資金を投資するのではなく、少額ずつ、投資時期や投資対象を分けておこなうことが失敗を軽減するために有効な策なのです。

ところで、老後の大きな不安の1つが物価の上昇といえます。
物価上昇と通貨安(円安)は密接な関係にありますので、こうした可能性に備えて外貨資産を少しずつ増やしていくことは理に適っていると思われます。
例えば、毎月外貨に投資し、1年間で貯まった外貨を運用期間の長い別の外貨建商品で運用する、といった方法なども考えられるかもしれませんね。

 

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