家計診断Q&A

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72歳でそろそろ相続のことを考える様になりました。
相続税があまりかからないようにする方法を教えてください。


 

村井 英一先生
(むらい えいいち)
プロフィール
  • 平成27年から、相続税が実質的に増税となりました
  • 非課税となる制度を利用して、財産を渡すことができます
  • 評価額を下げることによって、相続税を少なくすることができます

渡辺 明さん(仮名 72歳 無職)のご相談

今年から、相続税が増税になると聞きました。資産家というわけではありませんが、首都圏に一戸建てのマイホームがあります。できれば子供たちに負担をかけないようにしたいと思いますが、どのような対策があるのでしょうか?

渡辺 明さん(仮名 72歳 無職)のプロフィール

家族構成 
本人: 明さん(72歳 無職)
妻: 正子さん(70歳 無職)
長男: 亮さん(41歳 結婚して別居)
長女: 恵さん(38歳 結婚して別居)

相続税を少なくすることが主目的とならないように
上手に遺産を遺せる方法を選んでください。

1.非課税枠の縮小により、相続税が増税となります。

渡辺様、こんにちは。
ご承知のように、平成27年1月から相続税が実質的に増税となりました。
今までは、相続税というと、いわゆる“富裕層”だけが対象となっていました。しかし今後は、マイホームを保有している人は誰もが一度は考えなければならない問題となりました。まずは相続税がかかるのかを確認して、かかりそうな場合には対策を検討することをお勧めします。

今回の改正では、相続税の「基礎控除額」が縮小となりました。この点が多くの人にかかわる改正点です。「基礎控除額」とは、相続税の非課税枠です。亡くなった人の財産がこの範囲内であれば相続税はかかりません。超える場合は、超えた分が課税の対象となります。

<平成26年12月まで>
  相続税の基礎控除額=5,000万+(1,000万円×法定相続人の数)
<平成27年1月から>
  相続税の基礎控除額=3,000万+(600万円×法定相続人の数)

「法定相続人」とは、亡くなった人の財産を相続する権利がある人のことです。例えば、妻と子供2人がいる夫が亡くなった場合、法定相続人は3人となります。

その場合、基礎控除額は平成26年までは
5,000万+(1,000万円×3)=8,000万円

ですので、8,000万円までなら相続税がかかりませんでした。かかる場合も、8,000万円を超えた部分が対象です。

しかし、平成27年からは
3,000万+(600万円×3)=4,800万円

となり、相続財産が4,800万円を超えると、相続税がかかります。相続税がかかる人が増えるほか、相続税の金額も増えることになります。

もっとも、この非課税枠とは別に、配偶者は「法定相続分」または「1億6,000万円」までは相続税がかからないようになっています。この点を考慮すると、相続税が心配なのはご夫婦のうちの“2人目の相続”の時といえます。

まずは、現在のご自身の財産がどれくらいあるか、計算してみましょう。今後、評価額が変わるものもありますので、おおよそで構いません。都心部にマイホームがある場合などは、基礎控除額を超えることも予想されます。その場合は、早めに対策を検討する方がよいでしょう。

かなり多くの資産がある場合は、税率も上がります。基礎控除額を差し引いた後の法定相続人の取得金額が2億円超〜3億円以下の場合であれば、40%だったのが45%となるなど、相続税の負担は大きくなります。


2.非課税枠を活用して、資産を渡す

相続税の負担を減らす、またはかからないようにするための相続税対策には、いろいろなものがあります。ここではいくつかをご紹介いたします。ご自身、ご家族の状況を踏まえ、できそうなものを検討してみてください。

1)毎年110万円の範囲内で贈与をする

資産を贈与した場合は、贈与税がかかり、これは相続税よりも高くなります。しかし、非課税の枠があり、その範囲内であれば贈与税がかからずに資産を渡すことができます。これを続けていくと、相続時に財産を少なくすることができます。
ただし、毎年まったく同じ金額を贈与していると、約束をした年にすべての権利を贈与したとして、贈与税がかかりますので、注意が必要です。また、本人が自由に使える状態にならなければ贈与したことになりませんので、この点も注意が必要です。

2)住宅資金として贈与する

子供が住宅を購入するための資金援助であれば、毎年の110万円とは別に非課税の枠が設けられています。資金援助で相続財産を減らせば相続税対策にもなります。もともとは景気対策として導入された制度で、非課税の枠が毎年異なります。よく確認の上、利用しましょう。

※2015年中の住宅取得資金の贈与なら1,000万円(2015年度税制改正による予定額)までは非課税です。

3)孫の教育資金を一括で贈与する

平成27年の12月までは、孫などに教育資金を一括で贈与し、専用の口座に預けておくと1,500万円まで贈与税がかからない制度があります。この制度を利用して資金を贈与するのも、相続財産を減らすことになります。ただし、口座からの引き出しは教育資金に限られており、孫が30歳になるまで残ってしまった分については贈与税がかかってしまいます。今年の税制改正では、結婚・出産・育児のための資金の贈与についても同様の制度が設けられる予定です。

4)生命保険に加入する

生命保険の死亡保険金は相続税の対象です。ただ、保険金専用の非課税枠があり、その範囲については相続税がかかりません。

死亡保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数

この枠の利用のために保険に加入する人も少なくありません。一時払い終身保険などが、この制度の利用に向いています。

5)子供の数を増やす

養子縁組をして、法定相続人の数を増やせば、基礎控除額が大きくなりますので、相続税対策になります。ただし、基礎控除額の算定に含めることができるのは、実の子供がいない場合で2人まで、いる場合は1人までとなっています。
しかし相続税対策にはなっても、それぞれへの相続額は相対的に減少します。


3.資産を評価額の低いものにして、相続税を減らす

相続税は、相続財産の金額から計算されます。つまり、財産の金額が低ければ相続税が少ない、またはかからないということになります。

1)なるべく不動産で遺すようにする

預金や株式などの金融資産は、「いくら」ということがすぐにわかります。しかし、不動産は「いくら」であるかの評価が難しい面があります。相続税を計算する上では、評価額の求め方が決まっています。実際の価格よりも低めに評価されることが多いので、相続税対策になります。特に、アパートや賃貸マンションのように、他の人が住んでいると評価額は低くなります。相続税対策として、アパート経営やマンション投資をする人が増えています。ただ、増えているということは、安定した利益を上げることが難しくなっているということでもあります。相続税対策にはなっても、毎年赤字となってしまっては元も子もありませんので、十分な調査と計画が必要です。

2)自宅を子供が引き継ぐようにする

同居の子供やマイホームを持っていない子供が、亡くなった人の自宅を相続した場合は、自宅の評価額を8割下げる制度があります。自宅の評価額が本来の2割となるわけで、大きな相続税対策となります。平成27年から、適用できる上限の面積が330m2と拡張されました。ただ、子供がそれぞれ自分の自宅を購入してしまうと、この制度は使えません。子供が自宅を購入するかは、子供家族の希望次第ですが、考慮には入れておきたいところです。貸しアパートについても一部、評価を下げることができるようになっています。

以上、相続税を少なくする、あるいはかからないようにするための対策を、いろいろとご紹介してきました。利用できそうなものがあれば、検討するとよいでしょう。ただし、税金を少なくすることがすべてではありません。無理をしない範囲で検討してみてください。


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