家計診断Q&A

家計診断Q&A

老後に備えて数千万円の貯金が必要と聞きます。
本当にそんなに必要なのでしょうか?

今回、回答いただく先生は…
 

宮塚 達夫先生
(みやつか たつお)
プロフィール
  • 年金予想額を調べてみましょう。
  • 少しでも長く働きましょう。
  • 老後の収入に見合った生活スタイルを考えましょう。

本田博さん(仮名 45歳 会社員)のご相談

老後の資金は3000万円貯めなければならない!などと聞きますし、年金額の減少など耳にすると不安ばかりになります。本当のところ、最低どれくらい必要なのでしょうか?

本田博さん(仮名 45歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 本人(45歳):会社員
  妻 ひろみ(43歳):パートアルバイト
長男 翼(15歳)
長女 愛(12歳)

本人収入:約550万円
妻 収入:約100万円
貯蓄:約1,000万円

どんな老後生活を送りたいかで必要な貯蓄額は変わります。
高望みをしなければ問題ありません。

本田さんが思われるように老後資金を心配し、貯蓄に不安を感じている方が本当に多く、私が受ける相談の中でもかなりの割合を占めています。そんなとき私は「多いに越したことはないけれど、何かあった時の緊急資金さえあれば大丈夫です」と回答しています。
何かあった時の緊急資金だけなんて、無責任な!と思われるかもしれませんが、これからその根拠を見ていきましょう。

3,000万円の根拠

本田さんも耳にした「老後生活に備えるためには3,000万円、あるいは4,000万円の貯蓄が必要だ」という話がよく出てきます。この金額ってどこから出てきたのでしょうか?
まず老後の収入はいくらくらいになるのでしょうか?ここでは年金収入のみだとして考えてみます。 本田さんのように会社員の場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることができます。35年間勤務し、その間の平均年収が500万円だったとすると、本当にザックリではありますが、老齢厚生年金が88万円、老齢基礎年金78万円、合計166万円になります。
また奥さまの年金が満額の老齢基礎年金のみだとすると78万円で、夫婦合わせて年間244万円という金額が目安になります。実際は税金も引かれますが、あくまでもザックリ考えると月々約20万円の収入ということになります。
もっと正確に知りたいのであれば、日本年金機構の「ねんきんネット」(http://www.nenkin.go.jp/n_net/)を
利用すれば将来受給できる年金見込額を簡単に知ることができるので、是非利用してみてください。

支出はどうでしょうか?
3,000万円とか4,000万円という金額が出てくる理由がここにあるのです。
生命保険文化センターの平成25年「生活保障に関する調査」では「ゆとりある老後生活費」は平均で35万4千円となっています。
ここでもザックリ計算してみると、毎月の不足額は
35万4千円−20万円=15万4千円
になります。1年だと
15万4千円×12カ月=184万8千円
65歳から90歳までの25年の間に必要なお金は
184万8千円×25年間=4,620万円

このような計算で、65歳までにいくらいくら(蓄えが)必要だという話になってくるのです。

一方、同じく生命保険文化センターの平成25年「生活保障に関する調査」によると、「夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費」は平均22万円となっており、この金額を上記計算式に当てはめてみると

毎月22万円−20万円=2万円
1年で、2万円×12カ月=24万円の不足
25年間で、24万円×25年=600万円
600万円の貯蓄があればいいことになります。

さらに人事院が公表した「平成27年4月の標準生計費」では2人世帯の生計費は約15万9千円となっています。「平成27年4月の標準生計費」とは「家計調査」(総務省)等に基づき、国民一般の標準的な生活の水準を求めるために算出された金額ですが、ギリギリの生活を送るのなら年金収入でも何とかやっていけることがわかります。

すなわち老後生活に必要な貯蓄金額というのは、老後毎月いくらで生活していくかにかかっているため、一律にいくら必要だとは言えないのです。因みに生命保険文化センターの平成25年「生活保障に関する調査」における「ゆとりある老後生活費」と「夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費」との違いは

1位 旅行やレジャー
2位 趣味や教養
3位 日常生活費の充実
4位 身内とのつきあい
5位 耐久消費財の買い替え
6位 子どもや孫への資金援助
7位 隣人や友人とのつきあい

となっています。

長年家庭のために一生懸命努力してきたご夫婦です。老後は旅行や趣味に時間を費やして、豊かな生活を過ごしたいのは誰もが同じです。要はどこを充実させてどこを削るかを、その時の貯蓄額と見比べて計画的に支出していけばいいのです。勿論無い袖は振れないので、あくまでも計画的に実行していきましょう。

今後の支出計画を考えれば大丈夫

本田さんご家族の場合、現在の貯蓄額、年収から考えるとおそらく現在年間400万円前後で生活費をやりくりしているのではないでしょうか?年間400万円だと毎月約33万円の生活費になりますが、お子様の食費や教育費なども含めてその金額なのです。お子様のために夏休みには家族旅行だって行っているはずです。将来お子様が独立されて、ご夫婦だけになれば当然支出もグンと減るはずです。老後生活をスタートする時点で、今後の支出計画を考えれば大丈夫だと思います。

もっとも、少しでも豊かな老後生活を送るために、少しでも多くの貯蓄があった方がいいことは間違いありません。そのためにはどうすればいいのでしょうか?本田さんご家族の場合、今後愛さんが大学を卒業するまでの10年間は一番出費が増える時期なので、いままでと同じペースで貯蓄することは難しいと思われます。逆に減っていくかも知れません。でも心配しないでください。10年後ご主人はまだ55歳、そこから定年までの間にハイペースで貯蓄できるはずだからです。

そして老後生活を豊かにする最大のコツは、少しでも長く働くことです。前述したように老後生活の充実は毎月の収入にかかっています。地域差もありますが、最近は高齢者向けの求人が増えてきているので、根気よく探せば定年後でも仕事が見つかるはずです。毎月5万円の収入があれば、生活の充実度がグッと増すはずです。シルバー人材センターに登録するという手段もあります。働けば健康にもいいですし、ボケ防止にもなって一石二鳥ではないでしょうか。

まとめ

世間では少子高齢化社会のさまざまな問題点が指摘されており、将来の年金制度の存続自体を危惧するような報道も飛びかっています。貯蓄が最低いくら必要だという情報しかりです。しかし、あくまでも老後生活はご家庭ごとに違ったスタイルがあります。早くから備えをすることは大切なことですが、情報に惑わされないでください。できる範囲のことをコツコツと続けていった貯蓄額に見合った老後生活を計画的に送ればいいのではないでしょうか。

それでも心配だという方にはキャッシュフロー表の作成をお勧めします。キャッシュフロー表とは将来のお金の出入りを予想するもので、毎年の貯蓄額推移をシミュレーションすることができ、インターネットで無料ダウンロードできるものが沢山あるので、利用してみるといいでしょう。ただしあくまでも予想だということを忘れないことが大切です。よく貯蓄額の推移を見て、自分の老後は真っ暗闇だと悲観してしまう人がいますが、今回述べたように老後の生活スタイルはまちまちで、何とかなるものだということを忘れないでください。

 

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