家計診断Q&A

家計診断Q&A

将来、父の認知症が不安です。
介護しながらでも貯蓄は可能でしょうか?

今回、回答いただく先生は…
 

村井 英一先生
(むらい えいいち)
プロフィール
  • 有料老人ホームに入居すると、貯蓄がマイナスとなる可能性があります。
  • 介護費用がかかる時期と教育費がかかる時期が重なることが問題です。
  • さまざまな状況がありますので、今できる家計のムダの見直しから手がけましょう。

吉田誠さん(仮名 33歳 契約社員)のご相談

認知症の症状などについて最近知りました。父は今のところ問題ありませんが、将来的には不安です。もし認知症になった場合、養いながらの生活でも、現在の年収で生活・貯蓄も可能でしょうか?
・父に私たち以外の身寄りはおりません。
・子供は大学まで卒業させたいと思っていますが、あくまで希望です。

ご相談者のプロフィール

家族構成 : 本人(33歳):契約社員
妻 愛さん(34歳):パート
長男(5歳)
父親(相談者の父)(68歳)
<収入>(手取り額) (単位:円)
月給 ボーナス 合計
ご主人様給与 202,000 430,000 3,284,000
奥様給与 85,000 0 1,020,000
父親の年金 - - 684,100
手取り収入の合計 287,000 430,000 4,304,000
<支出> (単位:円)
毎月の金額(1ヵ月) 臨時支出(年間) 年間支出
居住費 98,000 40,000 1,216,000
食費 55,000 - 660,000
水道光熱費 12,500 - 150,000
医療費 3,000 - 36,000
被服費・雑貨 15,000 - 180,000
通信費 30,000 - 360,000
レジャー費・交際費 15,000 100,000 280,000
小遣い 30,000 - 360,000
教育費 30,000 60,000 420,000
10 自動車関連 15,000 - 180,000
11 保険料 13,000 - 156,000
12 その他 8,000 - 96,000
  合計 324,500 200,000 4,094,000
<金融資産> (単位:円)
普通預金 2,750,000
定期預金 2,000,000
有価証券 0
その他金融商品 0
合計金額 4,750,000

認知症になると決めつけず、準備だけはしておきましょう。 有料老人ホームに入居すると家計の破たんも予想されます。

1.有料老人ホームに入居すると、家計の破たんが予想されます。

こんにちは、吉田様。最近、認知症の高齢者による事故などがあり、マスコミなどで取り上げられることが増えています。報道に接すると、「認知症になったらどうするのか?」「有料老人ホームに入る費用はどうすればいいのか?」と心配になりますね。吉田様は、現在はお父様が認知症だというわけではありませんが、将来が心配とのこと。実際、どれくらいの費用を考えておけばいいのでしょうか。
「何歳から認知症の症状が出るか?」「介護にどれくらいの費用がかかるか?」「何歳まで生きるか?」など、その時になってみないとわからないことばかりです。それを承知で、モデルケースで将来の家計の状況を推測してみましょう。条件は以下のとおりと仮定します。

<前提条件>
お父様は80歳で認知症となり、85歳まで生きるものとします。
お子様は高校までは公立で、大学は私立文系・自宅通学とします。
住居費は、今の家賃が生涯続くものとします。
自動車は15年おきに200万円で購入します。
お父様の施設入居、お子様の卒業の時点で、生活費を2割減とします。

お父様が認知症となった時点で中レベルの有料老人ホームに入居し、その後の5年間をそこで暮らします。入居一時金が800万円、毎月の入居費用は20万円とします。その結果、将来の家計の状況は以下のグラフのように推計されました。

貯蓄残高は、大きく増減を繰り返します。当面は支出が多くありませんので、貯蓄が増えていきます。しかし、お父様が有料老人ホームに入居し、そしてご長男が大学に進学すると一挙に支出が増え、貯蓄は急速に減っていきます。48歳の時点で貯蓄残高はマイナスになってしまいます。家計が破たんするという状況です。
介護費用と教育費が終わると、収支は改善しますが、定年を迎えるとまた貯蓄が減少し、老後は厳しい生活となることが予想されます。このようにならないために、今のうちから対策を立てておく必要があります。

2.特別養護老人ホームに入居できれば、家計の破たんを回避できそうです。

有料老人ホームの費用が高い、という問題もありますが、「お父様の介護費用がかかる時期」と「お子様の教育費がかかる時期」が重なっていることが一番の問題です。時期を分散できれば、貯蓄が底をついてしまう事態は避けられます。しかし、こればかりは調整できるものではありません。
家計が破たんしないためには、その前の段階でできる限り貯蓄を増やしておくことが大切です。順調にいけば、40代前半に1,300万円ぐらいの貯蓄残高になる計算ですが、その後に支出が増えることを考えると、さらに貯蓄を増やしておきたいものです。

次に、特別養護老人ホームに入所した場合のケースを考えます。特別養護老人ホームであれば、有料老人ホームに比べて安上がりです。入居一時金はなく、毎月の費用は高いものであっても12万円程度ですみます。

支出が増える時期の貯蓄の減り方が緩やかになり、一定の貯蓄残高を維持することができます。家計の破たんが避けられるのはもちろんですが、この程度の貯蓄があれば、多少の状況変化があっても心配ありません。ただ、現状では特別養護老人ホームに入所するのは簡単なことではありません。希望してもなかなか入所できないことが少なくありません。
先のシミュレーションでは、有料老人ホームに入居すると、貯蓄がマイナスになってしまう結果となりましたが、有料老人ホームはピンキリです。入居費用が安い施設もありますので、けっして有料老人ホームへの入居が無理だというわけではありません。

3.認知症の症状は、その人によってさまざまです。

ここで今一度、認知症について考えてみましょう。将来のことを考えると、「親が認知症になったらどうするのだ」と不安になってしまいます。しかし、「認知症」と一言で言っても、その症状や程度はさまざまで、人によって異なります。ですから、一概に「親が認知症になったら、1ヶ月に○万円の費用がかかる」と決まっているわけではありません。認知症になって、老人ホームなどに入所することもあれば、そのまま家族とともに自宅で暮らすこともあります。
どうしても深刻なケースが報道されますので、「認知症になると家族の手に負えない」と思いがちです。しかし、認知症でもそれほど家族の負担にならない場合もあります。また、家族で協力してなんとか対応しているケースもあります。ご自宅で過ごすことができれば、介護保険のサービスを利用することで、経済的には大きな負担になりません。もちろん、精神的、肉体的な負担は小さくありませんので、ご家族での協力が必要となります。
また、どこまでが「加齢に伴う物忘れ」で、どこからが「認知症」と言えるのかも、はっきりと区別できるものではありません。ある日突然に「認知症にかかる」わけではなく、少しずつ症状が出てくるようになります。認知症と思われる症状に気がついたら病院で検査を受ける、特別養護老人ホームへの申込みをしておく、などの対策を早めに立てておけば、効果があるでしょう。

もちろん、認知症にならないことも多く、介護の必要がない場合も少なくありません。今からやみくもに心配する必要はありません。今できることは、家計のムダを見直し、少しでも多くの貯蓄を積み上げていくことです。

 

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