家計診断Q&A

家計診断Q&A

3000万円程度のマンションを購入しようと思っています。
35年ローンの頭金は多い方がよいのでしょうか?

今回、回答いただく先生は…
 

村井 英一先生
(むらい えいいち)
プロフィール
  • 万が一のことを考えると、生活費1年分ぐらいは手元に残しておきたいものです。
  • 総返済額が大きく変わるようなら、多少のリスクをとることも選択となります。
  • なるべく早く手元の貯蓄を増やし、繰り上げ返済ができるようにしましょう。

斎藤大輔さん(仮名 42歳 会社員)のご相談

家族全体の収入が月額45万円で、貯蓄は500万円あります。3,000万円のマンションを毎月10万円程度、35年ローンの返済で購入したいと考えています。返済をできるだけ楽にしたいとは思っているので、頭金を450万円ぐらいにして、多めに払うべきでしょうか?

ご相談者のプロフィール

家族構成
家族 年間収入 現在の貯蓄額
斎藤大輔さん
42歳(会社員)
500万円 約500万円
(普通預金300万円、定期預金200万円)
妻:加奈さん
38歳(パート)
100万円 -
長女 8歳
長男 6歳
- -
その他 住宅購入の予算:概算3,000万円(新築マンションを希望)
住宅ローンの想定:35年返済を考えている。詳細は未定。

42歳で35年ローンを組むと完済は77歳です
もしものリスクも想定しつつ返済計画を。

1.民間銀行の住宅ローンであれば、手元資金を確保しておくことを重視しましょう。

こんにちは、斎藤様。マイホームの購入を検討されているのですね。住宅ローンは借金ですから、借り入れは少ないに越したことはありませんが、最近の低金利ではそれほど気にする必要がないとも言えます。手元にはどれぐらいを残しておく必要があるのかなど、明確な基準がないだけに頭を悩ませますね。まずはポイントを整理して確認してみましょう。

<購入にあたって考えたいポイント>

  • 頭金をできるだけ多くして、住宅ローンの借入額を減らした方が、毎月の借入額はもちろん、トータルで支払う「総返済額」も少なくなります。また、頭金が多いと、ローンによっては適用される金利が低くなります
  • 頭金を多く支払うことで、手元の貯蓄額が少なくなると、急に資金が必要なことが起きた場合に対応ができません。できれば、生活費1年分ぐらいは手元に残しておきたいものです。
  • 住宅購入時には頭金以外に、ローン保証料、火災保険料、登記費用などの諸費用がかかります。物件価格に対して、新築物件では5〜6%、中古物件で7〜8%程度は必要になります。

これらの点を考慮した上で、頭金を多くした場合と手元に残した場合を比較してみましょう。3,000万円のマンションを購入するとなると、150万円程度の諸費用が必要となります。よって、300万円(物件価格の1割)を頭金にした場合と手元に残した場合の返済額を比較します。
民間銀行による住宅ローンは、変動金利や期間選択型の固定金利が中心です。期間選択型の固定金利は、一定期間の金利が固定されているだけですので、変動金利の一種と考えられます。金利は平成28年5月末の時点での平均的なものを使います。
ここでは両者を比較するために、当初の金利が変わらないものとします。実際には3年後に金利が変わりますので、毎月の返済額や総返済額は変わります。

<3年固定型の住宅ローンの場合>

条件:金利 1.05%、返済期間35年、元利均等返済 ※4年目以降も同じ金利が続くものとする。

・借入額3,000万円の場合:毎月の返済額 86,000円、総返済額 3,587万円
・借入額2,700万円の場合:毎月の返済額 77,000円、総返済額 3,228万円

借入額の差300万円を除いた総返済額の差額:59万円

借入額が2,700万円(300万円を頭金に入れた)の場合は、借入額の差以上に総返済額が少なくて済みます。これは、金利負担が少なくなるためです。同じ条件での比較で、頭金なしの場合に比べて59万円お得になるわけです。ただ、35年間のローンでこの差額ですので、大きな差とはいえません。35年で59万円ですから、1年にすると約1万7千円、ひと月に換算すれば約1400円の差です。

一方、諸費用に150万円、さらに頭金に300万円を使うと、手元には50万円しか残りません。返済をしながら貯蓄を増やしていくとしても、当面は心許ない状況が続きます。万が一、急に資金が必要になることを考えると、59万円の差は「安心料と考えてもよいかもしれません

民間の銀行では、物件価格の2割を頭金とすると、金利の引き下げを適用してくれるところもあります。ただ、斎藤様の場合は、諸費用に加えて2割の頭金600万円を準備することはできません。返済総額が大きな差とならないのであれば、当面の安心を優先した方がよさそうです。

2.フラット35であれば、頭金が1割で低い金利が適用されます。

住宅ローンには、最後まで金利が変わらない、固定金利のものもあります。代表的なのが、「フラット35」です。政府系の金融機関である住宅金融支援機構が資金を提供していますが、窓口は一般の銀行などで、金利も取り扱い金融機関によって多少異なります。ただ、共通しているのは、物件価格の1割以上を頭金とすると、適用金利が引き下げられる点です。斎藤様の場合、300万円を頭金とするかどうかで適用金利が異なります。

<フラット35を利用した場合>

条件:返済期間35年、元利均等返済

・借入額3,000万円の場合:適用金利1.52%
  毎月の返済額 93,000円、総返済額 3,871万円
・借入額2,700万円の場合:適用金利1.08%
  毎月の返済額 78,000円、総返済額 3,244万円

借入額の差300万円を除いた総返済額の差額:327万円

300万円を頭金にすると借入額が少なくなる上に、適用金利も低くなります。327万円の違いとなると、検討の価値はあります。全期間の固定金利でありながら、変動金利並みの金利となるのは魅力的です。今後、金利情勢が変化したとしても、固定金利で借りた住宅ローンの金利は変わりません。返済額を抑えながら、返済額が上がらない安心も得られます。
ただ、手元に残る貯蓄が50万円だけになってしまうのは確かです。当面のリスク(急に資金が必要となった場合の問題)を抱えながらも頭金を払うか、それともリスク回避(万が一の危機を避ける)を優先するかは、斎藤様ご家族の判断になります。もし、頭金を払う方を選択するとしたら、早急に貯蓄を増やすことが必須となります。1年ぐらいで貯蓄額が300万円以上になるようにしたいものです。

3.なるべく早く手元の貯蓄額を増やして、繰り上げ返済に備えましょう。

以上をまとめると、変動金利や期間選択型の固定金利を利用する場合は、それほど差がないので、手元に資金を残しておいた方がよいでしょう。固定金利のフラット35を利用する場合は、冒頭にご紹介した<購入にあたって考えたいポイント>には反しますが、頭金を入れておく方法も選択肢になると考えます。なお、変動金利と固定金利でどちらを選んだらよいかについてはこちらをご参照ください。
どの方法を選択するにしても、忘れてはならない重要な点を申し上げます。
斎藤様は現在42歳。35年後は77歳です。ローンの返済は退職後まで引き延ばさないようにしたいものです。定年時に退職金で完済する人が多いのですが、できるだけ退職金の充当は少なくしたいものです。老後の生活に大きな影響が出てしまいます。
そのためには、普段から貯蓄を積み上げるように努力していき、ある程度の金額になったら、繰り上げ返済をすることです。特に変動金利や期間選択型の固定金利を選んだ場合は、金利が大きく上昇した時に繰り上げ返済をすると、返済額の上昇を抑えることができます。いざという時に繰り上げ返済ができるように、ある程度の余裕資金を持っておきたいものです。頭金を入れなかったとしても、それに安心せず、貯蓄額を増やすことを意識してください。
現在の低金利の状況で35年ローンを組むと、毎月の返済額は家賃並みの金額で収まります。それだけに、ついつい気が緩みがちです。しかし、老後や金利が上昇した時のことを考えると、常に気を引き締めて、家計の管理をしていきたいものです。

 

Copyright(C) NTTiF Corporation All Rights Reserved.