家計診断Q&A

家計診断Q&A

40歳になって介護保険料の負担が始まりました。
介護への備えとはどのくらい大切なものなのでしょうか?

今回、回答いただく先生は…
 

井上 信一先先生
(いのうえ しんいち)
プロフィール
  • 社会保険があるから私たちの生活が成り立ちます。何よりも制度の基礎知識を身につけておきましょう。
  • この機会に介護のあり方について、ぜひ親とも話し合ってみましょう
  • お金だけの備えでなく、暮らしのセーフティーネットをつくることを心掛けましょう

田丸彩人さん(仮名 40歳 仮名)のご相談

40歳になり介護保険料が給与から引かれるようになりました。今さらで恥ずかしいのですが、そもそも介護保険とはどういうものでしょうか。また、どの程度必要なものなのでしょうか。

ご相談者のプロフィール

家族構成
家族 年間収入 現在の貯蓄額
本人
40歳
会社員
320万円 300万円
配偶者
36歳
パート
80万円

※配偶者は、厚生年金保険および健康保険の被扶養者

介護保険制度を意識するのは、老後について考えるタイミング。
貯蓄や保険の見直し、地域とのつながりについても考えてみませんか?

田丸様、ご相談ありがとうございます。
介護保険制度は、介護が必要な方やその家族の負担を社会全体で支える仕組みとして、2000年4月より施行された社会保険の1つです。そもそも介護はとても大きな問題です。制度のごく簡単な内容や要介護期についての現状等についてご説明いたします。

介護保険制度とは?

社会保険とは日本の社会保障制度の1つで、私たちの最低限の生活を守るための公的な保険です。公的とはいえ保険なので、必要な時に給付を受けるためには、一定の条件を満たす人が被保険者として加入し、保険料を負担する義務があります。 働き方によって社会保険の種類、加入する制度がやや異なりますが、会社員の場合「年金保険」は厚生年金保険(年金給付時には国民年金からもあり)、「医療保険」は健康保険に加入し、加えて狭義の労働保険である「雇用保険」と「労災保険※」にも加入します。その5番目にあたるのが「介護保険」です。 ※「労災保険」には被保険者の保険料負担がありません。

介護保険制度の負担と給付のざっくりとしたポイントは次のとおりです。

負担 40歳以上の人が被保険者となって保険料を一生負担する
給付 所定の要支援に認定されると予防給付、要介護に認定されると介護給付を受けられる(介護利用料の8割〜9割が現物給付されます)

例えば、「医療保険」では、75歳までは働き方により健康保険や国民健康保険に、75歳以降は後期高齢者医療制度に加入しつつ、保険料の負担は一生続くものですね。
「介護保険」の場合、年齢に応じて第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満)に分かれますが、保険料負担が一生続くのは「医療保険」と同じです。
また、第2号被保険者は、加入している「医療保険」と一括して保険料を納付することになります。田丸様のような会社員の場合、報酬(給料および賞与)に対し、勤務先の健康保険ごとに定められた保険料率が適用されて保険料が決まります。 なお、奥様については40歳になっても、いまと同じく被扶養配偶者であれば、介護保険料の負担もありません。

一方、介護保険制度はそもそも高齢による要介護状態等への保障を想定しているため、第2号被保険者であるうちは、初老期認知症など加齢に伴って患う特定疾病(16種類)が原因の要支援・要介護状態でないと給付の対象とならない点に注意が必要です(第1号被保険者は原因に関わらず対象となります)。

介護について考えるきっかけに!

日本は長寿化がますます進行しています。これ自体は喜ばしいことなのかもしれませんが、長生きによる不安やリスクが増していくのも確かですね。総務省では、75歳以上の高齢者の約3人に1人が、要支援・要介護の認定を受けていると発表しています(平成27年度 総務省 人口統計)。
また、要支援・要介護状態となる原因として、脳血管疾患(脳卒中)に次いで多いのが認知症といわれています。この認知症の有病率は70代前半では約24人に1人(4.1%)に留まるのに対し、70代後半では約7人に1人(13.6%)、80代前半で約5人に1人(21.8%)、80代後半では約2.5人に1人(41.4%)と、75歳を境に認知症の危険は大幅に高まると報告しています(平成25年 厚生労働省研究班 認知症対策総合研究事業総合研究報告書)。

田丸様は40歳になられたばかり。まだご自身のこととして想像するのは難しいでしょう。ですが、田丸様や奥様のご両親はどうでしょう?頃合い、60代半ばを過ぎられたでしょうか。それとも、要介護状態に気を付けねばならない年代に差し掛かる頃でしょうか。
日本でも『老老介護』の社会的問題が深刻化しています。親の介護にあたられている60代や70代の方は決して少なくはありません。まさにいま、ご両親が親の介護で大変な時かもしれません。そして、いずれそのご両親が要介護状態となった時、今度は田丸様の世代の番が回ってくるのです。それは、意外とそう遠くない将来なのかもしれません。

介護に関してはもう1つ、『介護離職』の大きな社会的問題があります。親の介護のために、働くのをやめざるを得ない子世代が増えているのです。厚生労働省によると、この数は9万人超、うち5万人強は45歳から59歳の働き盛りの年齢層とのこと(平成25年 厚生労働省 雇用動向調査)。負担もさることながら、当然、子世代の家計に深刻な影響を及ぼす事態といえますね。
40歳を過ぎ、介護保険料を負担するようになるタイミングとは、“もしもの時の介護“について、ぼちぼち親子で話し合い、その予防策や資金的な備えについての考えをめぐらすタイミングなのかもしれませんね。

多方面に渡る備えを考えましょう

社会保険制度は相互扶助の理念に基づいています。もしも社会保険がなければ、気の遠くなるような金額をすべて自分で準備しなければなりませんね。
しかし、社会保険の保険料は、民間の生命保険や損害保険のように被保険者の危険度合によって差をつけるわけでなく収入に応じて公平に負担しあいます。また、社会保険の給付額は、民間保険の保険金のようにその多寡を自分で決めることはできません。
社会保険で得られる保障は最低限度であり、やはりそれだけでは足りないのも事実です。

介護保険制度でいえば、利用する介護サービスの9割(一定以上の所得のある人は8割)相当の利用料金を制度が現物給付してくれます。ですが、確実に1割〜2割の自己負担が生じるわけです(自己負担限度額等の上限設定はあります)。
ですが、月ごとに利用できる一定の制約もあるため、それを超えるとまるまる自己負担。介護保険制度の対象外サービスも、すべて自己負担です。

そして、なにより“病気の治療”は治るまでの一定期間。それにかかる治療費や入院代等のお金の負担も、例外を除けば一定期間に留まるものであるのに対し、“要介護期間”とは、介護が必要になった後の暮らしそのもの。介護との付き合いは一生涯に渡るのです。

“老後にいくらのお金が必要?”というご相談もよくお受けします。
日常的な生活費は入ってくる年金の範囲内に、一時的な出費は蓄えの中から可能な範囲に留めて使うように工夫すれば、おおよその不安は軽減させることは可能、とご説明しています。それでもどうしても不安感が拭えないのは、要介護期にかかるお金、そして住まいの確保(終の棲家)にかかるお金が不確実であるからです。
老後への漠然とした不安は、自分や家族の“要介護期”や終末期の曖昧さが要因といえます。

自分や家族の要介護期に対する備えを完全に準備するのは難しいと思います。
そもそも、健康に気を遣うことが何よりですが、万一のときの経済的な補てん手段として、いくら蓄えがあれば安心できるかの目安はありません。お金がかかるような身体の状態になったら別の収入が入るしくみ(生命保険や損害保険による民間の介護保険)をつくるのも一考でしょう。でも、要介護状態となった後、お金を払って介護施設に住み替えるのでなければ、必要となる資源は自活する生活力に他なりません。もし、病気になったら根治するよう専門の医者に治してもらうことができます。ですが、介護が必要になっても対処療法は基本的にはないのです。その状態を抱えながら、暮らしていくだけなのですから。

ならば、なるべく普通に暮らしていけるような生活インフラを整えておくこと、例えば、ご近所とのつながりやお住いの地域でのボランティア団体との接点などが何より大切ではないかと思います。
社会保険等の諸制度の恩恵を最大限に受けられるよう基本的知識を身につけるとともに、それだけでは不足する部分について、親子で財産や互いの地域社会との接点を見つめ直す良き機会ではないでしょうか。

 

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