家計診断Q&A

家計診断Q&A

将来海外移住を計画しています。移住しても年金はもらえますか?
どんな手続きが必要ですか?

今回、回答いただく先生は…
 
 

井上 信一先生
(いのうえ しんいち)
プロフィール
  • 年金はもらえますが、そのための手続きは余裕をもって行いましょう
  • 年金制度への継続加入も検討しましょう
  • 移住先の社会保険制度や税金等についても十分な下調べを

  香坂真由子さん(仮名 34歳・会社員)

50歳までには会社を辞めて外国に移住する話を主人としています。その場合、今まで払ってきた年金保険料は意味がなくなってしまうのでしょうか?

ご相談者のプロフィール

家族構成
家族 年間収入 現在の貯蓄額
本人
   34歳   
会社員
300万円 1,200万円

38歳
会社員
400万円

移住先の国によって手続きも年金にかかる税金も違ってくるので、
移住国の社会保険や税については事前によく調べておきましょう。

1.どこで暮らそうとも年金をもらう権利は失われません

香坂さん、ご相談ありがとうございます。
セカンドライフをどこでどのように暮らしたいかのご希望を、今から明確にお持ちなのはとても素晴らしいですね。
海外に生活拠点を移す際には、たとえ暮らす環境に変化があったとしても安心・安定した暮らしを確保できるよう準備が必要になると思います。いずれ帰国することが前提のロングステイなのか完全に永住されるのかでも異なりますが、住み替え先が国内でなく海外なら、尚更に入念な情報収集と周到な準備が求められるでしょう。
考えなければならないことは多々あると思いますが、今回は年金等の社会保険の扱いに絞って回答いたします。

まず、年金加入履歴に応じた受給権は、どこで暮らされても失われることはありません
受給のための必要書類が多くなるなど、手続きはやや面倒になるのは確かですが、年金をもらえる年齢要件や他の条件は概ね変わりません。ご安心ください。

ところで、国内でも引っ越しの際には「転出・転入届」を提出して住民票を移しますよね。海外移住の場合には「海外転出届」を出さなければなりません。
さらに年金に関しては、住所地の役所等に「年金の支払いを受ける者に関する事項」という書類を提出しておく必要があります。
基本的に年金をもらうためには、受取開始時期に必要書類を提出して裁定請求を行い、毎年「現況届」を提出しなければなりません(国内居住の場合で住民基本台帳ネットワークシステムにより健在が確認できる場合には現況届は省略可)。海外で暮らす場合でも手続きに必要な書類をちゃんと受け取れるよう、あらかじめ「年金の支払いを受ける者に関する事項」を提出しておくわけです。

ただし、書類には海外の住所電話番号年金を受け取るための銀行名やその所在地口座番号等も記入しなければならず、口座番号の確認できる書類を添付する必要もあります。
提出期限については年金支払日の前々月末日までとなっているので移住後でも十分可能なのですが、年金以外でも住所地の変更手続きや銀行口座の確保は必要ですよね。移住前の国内滞在中に余裕をもって準備しておくことが安心といえます。
なお、年金振込を指定する銀行は、国内の金融機関(ゆうちょ銀行を除く)でも、海外の金融機関でも可能です。国内の金融機関の場合は海外での引き出し方法を確認しておく必要があります。一方、海外の金融機関の場合は国ごとに送金通貨が指定されており、基本的には外貨で受け取ることになります。どちらが便利なのかについても、事前に検討しておきましょう。
また、こうした手続きは公的年金(厚生年金や国民年金)に限った措置ですので、別途、企業年金をもらえる場合は、お勤め先に確認しておいてください。

2.年金への継続加入も検討を

香坂さんご夫妻は会社員なので、現在は厚生年金保険に加入されていますね。
会社を辞めた後は、原則、60歳まで国民年金保険の第1号被保険者となるところです。ただし、この要件は国内居住者に限られていて、海外移住後は強制加入ではなくなります。海外在住期間中については滞納未納扱いではなく、年金を受け取るための必要期間(受給資格期間)にカウントされるので、必要期間に満たず年金をまったく受け取れなくなる心配はないでしょう。ですが、もらえる年金額は当然少なくなります
移住国によって居住要件に規定されている定期的所得を満たす目的もありますが、何より、どこで暮らす場合でも、年金はセカンドライフにおける定期的収入の柱だと思われます。海外居住者でも、年金の繰上げ支給を受けていなければ、65歳になるまで国民年金保険の任意加入被保険者になれますので、ここはやはり継続加入をお勧めしたいところです。注意点として、任意加入期間中の年金保険料は国内に開設している預貯金口座からの自動引き落としか、国内のご親族の代理納付のいずれかで行うことになります。
いずれにしても、納付が滞ることのないよう気を付けてください。
また、任意加入の手続きも、余計な手間をかけぬよう、今のお住まいに住民票があるうちに、お住まいの役所でおこなっておくと良いでしょう。

3.その他の注意点

移住国によっては、その国の年金制度に加入しなければならない場合もあります。
その場合、保険料の二重負担が生じますし、一定の加入期間に満たなければその国の年金をもらえないケースも考えられます。こうした「保険料の二重負担の防止」や「二国間での年金加入期間の通算」に対応するために、各国と「社会保障協定」が結ばれています。
現在の協定署名済み国は、2017年8月時点で20ヵ国(うち3ヵ国は未発効、一部の国では「保険料の二重負担防止」のみ協定)です。協定締結済みの国やそれぞれの相手国での注意事項は日本年金機構 社会保障協定で確認ください。

また、もらえる年金は、原則として日本国内で税金が源泉徴収されますが、居住国でも所得課税されてしまうことにもなりかねません。こうした「二重課税の回避」のために、基本的に日本国内での課税を外す「租税条約」が二国間で締結されています(一部の所得については国内課税されるものもあります)。
国税庁 租税条約締結国一覧表

ご希望の移住先がこれらの締結国に含まれていれば、事前に届出書等を提出することで余計な手間や負担が少なくなります。一方、該当国でない場合には国により事情が異なりますので、役所等で確認しておく必要があります。

最後に、万一の場合の保障制度として、日本では年金以外にも国民皆保険制度のもと、公的医療保険制度や公的介護保険制度に加入しています。ですが、これら社会保険は国内居住者でなくなると脱退することになります。
基本的に、その後は移住先の国の制度へ加入することになると思われますが、こちらも国により状況は様々です。保障が十分でない場合には民間保険によるカバーが、さらに必要になることも考えられます。現在加入中の生命保険等も、移住先で契約継続が可能であるのかの確認も必要ですので、下調べの際にはご留意ください。

セカンドライフといえど現在のライフプランの延長。10年後20年後のプランも1年後2年後のプランも、「考えることの必要性」は同じです。
とりわけ、将来に家庭の収支構造が大きく変わる(あるいは大きく変える)見込みがあるのなら、その節目を念頭におき(長期のプラン)、その時期に向けての準備や計画を立てること(短期のプラン)は、一層重要となります。
将来、生活が根底から崩れないためにも、楽しく暮らしていくためのプランと同じくらい、あるいはそれ以上に、万一の際の生活の要となるプランをご検討ください。

 

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