家計診断Q&A

家計診断Q&A

投資に関心がありますが、どのように始めれば良いでしょうか。

今回、回答いただく先生は…
 

井上 信一先生
(いのうえ しんいち)
プロフィール
  • 投資のゴール(換金時期)を何よりも明確に持ちましょう
  • 投資時期・投資金額・投資対象の分散を心掛け、お金の有利な置き場も検討しましょう
  • 楽しく充実した使いみちのために投資をするのですから、目的とその手段をはき違えないこと

  中堂新一さん(45歳 仮名)のご相談

貯金だけでは駄目だと感じ、投資に興味を持ち始めました。今流行りの投資やおすすめの投資はありますか?

中堂新一さんのプロフィール

家族構成
家族 年間収入 現在の貯蓄額
本人
45歳
660万円
(会社員)
900万円

42歳
100万円
(派遣社員)
長女
7歳
-

「旬な投資商品」は刻々と変わり、運用成績も変動します。
成果に関わらず有意義にお金を使える投資を目指しましょう。

投資の本質は、買った時より高く売ること

中堂さん、ご相談ありがとうございます。
資産を築く方法は預貯金以外にもあるのですから、選択肢が増えるのは良いことですね。
魅力に乏しいとはいえ、預貯金は預け先が存在する限りお金自体が減ることは基本的にありません。対して、投資資産は投資先が存在していても運用環境により価値が目減りする可能性があり得ます。投資にのめり込み過ぎて大切な資産を失うことは避けねばなりません。期待に反して含み損を抱え、そのお金が長い間、“売るに売れない死に金”になるのも勿体ないこと。そうならないためにも、始める際には投資に対する自身のスタンスを明確に持つことが大切です。

当たり前のことですが、“買った時より価値の落ちるもの”を進んで選ぶ人はいませんよね。配当や分配金等の定期的な収益を重視する場合でも、投資資産の価値が大きく下がるのは看過できません。では、何を選べば良いのか?将来を予測できない以上、確実な答えは残念ながらありません。

例えば、“今流行りの投資”資産として、総じて右肩上がりで上昇しているアメリカをはじめ日本も含む先進諸国の株式が挙げられます。ただし、アメリカ株が史上最高値を更新しているのに対し、日本株はピーク時には遠く及んでいません。外国資産は購入時と換金時の為替レート差を考慮する必要がありますし、厳密には物価等も考慮すべきですが、アメリカ株は過去のいつ投資を始めても含み益であるのに対し、日本株は投資時期によっては成果が変わります。
つまり、買った時の値段とその後の値段、結果としては買値と売値の関係が全てです。“いま旬で絶好調”なものに投資したとして、相当に長く騰がり続けてきた投資資産ほど、存外、そこから先の好調な期間は短いこともあり得ます。
国内外の不動産という投資資産も同じようなことがいえるのかもしれません。 “上り坂”から“下り坂”に転じて「まさか」とならぬよう、注意深くアンテナを張っておく手間が求められます。

一方、あえて“今はそれほど流行っていない”投資資産に注目する考え方もあります。
状況が各々で異なるので一括りにはできませんが、原油や貴重資源、金・貴金属等もその一例です。株式ほど注目されていないのでピーク時より低い水準にあり、この先に価値が上がるのかもしれません。ですが、それがいつ来るのかは不明ですし、低迷が続いたりさらに価値が下がったりする可能性もあります。

“投資スタンスを持つ”のは実際には難しいものです。それでもやってみなければ何もわかりません。そこで検討したいのが、「投資(資産運用)」のゴールを明確にしておくこと。ゴールといっても、いくら儲けたら(あるいは損したら)と、金額や増減率で設定したとしても、その時の感情を抑えるのもまた至難の業。それよりも投資期間(いつ換金するのか)を予め決めておく方法が簡単でもあり、お勧めです。

投資のゴール(いつ売るのか)を明確にする2つの方法

換金時期を自分で決める方法としては、次の2つのアプローチがあります。
@余裕資金額と余裕期間を知って投資を行う
どんな家計にも余裕資金は存在します。でも、“それがいくらなのか”、また、“いつまでなのか”は異なるでしょう。そしてそれは現在の金融資産の額ではわかりません。よって、今後の収支や金融資産残高の推移をシミュレーションするキャッシュフロー(CF)の活用が有効となります。

金融資産残高の推移

上の図は、任意設定のCFより金融資産残高の推移だけを棒グラフで表したものです。多くの家計と同じく、毎年の経常収支や一時的な収支により、現在の金融資産残高900万円が増減しているのがわかります。
ここで注目したいのが、4年後に300万円に減った金融資産が23年後までその額を下回らずに推移していること。つまり、この家計ではライフプラン上の諸イベントをこなしても、300万円の余裕資金が23年後まで確保できているわけです。言い換えれば、この額を長期で運用してもライフプランには影響を与えにくいと考えられます。このようにCFからは、投資できる余裕資金の額と余裕期間の目安を知ることができます。
ただし、CFは作成時の予測に過ぎませんので定期的な見直しが必要です。300万円の全額を一時期にまとめて投資するのではなく、見直し時期にあわせて少額ずつ何度かにわけて投資するのが肝要といえましょう。

A目的(お金の使い方)を決めて投資を行う
お金は何かしらの目的に使うためだけに存在します。突き詰めれば貯蓄も投資も、手元のお金を“今使わず”に、将来の必要な時や万一の時に使うために、できれば利殖性も期待して”置いておく行為“に他なりません。
お金は使いたい時にやおら使うのではなく、“いつ、何のために、いくら”使うのかを計画することも大切。その使い道や使う時期を決めた上で、投資で準備しようという発想です。
とはいえ、必要な額を変えられない使い道ではなく、必要額を柔軟に変更でき、かつ、使ったら一定の満足が得られるような使い道が、投資との相性が良いといえます。旅行・レジャー・外食・趣味等の余暇費が好例です。

例えば、数年後の家族旅行予算が60万円だとしたら50万円を投資に回して準備します。運良く10万円の収益を得られれば、予定通りの旅行プランを10万円浮かせて(節約して)実現できます。逆に、運悪く10万円の損失を被り悔しい運用成果となっても、ここは質を落としてでも旅行に行く(換金=投資を終わらせる)のがポイントです。実際、旅行に行ったらそれなりに楽しいでしょうし、そうした割り切りのできる目的のために投資をするのです。そして、次の旅行のための投資を心機一転、頑張れば良いのです。
失敗はズルズル引き延ばさず、影響額は限定的に留め、かつ運用の失敗を忘れて楽しくお金を使える。そういった目的のために投資を行うことこそ、実は投資において最も大事なスタンスに沿っているといえます。

こうした2つの方法を組み合わせられれば、具体的かつ簡単に投資のゴールを明確にすることができるでしょう。

アセット アロケーションとアセット ロケーションを意識する

投資における「卵を1つの籠に盛るな」の格言のとおり、ダメージ軽減のためにも分散投資は運用の基本です。
前述のとおり、一度に集中して投資するのではなく、投資する時期や投資金額を分散することがまず大切ですが、投資する資産を分散し、かつ、投資するお金の置き場を検討することも考えていきたいものです。

この、前者の“投資する資産を分散する”という考えをアセット アロケーションともいいます。例えば、日本の個別株式を持ち、かつ、日本株式に連動する株式投資信託を持つのは、商品性の違いから若干は異なりますが、大きな意味では国内株式という同じ資産に集中投資していて資産を分散したことにはなっていません。

また、後者の“投資するお金の置き場を検討する”という考えをアセット ロケーションともいいます(一部の方が提唱した考えで、今では一般的に認知されつつあります)。
例えば株式投資信託であれば、それを勤務先の確定拠出年金で持つのか、銀行窓口で持つのか、証券会社の課税口座で持つのか、さらには“NISA(少額投資非課税制度)”や“つみたてNISA”といった非課税口座で持つのか、個人型確定拠出年金(iDeCo)を行なえるならそこで持つのか、という具合に置き場を検討することです。

要は、預貯金等も含めて自分自身の資産全体を統括して整理することが必要です。
例えば、こんなシナリオを描けるようになったら、とても素敵ではないでしょうか。

  • 毎年海外旅行に行くプランをつくる。一方で老後資金を少しずつ貯める。各々の予算はCFに盛り込み、長期的にも大きな影響がないことを確認する。
  • 旅行費は日本の個別株式を税制上の特典があるNISAで運用し、旅行時期が来たら運用成果に関わらず換金、成果に応じた旅行をする。これを毎年少額ずつ行う(失敗する時もあれば成功する時もあるが割り切り)。
  • 老後資金は、税制上の特典がある勤務先の企業型確定拠出年金(勤務先になく規約上認可されていれば個人型確定拠出年金)、および妻の個人型確定拠出年金で少しずつ準備する。旅行費用に国内株式を選ぶ場合は、それ以外の外国株式や外国債券等を中心に選ぶ(投資期間が長いので定期的に見直す必要はある)。
  • 保有資産のすべてを投資に回すわけにはいかないので、主たるお金は預貯金・国内債券・保険に、安全確実に置いておく。

投資に対するスタンスは一様ではなく、その方法に正しいも誤りもありません。少しずつ、経験に応じて自分のできるやり方を見つけていくのが、何より大切だと思います。中堂さんが納得でき、お金を充実して使えるための方法を見つけて頂ければと思います。

※当回答は2018年2月末時点での市況をもとに執筆しています。

 

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